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20/05/16

相続・税金・年金

75歳まで繰下げると年金が84%増額!? 年金は何歳から受け取るのが正解か

2020年通常国会に提出された「年金制度改正法案」の中に、受給開始年齢を現行の70歳までから75歳までへと、5年間延ばす改正案が盛り込まれています。
75歳まで延長されることで、年金額はどのように変わるのでしょうか。
今回は「75歳繰下げ」を考えてみます。

年金の繰上げ・繰下げ制度とは?

老齢年金は本来65歳から受け取り始めることになっています。しかし希望すれば、60歳~70歳の間の好きな時から受け取り始めることができます。
60歳~64歳11カ月までに受け取り始めることを「繰上げ」といい、1カ月早めるごとに本来の年金額より0.5%ずつ減ります。例えば、63歳で受け取り始めると、0.5%×24カ月の12%減額されることになります。
一方、66歳~70歳の間に受け取り始めることを「繰下げ」といい、1カ月遅らすごとに本来の年金額より0.7%ずつ増えます。例えば、68歳からならば、0.7%×36カ月で本来の年金額より25.2%増額されます。

どちらも一度繰上げまたは繰下げを選ぶと元に戻すことはできず、一生涯、減額または増額された年金を受け取り続けることになります。

75歳まで繰下げると年金はいくら増えるの?

今回改正法案に上がっている「年金受給時期の選択肢の拡大」は、現在繰下げの上限であった70歳を75歳に5年間延ばそうというものです。増額率は70歳までと変わらず1カ月0.7%なので、75歳で受け取り開始を選べば、0.7%×120カ月で84%増額します。

65歳から受け取る年金が本来240万円の人が、年金の受け取りを10年間待って75歳で受け取り始めると、184%増の442万円となります。月収20万円から37万円になり、生きている限り増額された年金を受け取り続けることができます。

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繰上げ・繰下げを選んでいる人はどれくらい?

では、現状繰上げ・繰下げを選んでいる人はどれぐらいいるのでしょうか?
令和元年12月厚生労働省発表の「平成30年度厚生年金・国民年金事業の概況」によると、次のとおりです。

●年金受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況

厚生労働省「平成30年度厚生年金・国民年金事業の概況」より筆者作成

2018年度で見ると、繰上げを選んでいる人は12.9%、一方繰下げは1.3%と、繰上げのほうが約10倍多いのです。このような状況で75歳繰下げを選択する人はどれほどいるかという疑問もわいてきます。

しかし、表からわかるように傾向としては、繰上げ選択率は下がってきており、繰下げ選択率が上がってきています。また、国は現行の65歳まで希望すれば働き続けることができる制度を70歳まで引き上げようとしています。
そのような流れの中で、今回の改正案が出てきているのです。

何歳まで生きたら繰上げて損、繰下げて得なの?

では、何歳まで生きたら繰上げで損するのか、繰下げて得なのかの損益分岐点を考えてみましょう。
わかりやすいように、65歳からの年金が120万円の人で考えてみますが、損益分岐点の年齢は年金額で変わりはありません。

●60歳から繰上げ受給の場合

受け取り額は、0.5%×12カ月×5年=30%減額されるので、年金は84万円。
84万円×5年=420万円、本来受け取れなかったお金を受け取った。
420万円÷(120万円-84万円)=11.67年
損益分岐点は76.7歳で、77歳以降生きていたら本来の65歳受給開始より損することになる。

●70歳から繰下げ受給の場合

受け取り額は、0.7%×12カ月×5年=42%増額されるので、年金は170.4万円。
120万円×5年=600万円、本来受け取れたお金が受け取れなかった。
600万円÷(170.4万円-120万円)=11.90年
損益分岐点は81.9歳で、82歳以降生きていれば本来の65歳受給開始より得することになる。

●75歳から繰下げ受給の場合

受け取り額は、0.7%×12カ月×10年=84%増額されるので、年金は220.8万円。
120万円×10年=1200万円、本来受け取れたお金が受け取れなかった。
1200万円÷(220.8万円-120万円)=11.90年
損益分岐点は86.9歳で、87歳以降生きていれば本来の65歳受給開始より得することになる。

つまり何歳まで生きたかで損得が決まるということです。とはいえ、繰上げ繰下げを選ぶ時点で何歳まで生きるかわかりません。損得勘定で考えるのは結果論にすぎないので、有効な考え方ではありませんね。

なお、加給年金や振替加算があれば、その部分は先もらいできなかったり、遅らせても増額されなかったりするので、損益分岐点は異なります。

まとめ

ではどのように繰上げ・65歳請求・繰下げを考えればいいのでしょうか?
年金以外のどんな収入がいくらあるのか、何歳のときにどんな暮らし方をしたいのか、加給年金や振替加算などその人独特の加算があるかなどでも、最適な年金をもらい始める時期は異なってきます。
もし繰上げや繰下げをお考えなら、ご自身のセカンドライフの目的を共有できる、年金の専門家にご相談されることをお勧めします。

小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター

社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。

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