24/12/25
名前は似ているけど全然違う「収入保障保険」と「所得補償保険」 それぞれに向いている人は?
もしものときに減ってしまう収入をカバーしてくれる保険に、収入保障保険と所得補償保険があります。どちらも、名前は似ているのですが、その内容や仕組みは異なります。今回は、収入保障保険と所得補償保険はいったいどう違うのか、収入保障保険と所得補償保険が向いている人、注意点を紹介します。
収入保障保険と所得補償保険の概要
収入保障保険は、死亡による万が一に備える保険です。収入保障保険は、生命保険会社が販売しており、保険金が毎月年金形式で支払われるのが特長です。
収入保障保険の保険金の支払いは、保険の対象となる方が死亡した月から保険期間が満了するまで続きます。加入の際は、公的遺族年金額等万が一の備えの状況を踏まえて保険金額を決定します。定期保険と似ていますが、保険金額が時間の経過と共に減少する点で異なります。
収入保障保険は、原則として保険期間を超えると保険金を受け取ることはできませんが、最低保証期間を設けられるものもあります。最低保証期間を設けることで万が一の際、最低保証期間の最低限保険金を確保することができます。収入保障保険には20年など長期で契約できるものは多いですが、かけすてのものが多く、解約返戻金はないものが多いです。
所得補償保険は、生きている間の就業不能に備える保険です。「就業不能」とは、入院や医師の指示による自宅安静療養などのことで、その直接の結果として、保険証券に記載されている業務に全く従事できない状態をいいます。
所得補償保険の保険金額は平均月間所得額(年収の12分の1)の範囲で加入している公的医療保険制度の給付内容を踏まえて月額で設定します。保険金は免責期間を超えた就業不能の期間、あらかじめ定めた一定の範囲内で支払われます。医療保険の入院給付と似ていますが、所得補償保険では在宅療養も補償の対象となります。
所得補償保険の保険期間は1年とするものが一般的で、かけすてです。うつなどの精神疾患による就業不能や病気治癒時の収入減をカバーできる長期所得補償プランがあるものもあります。
収入保障保険と所得補償保険のどちらにも共通するのは、保険期間が限定されており、保険金は定額で支払われるという点です(※所得補償保険は就業不能期間が1ヶ月に満たない場合、または1ヶ月未満の端日数が生じた場合には、日割計算されます)。支払った保険料はどちらも生命保険料控除の対象となります。
収入保障保険と所得補償保険、それぞれどんな人に向いている?
収入保障保険が向いているのは、死亡保障が必要で、大きな保障を期間限定で割安に用意したい方です。収入保障保険は保険金額が徐々に減っていき、解約返戻金がありません。そのため、保険料が割安になっています。例えば、子どもがいて、子どもが独立するまでの死亡保障を手厚くしたい場合や、住宅ローンを組む際、団体信用生命保険の代わりに加入する場合があげられます。
所得補償保険が向いているのは、自営業やフリーランスの方です。自営業やフリーランスの方は一般的に国民健康保険に加入しますが、病気やケガによって働けなくなった時、原則として傷病手当金がありません。また、就業不能時にも経費や人件費が必要となるケースがあり、そういった場合、経済的な理由により必要な療養に専念できない可能性があるためです。
収入保障保険の注意点
収入保障保険の注意点には、次のものがあります。
●収入保障保険の注意点1 告知が必要
収入保障保険に加入する際は告知が必要となります。保険の対象となる方の喫煙状況、体格(BMI)、血圧値等によって保険料が割引となるものもありますが、その場合、審査は厳しい傾向です。事前に健康診断や人間ドッグを受けておくなどしておくとスムーズでしょう。なお、嘘の告知をすると、契約を解除されたり、保険金が支払われなかったりする可能性があります。ありのままを記入するようにしましょう。
●収入保障保険の注意点2 大学進学資金をカバーできない可能性
収入保障保険は保険金額が徐々に小さくなります。合理的なつくりですが、子どもがいる場合、加入時期によっては収入保障保険だけでは教育資金をカバーしきれない可能性があります。教育費のピークは大学進学時に迎えます。場合によっては定期保険で補うといった対策が必要でしょう。
●収入保障保険の注意点3 一括受取りの場合、保険金総額は少なくなる
収入保障保険の保険金は年金形式での受け取りが基本ですが、まとめて一括で受け取ることもできます。その場合、年金形式で受け取る場合よりも、受け取れる保険金の総額は少なくなります。
●収入保障保険の注意点4 保険金は課税の対象
収入保障保険の保険金は基本的に課税対象となります。一括で受け取る場合は相続税の対象となるため、一定の非課税枠が設けられていますが、相続人が少ない場合やその他に死亡保険金を受け取る場合には税金がかかる可能性があります。年金形式で受け取る場合は、被保険者が死亡した翌年以降、雑所得の対象となります。
所得補償保険の注意点
一方、所得補償保険の注意点は次のとおりです。
●所得補償保険の注意点1 告知が必要
所得補償保険は国内外を問わず、また業務中・業務外を問わず、就業不能を補償しますが、加入時には告知が必要です。職業・職種の告知が必要で、職務内容によっては保険料が高くなったり、加入できかったりする可能性があります。例えば競輪選手やプロボクサー、プロレスラー、猛獣取扱者、力士など危険を有する職業の方は事前に確認しておくといいでしょう。
健康状態も告知が必要です。場合によっては契約できなかったり、条件付きでの契約となる可能性があります。なお、嘘の告知をすると、契約を解除されたり、保険金が支払われない可能性があります。ありのままを記入しましょう。
●所得補償保険の注意点2 死亡時の補償は準備できない
所得補償保険では死亡時は補償の対象外となります。死亡保障が必要な場合は、別途死亡保険に加入する必要があります。
●所得補償保険の注意点3 免責期間とてん補期間がある
所得補償保険には保険金の支払い対象外となる免責期間や、補償の対象となるてん補期間があらかじめ決められています。免責期間とてん補期間は商品によって異なります。免責期間を選択できるものもあり、その場合は免責期間を長く取るほど保険料は安くなります。ご自身の必要な補償と照らし合わせながら検討しましょう。
●所得補償保険の注意点4 補償が重複する場合、保険金が支払われない可能性
所得補償保険は損害保険会社が販売しており、保険金は非課税ですが、実損額の支払いを基本としています。補償が重複する場合、保険金が支払われない場合があります。
必要とする保障・補償を確認しよう
収入保障保険と所得補償保険は、名前は似ていますが、その内容はまったく異なります。加入前にはご自身が必要とする保障(補償)をあらかじめ確認した上で検討しましょう。
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内田英子 FPオフィスツクル 代表
教育費から保険、住宅、資産形成、キャリア、相続までライフプランと照らし合わせながら幅広い視点で家計を診る家計の総合医。ライフワークは金融教育。ライフプランシミュレーションで課題を整理し、望まない資金流出を避け、合理的な資産配置で生涯可処分所得を増やしながら望ましい未来をつくるお手伝いをしています。
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