21/12/14
「勧められたから」で保険に加入している人は6割。良い保険と悪い保険を見分けるには
生命保険・損害保険などのコラムは、いままで100本以上書いてきました。その中で保険を選ぶときは、経済合理性を考えて、必ず複数の保険商品を比較しながら賢く選びましょうと述べてきました。
しかし、実際には、加入の最終判断に大きく影響を与えるのは、感情になってしまっているのが、ちょっと残念です。
なぜかというと、義理・人情を優先させて、「損」をしてしまうことがとても多いからです。
保険の加入理由の多くは「人に勧められたから」
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2021年)のデータでは、加入チャネルの約半数は生命保険会社の営業員からの加入です。保険の営業などを通さない加入というのはわずか1割ぐらいになっています。
その保険の加入理由(複数回答)というのをみると、「営業員や代理店の人が親身になって説明をしてくれたので」(21.4%)「営業職員や代理店の人が知り合いだったから」(15.1%)「以前から加入していた営業職員や代理店の人に勧められたから」(13.7%)「家族・友人・知人に勧められたので」(12.9%)。
もちろん、「希望にあった生命保険だったので」(42.3%)という回答もありますが、その大きな理由は、人に勧められたというのが多いと言えるでしょう。
保険というのは、マイホームに続いて大きな買い物なのに……。それを人に勧められるままに、そして人任せで決めてしまってよいのでしょうか?
保険は、マイホームの次に大きな買い物
生命保険文化センターのデータによると、世帯平均の保険料は、年間37.1万円だそうです。生命保険というのは超長期の契約です。20年、30年、場合によって40年以上ということもあります。
30年間保険料を払い続けると、1113万円になります(37.1万円×30年)。
保険料というのは、毎月引き落とされているので一見大きな金額という感じはしませんが、総額で考えるとマイホームの次に高い買い物になるというのが、おわかりになると思います。
それを、親身に相談にのってくれたからとか、義理(何の義理なんでしょう?)があるからという理由で契約をするというのは、後々大きな後悔につながる恐れがあります。
わからないのと言う理由で人任せにするのはおかしい?
パソコンや家電商品を購入するときには、メーカーのパンフレットを見ながら商品を比較検討します。また家電量販店に行って、店員に説明を聞いたり、ネットの口コミ情報を読んだりして自分でも調べて購入をします。
なのに、保険はよくわからないということで、比較検討せずに人任せにしていませんか?
1社の保険営業員の話だけで決めてしまうのは、おかしいと感じないでしょうか?1社だけでは他の商品との比較検討はできません。また、保険営業員は少なくとも中立ではありません。保険会社からお金をもらって保険を売っている人です。当然、自社の商品を勧めます。
じつは、保険の無料相談を行っている保険代理店も同じです。扱っている商品は複数ありますが、やはり保険を販売するのが仕事です。保険を相談しに来る人は、保険商品を買ってくれるお客さんです。いくら親身に相談に乗ってくれるといっても、それは保険を買う客だからです。だって相談料を支払っているわけではありませんから。
保険の営業員は保険を売るのが仕事です
保険営業員も保険を売らないと、営業成績が悪くなります。生命保険会社の営業員は、個人事業主という立場の人が多いのです。つまり固定給はありますが、歩合制になっているのです。そのため、成績が悪いと収入に直結することもあります。
保険営業員が親切にしてくれるのは、保険を買ってくれるからです。そう考えると、そこで「義理」とか「人情」を感じる必要はない、と割り切ることが大切です。
保険のトークは感情に訴えるもの
保険のセールストークとは、まさに感情に訴えるものです。
「病気になって、入院したら大変ですよ。治療費もいっぱいかかるし、入院が長くなるととても困るから保険に入っていると安心です」と医療保険を勧められます。
これを合理的に考えるとたしかに入院は、病気で「辛い思いをするので大変」です。しかし入院費などの治療費はかかりますが、一般的には自己負担は3割です。そして高額療養費制度があるので負担は一般的な収入の人は月額9万円ぐらいです。入院の6割以上は10日間以内です。長期の入院というのは少ないです(高齢者は長期化になることもありますが)。
保険をお守り変わりと考えてしまいがちですが、保険料の総額を考えてください。総額で数百万円かかるかも知れません。お守りにしては超高額です。
「安心」を得られるというのはわかりますが、合理的に考えてみましょう。
公平中立な情報に耳をかたむける
保険会社の営業職員や保険代理店の相談員というのは、保険のプロではなく、保険販売のプロです。
保険を売るのが仕事です。
では、正しい保険選びの情報は、どこから得ればよいのでしょうか?
できるだけ公平中立な情報を発信しているところを見つけるしかありません。そこから得た情報をもとに、自分の知識を高め、自分にあった保険を選ぶというのが一番でしょう。
公平中立な立場で情報を発信している人の数は、ハッキリ言って少ないです。なぜなら保険を販売していない人で、保険の情報を持っているという人が少ないからです。ですが私も含めて誠実に正しい情報を発信している人はいます。そんな情報に耳をかたむけて、保険のリテラシーを高めていただきたいです。
また、保険の広告が入っている情報誌は中立とは言えませんが、広告の入っていない保険のムックもあります。そんな保険のムックから情報を得るのもいいと思います。
できるだけ中立で正しい保険の情報を参考にしていただき、納得のいく保険選びができることを心より願っております。
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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