25/04/24
【知らないと大損】ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない4つの年金と確認方法

ねんきん定期便(年金定期便)をしっかり確認したことはありますか?
ねんきん定期便(年金定期便)は、将来受け取れる年金額の目安やこれまでの加入履歴が記載されている大切な書類ですが、実は「すべて」の年金が載っているわけではありません。
今回は、YouTubeチャンネル登録者27万人超の「定年前後のお金の新常識【社労士みなみ】」を運営されている社労士みなみさんをゲストに招いて収録したMoney&YouTVの動画「【知らないと大損】年金定期便に載らない4つの年金!ねんきん定期便の確認方法【社労士みなみの年金戦略初公開】」の様子をお届けします。社労士みなみさんには、ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない4つの年金と、その確認方法についてわかりやすく教えていただきました。
社労士みなみさんは、社労士YouTuberとして、定年前後の年金・社会保障制度の情報を発信しています。また、社労士として小さな会社の企業型確定拠出年金の導入支援を行って経営者と従業員の老後資産形成をサポート。2024年には「もらう×増やす×出費を減らす年金最大化生活」(アスコム)を出版されています。
ねんきん定期便(年金定期便)の見込額は「今の働き方が60歳まで続いた場合」の数字
社労士みなみさん:みなさん、次のようなねんきん定期便(年金定期便)を見たことがあると思います。
<ねんきん定期便(年金定期便)のイメージ(50歳以上)>

社労士みなみさんの資料より
社労士みなみさん:ねんきん定期便(年金定期便)の赤枠部分に記載されているのは、今の状態のまま60歳まで働いた場合に65歳から受け取れる年金額の見込額です。今後早期退職や役職定年で収入が減れば、年金も下がる可能性があります。
頼藤:なるほど。じゃあ思ったよりも少なかったという要因になるのですね。
社労士みなみさん:そうです。逆にですね、転職したり給与が増えたりした場合は年金額が増える可能性もあります。
高山:それは嬉しいことですね。
社労士みなみさん:もう一つ気をつけたいことは、ここに書かれている年金額は丸々もらえないということです。この金額が銀行口座に振り込まれるわけではありません。年金をもらう直前に相談に来られて年金は丸々貰えないって言われる方が多いんですよね。
頼藤:なるほど。
社労士みなみさん:ねんきん定期便(年金定期便)に載っている金額は、税金や社会保険料が引かれる前の額面です。実際の手取り額はこの金額より少なく、年金が少ない人で約5%、多い人では20%近く差し引かれます。
高山:結構引かれますね。
頼藤:だいたい10%くらいですか?
社労士みなみさん:そうですね。一般的には10%と考えていただいて良いと思います。
ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない4つの年金
社労士みなみさん:それでは、ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない4つの年金を紹介していきます。
●ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない年金1:加給年金
社労士みなみさん:加給年金は「年金版の家族手当」と呼ばれるものです。この後説明する要件を満たした人に年金にプラス41万円が加算されます。そして、みなさんの手元に届く年金定期便にはこれらの年金については何も書かれていません。
頼藤:じゃあ、別途通知書が来るみたいな感じですか?
社労士みなみさん:いえ、来ないです。65歳になると国民年金・厚生年金といった老齢年金の申請をしますよね。そのときに裁定請求書という書類を提出します。そこに加給年金を書く欄があります。書いていただくと、その方が該当している場合に加給年金が加算されます。
頼藤:では、忘れずに記載しないといけないですね。
社労士みなみさん:裁定請求書に加給年金欄があるということを知らないと、もらえるものももらえなくなってしまいます。もらえる権利はあるものは忘れずにきちんともらう。これは私が提唱する年金最大化生活の重要なポイントとなります。
<加給年金の支給条件>

社労士みなみさんの資料より
社労士みなみさん:加給年金は、厚生年金に20年以上加入していて、65歳時点で生活を維持している配偶者または子がいる場合に加算されます。具体的には65歳未満の配偶者、18歳年度末までの子供、または20歳未満の障害1級2級の子供がいる場合に加給年金が支給されます。
ただし、生活を維持されている配偶者または子供の収入が年収850万円未満または所得が655万5000円未満であることが条件です。
頼藤:稼いでいたらもらえないってことですね。
社労士みなみさん:そうです。この生活維持の年収要件を知らない方が多いのでぜひ覚えておいてください。
高山:加給年金はいくらもらえるのか、気になりますね。
社労士みなみさん:加給年金の金額は、65歳未満の配偶者がいれば年額23万9,300円(令和7年度)で、生まれ年による特別加算もあります。特別加算の金額はこれから年金をもらう方ならば年額17万6,600円(令和7年度)ですので、合わせて年額41万5,900円になります。
頼藤:約40万円もらえると。
社労士みなみさん:そうですね。結構もらえます。
18歳年度末までの子供または20歳未満の障害1級2級の子供がいる場合にも2人までは各23万9,300円(令和7年度)、3人目以降は各79,800円(令和7年度)が加算されます。
高山:かなり大きな金額ですね。
社労士みなみさん:そして重要なのが加給年金の判定タイミングです。これはピンポイントで判定されます。
加給年金の支給対象かどうかは65歳到達時(厳密には誕生日前日)の状態で判定されます。65歳到達時に離婚していたり、内縁状態であることが証明できる公的な書類が必要になります。こうした条件を満たさないと、加給年金はもらえません。
高山:照明がないとダメということですね。
社労士みなみさん:そうです。
加給年金の総額は、受給者と配偶者の年齢差によって決まります。たとえば、年齢差が5歳ならば約200万円、10歳差ならば400万円、15歳差ならば600万円ということで、年齢差があるほど受給できる金額は多くなります。
頼藤:年上の夫または妻が年下の妻または夫を養うということですよね。年下の配偶者が65歳になるまではもらえると。
社労士みなみさん:そうです。法律上は養っている人が夫でも妻でももらえます。ただ、年齢下の夫(妻)が年齢上の妻(夫)を養うときにはもらえません。
頼藤:ちょっと昔ながらの制度というところですね。
●ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない年金2:振替加算
社労士みなみさん:振替加算は、夫(妻)の加給年金が終了した後に、妻(夫)の国民年金に加算される制度です。
<振替加算のイメージ>

