19/07/18
6年間で4倍増えている外貨建て保険の苦情件数。きになる苦情の原因は?
生命保険協会が発表したところによると、2018年の外貨建て保険の苦情は2543件。直近の6年間で、実に4倍も増えています。
苦情の原因は、保険金が払い込んだ保険料よりも少ない、いわゆる「元本割れ」になるリスクを十分説明していなかったことによるものが多いとのことです。
しかも、外貨建て保険の販売件数が増えていることも、苦情の増加の一因になっています。
では、外貨建て保険とは、どのような商品なのでしょうか。そして、なぜ販売件数が増えているのでしょうか。
今回は、最近注目されている、外貨建て保険について考えてみました。
外貨建て保険とはどんな保険?
外貨建て保険とは、円で払い込んだ保険料を、ドルやユーロなど外国の通貨で運用する保険です。
日本では長引く低金利で、お金を預貯金で持っていてもほとんど増えません。保険も同様で、貯蓄性があると言われる終身保険や個人年金保険でも、資産形成するには物足りないものがほとんどです。
その点、外国の利率は高い水準を維持しているものが数多くあります。
長期金利の指標にもなる10年物国債の利回りは、日本国債10年では-0.117%なのに対して、アメリカ国債10年は2.110%(2019年7月現在)。
アメリカのドルで運用したら、資産を大きく増やせるように感じても不思議ではありません。
外貨建て保険の、為替リスクに要注意!
しかし、外貨建て保険には、円安や円高といった為替リスクがあることに注意しなくてはいけません。
たとえば、アメリカのドル建て保険であれば、保険料は100ドル、のように決まっていますが、支払うのは円ですから、為替レートによって支払う金額が変わっています。
契約した時に1ドル=110円であれば、保険料は1万1000円。
円高になって1ドル=80円になったら、保険料は8000円になり、安くなります。
逆に円安になって1ドル=130円になったら、保険料は1万3000円と高くなります。
そして、為替レートによって変わるのは、受け取る保険金も同様です。
保険金が10万ドルと決まっていても、1ドル=110円なら円に換算すると1100万円ですが、1ドル=80円なら800万円、1ドル=130円なら1300万円です。
このように、外貨建て保険は為替レートに大きく影響され、場合によっては払い込んだ保険料よりも受け取る保険金が少なくなることも十分あり得る商品なのです。
このようなリスクを承知の上で加入すればよいのですが、不十分な説明しかなされないまま契約した場合、苦情になるのも当然と言えるでしょう。
中には「元本割れはしない」と説明を受けているケースもあるようですが、それはドルの保険料とドルの保険金を比べた場合であって、円に換算したらどうなるかまで説明していないのは不適切と言わざるを得ません。
なぜ外貨建て保険は売れているのか?
先ほども見たように、日本国債10年の利回りはマイナスです。つまり、円で運用しても利益を得ることが難しいということ。そのような状況では、保険会社としては外貨建ての利回りの良さが魅力なのではないでしょうか。
また、外貨建て保険はおもに銀行の窓口で販売されていますが、銀行もまた低金利のため本業である貸出業務で利益を出しにくくなっています。そのため、手数料の高い外貨建て保険の販売を促進していると考えられます。
もし勧められたらどうすべき?
では、保険会社や銀行の担当者から外貨建て保険を勧められたらどうしたらいいのでしょうか。それは、まず担当者がきちんと説明をする誠意があるかどうかを見極めることが大切です。
為替リスクについて分かりやすい説明もなく、元本保証だと勧めてきたら要注意です。不十分な説明しかせずに、売ることだけしか考えていないのかもしれません。
いったん契約をしても、クーリングオフができることもありますが、加入時に医師の診査を受けた場合などはクーリングオフの対象になりません。
また、クーリングオフであっても外貨で返金されることがあります。この場合も為替レートによっては支払った金額よりも少ない額しか戻ってこないケースがあります。
長引く低金利のため、少しでも有利な資産運用をしたいと考えるのは当然です。
しかし、金融商品を検討する時には慎重に、メリットとデメリットをしっかり確認し、納得できるものを選ぶようにしましょう。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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