21/07/11
年金を月20万円もらえるには、年収はいくら必要なのか
将来受け取れる年金の額は、誰もが心配していることの1つです。年金の受給額には、私たちの年収が大きく関わっています。たとえば、老齢年金を月20万円受け取れる人はいくらの年収をもらっているのか気になりませんか? そこで今回は、年金を月20万円受け取る場合と、iDeCoで年金を補てんして月20万円を受け取る場合の年収を試算してみました。
年金を月20万円受け取れる人の年収はいくら?
「老後は生活費がいくら必要になるの?」「年金はいくらもらえる? 足りるの?」生活費や年金は多くの人が気になっているのではないでしょうか。厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2019年度での老齢年金の受給権者平均年金月額は、14万4268円(老齢厚生年金+老齢基礎年金)という結果が出ています。また、生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査/2019年度」によると、夫婦で老後生活を送るうえで最低日常生活費として必要な額は平均22.1万円(月額)という調査結果も出ています。夫婦で年金を合わせれば最低日常生活費の額は満たせるかもしれません。しかし、ゆとりのある老後生活を望むなら、年金だけでなく別途貯蓄などで備えておいたほうがよいかもしれません。
そこで、月20万円の年金を受け取るには、年収がいくら必要なのかを調べてみました。
<月20万円の年金・年収計算の基本的な条件>
・対象者は会社員、配偶者なし、扶養家族なし
・2003年4月以降に就職
・厚生年金保険の加入期間は37年になる見込みとして試算
(20歳から3年間は国民年金に加入。通算加入期間は40年)
・満額の老齢基礎年金を年額78万900円とする→月額:6万5000円とする
・年金を月20万円もらう場合に必要な老齢厚生年金額:月額13万5000円→年額162万円
●老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額を試算
平均標準報酬額(X)×5.481/1000×2003年4月以後の被保険者期間の月数444月=162万円
X×0.005481×444月=162万円
X≒66万5690円
ただし、標準報酬月額の上限は65万円。
65万円で報酬比例部分を計算すると、158万1817円⇒月額13万1818円
老齢基礎年金の月額6万5000円+老齢厚生年金の月額13万1818円=19万6818円
この場合、約20万円の年金を受け取れることになります。
・年金を月20万円受け取れる年収
標準報酬月額65万円の場合、標準月額は63万5000円~66万5000円となるので、
63万5000円×12=762万円
試算の結果、年金を月20万円受け取る場合の年収は、【約762万円】になることがわかりました。国税庁が公表している「民間給与実態統計調査(2019年分)」によると、平均給与(年収)は436万円(男性540万円・女性296万円)という結果が出ています。また同調査によると、年収800万円超の人は全体の9.6%(男女計)という結果も出ています。年収約762万円はひと握りの人かもしれませんね。
月20万円の年金を実現するのにiDeCoを活用する場合の年収はいくら?
先ほどの試算で、年金を月額約20万円受け取るには、約762万円の年収が必要になることがわかりましたが、それほど年収の高くない人は月20万円の年金を受け取るのは無理なのでしょうか?
いえいえ、あきらめなくても大丈夫です。月20万円もらえる年収に届かなくても、年金を補てんできる制度や貯蓄を活用すればいいのです。年金を補てんする方法の1つが「iDeCo(イデコ)」です。iDeCoは掛金全額が所得控除になり、運用益は非課税、受取時も税制優遇を受けることができます。受け取る年金にかかる税金を減額することができるので、年金の補てんに活用したい制度の1つといえます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金にiDeCoの年金を加えて、合計で月20万円を受け取る場合に必要となる年収の例を計算してみましょう。
<月20万円の年金・年収計算の基本的な条件>
・対象者は企業年金のない企業に勤める会社員、配偶者なし、扶養家族なし
・2003年4月以降に就職
・厚生年金保険の加入期間は37年になる見込みとして試算
(20歳から3年間は国民年金に加入。通算加入期間は40年)
・満額の老齢基礎年金を78万900円とする→月額:6万5000円とする
・iDeCoに満額加入:掛金月額2万3000円→年額27万6000円
・iDeCoは年利3%で30年間運用:30年後に1340.3万円になるとする
・iDeCoの年金は、60歳から20年間、年金方式で受け取るものとする:月額約5万5800円
1340.3万円÷20年=67万150円 67万150円÷12≒5万5800円
・年金を月20万円もらう場合に必要な老齢厚生年金額:月額7万9200円
20万円-(5万5800円+6万5000円)=7万9200円→年額95万400円
●老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額を試算
平均標準報酬額(X)×5.481/1000×2003年4月以後の被保険者機関の月数444月=95万400円
X×0.005481×444月=95万400円
X≒39万538円
ただし、この場合の標準報酬月額は38万円。
38万円で報酬比例部分を計算すると、92万4754円⇒月額7万7063円
老齢基礎年金の月額6万5000円+iDeCo5万5800円+老齢厚生年金の月額7万7063円=19万7863円
この場合、月額約20万円の年金を受け取れることになります。
・老齢年金を月20万円受け取れる年収
38万円×12=456万円
試算の結果、満額のiDeCoで補てんして年金を月20万円受け取れる人の年収は、【約456万円】になることがわかりました。国税庁の「民間給与実態統計調査(2019年分)」によると、平均給与(年収)は436万円。平均的な年収があれば、iDeCoを活用することで年収約762万円の人と同程度の年金収入に近づけることができるかもしれない、ということですね。
年金を補てんする制度を活用しよう
老後も安心して生活するためには、受け取れる年金に頼るだけでなく、iDeCoなどを利用して年金の不足分を補うことを考えたほうがよいでしょう。また、iDeCoのほかにも、税制優遇が受けられる制度はあります。たとえば、年間40万円を最長20年間、非課税で運用できる「つみたてNISA」を利用してもよいでしょう。
現在満55歳未満の人で、お勤めの会社が財形貯蓄を実施しているのであれば、貯蓄残高(※財形住宅貯蓄とあわせた残高)が550万円までは非課税になる「財形年金貯蓄」を利用する方法もあります。年金の補てんの方法は通常の預貯金や運用でもよいでしょう。大事なのは、何かしらの方法で年金の補てんを実行すること。そのためには、毎年送られてくる「ねんきん定期便」で自分は年金をいくら受け取れる見込みなのかを確認することを忘れないようにしたいですね。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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