25/07/11
あの人と同じ年収なのに、もらえる年金額が違うのはなぜ?年金額が変わる4つのポイント

「年収が同じなら、将来もらえる年金額も同じだろう」と考えていませんか?実は、働き方や加入している年金制度の違いによって、年金額には大きな差が生まれます。本記事では、同じ年収でも将来の年金額に差が出る4つのポイントについて、具体的に解説します。
同じ年収でも年金額が変わるポイント①:働き方の違い(自営業者か会社員か)
まず、加入している公的年金によって、年金額に大きな違いがあります。日本の年金制度では、国民年金は全員加入、会社員や公務員は国民年金に加えて厚生年金にも加入する2階建ての構造になっています。
自営業やフリーランスの場合は、1階部分の国民年金のみです。国民年金から支給される老齢基礎年金は、満額でも月額約6.9万円(令和7年度)にとどまります。
厚生年金に加入していた人は、加入期間や報酬に応じて年金額が上乗せされます。厚生年金から支給される老齢厚生年金の平均額(老齢基礎年金を含む)は月額約14.6万円(厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。年収が同じでも、老齢基礎年金のみの自営業者と老齢厚生年金ももらえる会社員・公務員では、年金額に大きな差が出てしまいます。
同じ年収でも年金額が変わるポイント②:扶養家族の有無
厚生年金には加給年金という制度があります。加給年金とは、老齢厚生年金を受け取る人が一定の条件を満たした配偶者や子供を扶養している場合に、上乗せして支給される扶養手当のようなものです。
たとえば、厚生年金に加入していた人が65歳になったとき、65歳未満の配偶者を扶養している場合には、加給年金として年額41万5900円(令和7年度)を加算した年金を受け取れます。加算額は月額で約3.5万円にもなり、数年間支給されると、総額で100万円以上の差になります。家族構成によっても年金額に大きな差が出てくるのです。
同じ年収でも年金額が変わるポイント③給与とボーナスの内訳
老齢厚生年金の主な構成部分である「報酬比例部分」は、標準報酬月額や標準賞与額にもとづいて決まります。同じ年収でも、月給と賞与の内訳によって将来の年金額が変わることがあります。
老齢厚生年金は、各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額から出した平均額に支給乗率と加入月数を掛けて計算します。ただし、標準報酬月額には65万円、標準賞与額には1回150万円という上限が設けられています。そのため、月給が高い人よりも賞与分がある人のほうが将来受け取る年金額が多くなる傾向があるのです。
同じ年収1000万円である以下のAさんとBさんの例で見てみましょう。
Aさん:月給62万円×12ヶ月、賞与年2回(夏130万円、冬126万円)
Bさん:月給83万円×8ヶ月+84万円×4ヶ月(賞与なし)
Aさんは月給も賞与も上限以下のため、全額が年金計算に反映されます。一方、Bさんは月給が上限を超えるため、月給65万円として年金額が計算されます。その結果、同じ年収でもAさんの方が多く年金を受け取れることになります。
同じ年収でも年金額が変わるポイント④:企業年金やiDeCoなどの加入状況
同じ年収でも、勤務先の制度や個人の取り組みによって、老後に受け取れる年金額はさらに変わってきます。
企業年金(企業型DC・企業型DB・厚生年金基金など)がある会社で働いていた場合、老後に公的年金に加えて企業年金を受け取れます。制度のない企業に勤めていた人とは、数百万円単位の差がつくこともあります。
また、個人でiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入していた場合にも、年金は多くなります。自営業者の場合には、国民年金基金や小規模企業共済、付加年金への加入で、年金額が増えます。同じ年収でも、私的年金制度への加入状況により、年金額は変わることになります。
年収だけでは年金額は決まらない
年金額は、収入の金額だけでなく、働き方や家族構成、給与と賞与の内訳、私的年金制度の加入状況といった複数の要因によって変わります。老後の年金額を少しでも増やしたいなら、自分の働き方や制度の選択を見直すことが第一歩です。老後の不安を減らすために、早めの行動を心がけましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。

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