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20/03/29

相続・税金・年金

年金の天国と地獄。地獄の老後生活を避けるためには

あなたの老後生活は「天国」ですか? それとも「地獄」ですか?
そんなことを考えたことはありませんか? もしや、「老後のことはあまり考えたくない」などと、避けて通っていませんか?
今からでも、老後について、少しは考えた方がいいのです。とくに年金については知識があるかどうかで、老後生活が「天国」にも「地獄」にもなるのです。

「公的年金の受給額は、もうだいたい決まっているのでは?」「いまさらジタバタしたって年金の受給額は変わらないのでは?」「どうせ、年金なんてあてにしていないから関係ない」なんてあきらめていませんか?

このように考えているのでしたら、もしかすると老後の生活は「地獄」行きになってしまうかも知れません。では、どんな人が「天国」で暮らせて、どんな人が「地獄」で暮らすことになってしまうのでしょうか?
具体的な例をあげて説明しましょう。

そもそも、年金が少ない人は老後生活が厳しくなる

まずは、老後資金は2000万円〜3000万円必要だと言われている理由から考えていきましょう。

老後生活には、もちろん生活費がかかります。
高齢夫婦無職世帯の1ヵ月の支出の平均は約26万円と言われています。その一方で年金など、収入の平均は約22万円。差額は毎月約4万円の赤字となります。仮に65歳から95歳までこの収支で生きるとしたら、約1440万円必要だと言うことになります(総務省統計局「家計調査(家計収支編)」2018年)。

しかし、この収入の平均というのは、夫婦2人の基礎年金や厚生年金の合算金額です。たとえば、自営業で国民年金だけの場合は、年金額が少なくなります。基礎年金の満額は1人あたり年78万100円です(2020年)。月額に直すと約6万5000円、夫婦あわせても月額約13万円と言うことです。

また、支出も持ち家が前提で、賃貸の場合ではありませんし、もし介護が必要になった時のための予備費なども入っていません。さらに「たまには海外旅行も行きたい」といった余暇費用まで考えるとなると、やはり2000万円〜3000万円以上は必要になります。

平均よりも収入が少なくて、支出が多い場合は、先々かなり厳しい老後生活が予想されます。
そんな老後って「地獄」ですよね。

基礎年金だけでは、老後生活は厳しくなる

老後は基礎年金が主な収入になるAさんの場合を見てみましょう。

Aさんは大学を卒業後デザイン事務所に就職して、ある程度キャリアを積んでから退社。その後はフリーランスで活躍しました。Aさんの趣味はスキューバダイビングで、そこで知り合った同じフリーランスの人と結婚。二人ともフリーランスなので、国民年金だけを支払ってきました。少し長い休みが取れるとスキューバダイビングのスポットに旅行に行くという生活を楽しんでいました。今まであまり貯蓄には興味がなかったので、老後資金を貯めてこなかったと言うことです。

こういったフリーランスや自営業の人は、夫婦とも基礎年金だと2人合わせても月額約13万円だけになってしまいます。生命保険文化センター調べで、夫婦2人の最低生活費は22.1万円が必要だという調査があります。
つまり、基礎年金では最低生活さえもできなくなってしまうので、会社員などより自助努力が必要になります。そうしないと「地獄」が待っています。

フリーランスでも老後の準備ができればパラダイス!

同じく基礎年金が主な老後の収入になるフリーライターのBさんは経済記事を得意としています。フリーのエンジニアの夫と2人暮らしです。お金には詳しく、国民年金だけでは老後生活は成り立たないというのは知っていました。そこで国民年金基金に満額加入、そして小規模企業共済にも加入しています。月額の掛け金はけっこう負担になるものの、掛金の全額が税制優遇になるため、確定申告した後には税金が戻ってきます。その金額はかなり大きなものです。

国民年金基金は、自営業者やフリーランスなどのための年金の上乗せ制度です。
国民年金基金のウェブサイトで試算すると、たとえばBさんが30歳の時点で国民年金基金に加入して、年間の掛け金が75万9660円だった場合、65歳から受け取れる年金額は月額11万円です。基礎年金とあわせれば月額17万5000円になります。夫婦で加入すると少し余裕のある老後になりそうです。しかも、Bさんの課税所得が500万円だった場合、所得税・住民税の合計は年間で23万1088円が軽減されます。とてもお得だと思いませんか? こうしておけば基礎年金と国民年金基金は終身年金ですので老後は安泰です。

また、小規模企業共済は、小規模の事業者が節税しながら退職金を積み立てできる制度です。Bさんは仕事を辞めたときに、この小規模企業共済の解約手当金を年金の繰下げ受給のための生活費にする予定です。

この夫婦ならば、いつまでも楽しめる「天国(パラダイス)」老後の生活をおくることができるでしょうね。

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年金の繰上げ受給で老後生活が地獄になった!

夫婦共稼ぎのCさんの家族は、同い年の夫と2人の子どもの4人暮らしです。住宅ローンと教育費のダブルパンチで、貯金はスッカラカン。とは言え家事にも仕事にも疲れてしまったのですが、なんとか定年の60歳までは働くつもりです。60歳になったら年金を繰上げ受給して、それを自分のお小遣いに充てるつもりです。夫は、60歳で定年後も給料は減ってしまいますが、再雇用で65歳までは働く予定です。

もし、仮に65歳で年金を受け取るとすると、Cさんの65歳の年金額は140万円、夫の年金は160万円です。65歳で受け取るとすると夫婦合わせて300万円です。年間300万円ということは月額25万円で、2人ならギリギリですが生活ができそうです。ただし、家賃などがある場合はかなり厳しい生活になると思います。

しかし、前述のようにCさんが年金を繰上げて60歳で受給してしまうと、年金額は98万円に減額になります。ご主人の160万円とあわせても258万円です。つまり月額は21.5万円です。先ほども述べたように最低の生活費として22.1万円を考えると、この金額で生活するのは、かなり厳しいことになってしまいます。これでは、老後生活は「地獄」かも知れませんね。

夫婦で年金の繰下げ受給をして「天国」に!

一方、Dさん家族は、Cさんと同じく共稼ぎで子ども2人の4人家族です。住宅ローンと教育費で60歳の時点では貯金はゼロ。しかし、このままではダメだと思い、2人で65歳まで再雇用で働いて、その間に貯まった貯蓄を利用して2人とも70歳まで繰下げ受給をしました。
Dさんの65歳の年金額は140万円、夫の年金は160万円です。それが70歳まで繰下げをすると、Dさんは198.8万円、夫は227.2万円で合計426万円になります。月額は35.5万円ですので、なんとか生活費に困らない暮らしができそうです。

金額としては「天国」と言うほどではありませんが、少しゆとりのある暮らしはできます。でも、考えてみてください。年金は終身で受け取ることができます。長い老後生活、お金の心配をしないで暮らしていけるということは幸せです。これは「天国」ではないでしょうか。

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まとめ

老後生活を「天国」にする年金ということで、国民年金基金や繰下げ受給を紹介しました。一方で、基礎年金だけの場合や繰上げ受給をした場合は収入が減りるため、老後生活が「地獄」になってしまう恐れがあります。
「天国」が実現できるように、みなさんもぜひ年金のことを考えてみてください。

長尾 義弘 NEO企画代表

ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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