19/04/25
保険会社や代理店販売推しの「外貨建て保険」。金利は高いけど加入して大丈夫?
近年、販売数が伸びているという外貨建て保険。保険代理店や銀行などですすめられた人もいるかもしれません。しかし最近、外貨建て保険によるトラブルがよく聞かれるのを知っていますか。外貨建て保険に潜むリスクやトラブルについて紹介します。
外国の通貨でやり取りされる外貨建て保険
外貨建て保険とは、支払う保険料や満期時に戻ってくる保険金や解約時に戻される解約返戻金などが、日本円以外の通貨や外貨になっている保険のことを外貨建て保険といいます。
私たちが海外旅行に行くときに日本の円を外国の通貨に両替するのと同じで、外貨建て保険は外貨で購入され、運用されます。そして保険金を受け取るときには、外貨が日本円に両替されて戻ってきます。具体的な流れは次のとおりです。
・外貨建て保険を申し込む
↓
・日本円を外貨に両替
↓
・外貨で保険を支払う
↓
・保険会社が外貨で運用
↓
・外貨を日本円に両替
↓
・日本円で保険金を受け取る
主にアメリカのドルやオーストラリアのドル、EUのユーロの外貨建て保険が販売されています。「ドル建て保険」というと、通常アメリカのドルでやり取りされる保険のことを指します。
金利は魅力だけど……外貨建て保険にはリスクがいっぱい
外貨建て保険のメリットは、金利にあります。
たとえば、日本の長期金利の目安とされる10年ものの国債の金利はマイナスになるほど低い状況ですが、アメリカの国債の金利は2%~3%もあり、大きく違います。
同じ金額を目標に積み立てるのであれば、日本円で運用する保険よりアメリカのドルで運用する保険の方が積み立てる金額が少なくすみます。なぜなら、日本よりもアメリカの金利の方が高いためです。
また、満期になったときや解約したときに、契約したときより円安になっていれば、為替による利益(為替差益)を得ることができます。
たとえば、1ドル=100円で契約をして、満期時に110円になっていれば、差額の10円分が利益ということになります。この場合、円安になればなるほど、為替差益は大きくなります。
しかし、外貨建て保険の多くは販売手数料が高く設定されているといわれ、問題視されています。一説には7%以上ともいいます。これは100万円分買った瞬間に7万円が引かれ、資産が93万円になってしまうという意味。ずいぶんと高額です。
また、お金を両替する際には、為替手数料を支払っていることも忘れてはいけません。為替手数料は、円をドルに変えるときと、ドルを円に戻すときの往復でかかるコストです。
さらに、為替による損失(為替差損)も被る可能性があります。1ドル=100円で契約をして、満期時に90円などと円高になってしまうと、差額の10円分が損失になります。
そのうえ、クーリング・オフをした場合に外貨で返金されるものや、年間の管理費がかかるものなどがあり、結果として損をするケースがあることにも注意が必要です。
このように、外貨建て保険にはさまざまなリスクが潜んでいるのです。
保険で運用をする必要があるのか今一度考えよう
保障に加えて利益も狙えるかもしれないといって、外貨建て保険を契約する人が多いといいます。しかし、そもそも外貨で投資をしたいなら、保険でなくてもいいのではと私は考えます。たとえばアメリカなら、アメリカの国債やドル預金、アメリカの株など、保険以外のドル建ての商品は他にもあるからです。
そもそも外貨で保険を運用する必要があるのか、よく考えることが大切です。
外貨建て保険のトラブルも多く、国民生活センターのウェブサイトでもたびたび紹介されています。
投資経験がないために、仮にリスクの説明があっても、理解していないことが多いようです。中には外貨建て保険の契約だと気づかなかったという事例もあります。
実際、ある保険販売員に聞いた話によると、利率のいい外貨建て保険をすすめることが多いとのことです。また、保険販売員に入る手数料の率も外貨建て保険の方が高いといいます。外貨建て保険の契約が増えていることもうなずけます。
外貨建て保険の契約を検討している人は、今一度自身を見つめなおし、問題がないかどうかよく考えるようにしましょう。そして、納得ができないようであれば契約しないことが懸命です。
【関連記事もチェック】
・多くの人がNG保険を選んでいる?辛口保険評論家が選ぶ本当に役に立つ保険
・万が一に備えながら3つの「D」でお金を増やす「変額保険」をお金のプロが解説
・外貨預金がNGな3つの理由
・40代が入った方がよい保険、入るべきではない保険
・人気の保険は医療保険だが、優先度が低い商品だ!その理由は?
松尾 朋美 証券外務員1種
税理士や公認会計士の資格を持つ家族と過ごし、大学卒業後は証券会社に約4年勤務。その後大手ネット会社に入社。現在は独立し、個人のマネー相談や執筆、ネット広告の運用やコンサルティングなどを行う『金融とネットのプロフェッショナル』。20~40代の子育て世代からのマネー相談が多く「金融リテラシーが低い人が損しない世の中にしたい」をモットーに活躍中。一児のママでもある。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう