24/04/16
国民年金保険料「40年間全額免除」だと、年金はいくらもらえるのか
国民年金保険料を支払えなくなったときの救済措置として免除制度があります。免除制度を利用すれば保険料の全部もしくは一部が免除されますが、将来もらえる年金額は減額されます。仮に国民年金保険料を40年間、全額免除を受けた場合、もらえる年金はどれくらい減額されるのでしょうか?今回は、国民年金保険料の免除制度の内容と40年間全額免除を受けた場合の年金額のほか、年金額を増やす方法をご紹介します。
国民年金保険料の免除制度とは?
失業したり、急激に収入が減ったりして国民年金保険料を支払えなくなる場合があるかもしれません。国民年金は納付期限(翌月末日)から2年以内に納めないと未納になってしまいます。保険料の未納が続くと、障害を負ったときにもらえる障害基礎年金や、万が一のとき残された家族が受け取れる遺族基礎年金を受けられなくなる場合があります。また、老後の生活費となる老齢基礎年金ももらえなくなってしまいます。
そのようなことにならないように、保険料を支払えなくなったときの救済措置があります。それが「国民年金保険料の免除制度」です。
●国民年金保険料の免除制度とは?
国民年金保険料の免除制度とは、失業や大幅な収入減など経済的な理由で国民年金保険料を納めることが困難になった場合、申請により保険料の全額もしくは一部が免除される制度です。
対象となる人は、以下の通りです。
・本人、世帯主または配偶者が失業した場合
・本人、世帯主または配偶者の前年所得が一定額以下になった場合
また、免除される額は「全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除」の4種類です。
免除制度に申請し承認されると、前年所得の状況により国民年金保険料の金額が決まります。2024年度の場合、国民年金保険料の金額は1か月あたり16,980円ですが、免除を受けた場合の国民年金保険料は
・全額免除 0円
・4分の3免除 4,250円
・半額免除 8,490円
・4分の1免除 12,740円
となります。
●免除制度を利用した場合、将来もらえる年金額
国民年金保険料の免除制度を利用した場合、免除期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれるため、将来年金がもらえなくなるわけではありません。しかし、免除された期間の年金額は、保険料を全額納付した場合よりも減額されます。
免除される額により老齢基礎年金は以下のように減額されます。
・全額免除:保険料を全額納付した場合の2分の1
・4分の3免除:保険料を全額納付した場合の8分の5
・半額免除:保険料を全額納付した場合の8分の6
・4分の1免除:保険料を全額納付した場合の8分の7
40年間「全額免除」の場合、年金額はいくらになる?
国民年金保険料の免除制度を利用すると、将来もらえる老齢基礎年金が原減額されることがわかりました。ではここで、40年間保険料を「全額免除」にした場合、保険料を全額納付した場合と比べてもらえる年金額がどれくらいになるのか見てみましょう。
ここでは2024年度の老齢基礎年金(満額)で比較します。
・国民年金保険料を40年間全額納付した場合の年金額:816,000円
・40年間、国民年金保険料を全額免除した場合の年金額
全額免除の年金額=国民年金保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1
=816,000円×1/2
=408,000円
40年間全額免除の場合、年金額は408,000円になることがわかりました。この場合、月額では34,000円になりますが、この年金額で生活していくのは厳しいことがうかがえます。
年金額を増やすためにやっておきたいこと
失業や収入減などやむにやまれぬ事情があり、免除制度を利用する場合があるかもしれません。しかし、将来年金生活になったときのことを考えると、できれば年金額を増やしておいた方がよいでしょう。実は、年金額は増やすことができます。ここでは年金額を増やす方法をご紹介します。
●免除制度を受けてから10年以内の場合
国民年金は10年以内であれば、さかのぼって保険料を追納(後払い)することができます。追納すれば、老齢基礎年金を増やせます。また、追納した分は全額、社会保険料控除の対象になるため、確定申告や年末調整をすることで、所得税や住民税を軽減することも可能です。また、年金額を増やすことができれば、生活が楽になるかもしれません。追納は最寄りの年金事務所へ国民年金追納申込書と、マイナンバーカードもしくはマイナンバー確認書類+本人確認書類を添えて申請します。
ただし、追納の際、3年以上前の保険料には加算額が上乗せされます。そのため、追納は2年以内に済ませることをおすすめします。
●60歳を過ぎたら国民年金に任意加入する
国民年金は、以下に該当すれば60歳から64歳の間、任意加入することができます。
・日本国内に住む60歳以上65歳未満の人
・老齢基礎年金の繰り上げ受給を受けていない
・国民年金保険料の納付月数が480月(40年)未満である
・厚生年金保険に加入していない
任意加入すれば、老齢基礎年金を増やすことができます。また、納めた保険料は全額、社会保険料控除の対象になります。年金を増やすことができ、加入している間の所得税と住民税を軽減できるのです。保険料を納めていない期間があるときは、老齢基礎年金を満額に近づけるためにも任意加入をおすすめします。ただし、任意加入時の保険料には免除制度がないので注意しましょう。
年金額を増やすことを考えよう
国民年金は20歳から60歳までの40年間加入すると、満額の老齢基礎年金をもらうことができます。しかし、事情により免除制度を利用すると、免除される額(全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除)に応じて、将来もらえる老齢基礎年金が減額されます。仮に40年間全額免除を受けた場合、保険料を全額納付した場合にくらべると、もらえる年金額が半額になってしまいます。
老後の生活を考えると、少しでも年金額を増やすために保険料の追納をしておきたいです。また、保険料の納付月数が40年に満たない場合、60歳から64歳の間、国民年金に任意加入して年金額を増やす方法もあります。少しでも生活に余裕ができたら追納し、それでも足りないときは任意加入を利用して年金額を増やすことをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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