21/09/01
保険金のもらい忘れをなくすためにすべきたったひとつのこと
家族の病気やケガ、死亡に直面した場合、心と身体のケアが何より大切ですが、お金のこともないがしろにはできません。特に、死亡時に保険金が出るタイプの保険は、のこされる家族を想って加入している場合がほとんどでしょう。
故人のためにも、保険金は漏れなく受け取りたいものです。
しかし、保険証券などが見つからず、保険金請求ができない場合はどうしたらよいのでしょうか。今回は、そんな時のために知っておきたい、新しい制度についてお伝えします。
生命保険契約照会制度がスタート
これまでは、亡くなった家族がいても、保険証券など保険に加入していることがわかる書類が見つからないと、保険契約があるかどうかの確認は大変でした。
生前、「保険に入っているから大丈夫」、「保険があるから迷惑かけない」、といった故人の言葉をたよりに探すにも、日本の生命保険会社は、42社(2021年8月時点)。ひとつひとつ問い合わせるのは現実的とは言えないのではないでしょうか。
そんな生命保険の照会ですが、2021年7月、生命保険協会に依頼すると、一括して生命保険の加入状況を調べてくれる「生命保険契約照会制度」が始まりました。
制度を利用するには
生命保険契約照会制度は、親・家族が亡くなったときや、認知判断能力が低下したときが対象です。また、災害時には亡くなった場合だけではなく、行方不明も対象になります。
生命保険契約照会制度の照会の申込は生命保険協会のホームページから可能。費用は3000円(税込)で、クレジットカードかコンビニエンスストアでの支払いです。
ただし、照会できる内容は、保険契約の有無だけです。保険の詳細や、保険金・給付金の請求は、各保険会社に問い合わせることになります。
照会は誰でもできるわけではありません。
死亡した方の保険を照会する場合には、法定相続人、法定相続人の法定代理人または
任意代理人、遺言執行人に限られます。
認知判断能力が低下している場合には、法定代理人または任意後見制度に基づく任意代理人、3親等内の親族など、細かな定めがあります。
大切な保険の照会なので厳密な定めがありますが、それだけ安心して利用できる制度とも考えられるでしょう。
死亡の場合の必要書類は、生命保険協会所定の申請書類のほか、故人との関係を証明するための戸籍や法定相続情報一覧図など、照会をする人の本人確認書類、故人の死亡診断書といったものです。
また、認知判断能力が低下している場合には、生命保険協会所定の診断書が必要です。医師に書いてもらうものになりますので、医療機関によっては文書料など費用がかかることもあるかもしれません。
なお、災害時には手続きに必要な書類や費用の負担はありません。災害時専用のフリーダイヤル(0120-001-731月~金(祝日・年末年始を除く)9:00~17:00)が設けられていますので、心当たりがある場合には、まずは電話をするとよいでしょう。
照会できるのは、原則として家族(配偶者、親、子、兄弟姉妹)に限ります。
元気なうちの情報共有が大切
生命保険契約照会制度は、家族が保険に加入していたことを知らないために、本来受け取れる保険金を、受取れないままにしてしまうことを避けられる制度です。手間や費用はかかりますが、一度の手続きで全生命保険会社に照会できるので、心当たりがあれば利用をするといいでしょう。
しかし、そもそも家族が保険契約を知っていれば、このようなことも不要です。
生命保険協会に申込みする前に、もう一度、下記のように保険契約の手がかりを探してみましょう。
・保険証券を探す
・保険会社からの郵便物がないか確認する
・預金通帳に保険会社からの引き落としがないか確認する
・クレジットカードの明細に、保険会社の利用がないか確認する
・身のまわりに保険会社のノベルティグッズのようなものはないか、見てみる
(カレンダー、ボールペン、クリアファイル、お菓子など、契約のある保険会社からもらっていることがあります)
契約していると思われる保険会社がわかれば、カスタマーサービスに電話して問い合わせることも可能です。
そして、元気なうちに保険などの情報を共有しておくことが大切です。
家族に内緒で契約していた保険が、死後に見つかって…というのは、ロマンチックなイメージとは裏腹に手間や費用がかかり、場合によっては家族間のトラブルのもとです。
保険金のもらい忘れをなくすためにすべきは、家族間の情報共有です。
しかし共有できなかった場合には、生命保険契約照会制度が利用できることを覚えておいてください。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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