社労士みなみさんの資料より
社労士みなみさん:この例で、年下の妻が65歳になった時点で夫が受け取る加給年金の支給は終了します。それと入れ替わりで妻の国民年金に振替加算が上乗せされます。
振替加算がもらえる人の条件は、次のとおりです。
【振替加算の対象条件】
1.夫の厚生年金の加入期間240月以上
2.妻の厚生年金の加入期間240月未満
3.妻の年収は850万円(所得655.5万円)未満
4.生年月日が大正15年4月2日~昭和41年4月1日までである
※夫婦は逆の立場でもよい
※65歳達した日において年上の配偶者に生計を維持されている
頼藤:2025年だと59歳ということですね。
社労士みなみさん:そうです。
2025年時点で59歳〜64歳の女性が受給できる金額は年間で1万6000円になっています。
高山:そうなんだ。
頼藤:結構減りますね。振替加算で受給できる金額は年齢に応じて減少。
社労士みなみさん:そうですね、現在80代の方は年間10万円以上の方もいますが、生年月日に応じて減少しているんですね。昭和41年4月2日以降生まれの人は振替加算はありません。
頼藤:対象にならないということですね。
●ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない年金3:厚生年金基金
社労士みなみさん:厚生年金基金は未請求が非常に多いですね。2024年3月時点で113万人が請求していません。
頼藤:毎年公表されていますけど、減らないですね。
社労士みなみさん:なぜこういったことが起こるのかというと、本人が厚生年金基金に加入していた認識がないんですね。
頼藤:認識がなければ請求もできないですもんね。
社労士みなみさん:厚生年金基金は、たとえ1か月だけの加入だったとしても受給権が発生します。企業年金連合会が支払う年金額の平均額は月5万円。年間で60万円を受給しています。ですので、厚生年金基金を忘れて請求しないのは非常にもったいないということですね。
高山:もったいない!
社労士みなみさん:厚生年金基金の未請求について、年金事務所に問い合わせるのもひとつの方法ですが、日本年金機構のねんきんネットにある「被保険者記録照会回答票」を取り寄せることでも確認可能です。厚生年金基金の加入期間が記載されているのに未請求だった場合には、企業年金連合会に直接連絡してみいましょう。
頼藤:転職が多かった人は要確認ですね。会社の細かい企業年金制度まで知らない人も多いと思います。
社労士みなみさん:そうですね。会社でたとえば「企業年金ありますか」「確定拠出年金していますか」と聞くと「あるような、ないような」という返事が(笑)。意外と知らない方が多いですね。
頼藤:視聴者のなかで転職が多い方は要チェックということですね。
●ねんきん定期便(年金定期便)に載っていない年金4:持ち主不明年金
社労士みなみさん:4つめは持ち主不明年金です。紙の台帳からオンラインシステムへの移行過程で、データの移行が正確に行われなかったり、基礎年金番号と正しく結びつけられなかったりして、平成19年時点で5095万件もの持ち主不明年金が発生しました。
頼藤:5095万人!日本人の働いている人のほとんどですね。
社労士みなみさん:そういう数になりますね。ただ1人で複数の基礎年金番号があったり、事業所ごとに分かれていたり、あと亡くなった方の分もまだあったりしているのではないかと思います。
高山:そうですよね、じゃないとすごい数です。
頼藤:それにしてもすごい数です。
社労士みなみさん:みなさん「若いから大丈夫」などと思っているのですが、そうでもないデータもあります。
<年金記録の未統合件数>

社労士みなみさんの資料より
社労士みなみさん:未統合記録というのが持ち主不明の年金の記録です。もっとも多いのが昭和30年代生まれで、2025年時点で60代の方です。
頼藤:昭和60年以降も、300万件くらいありそうですね。
社労士みなみさん:そうなんです。ですから、30代の方も40代の方も該当するかもしれません。
どのようなケースが多いかというと、まず先ほども出てきた「転職が多い場合」。それから「結婚や離婚で名字が変わった場合」。
高山:頼藤さん、「よりとうさん」とか言われてません?
頼藤:「よりふじ」ですけどね(笑)
社労士みなみさん:下の名前の「けいこさん」と「よしこさん」のように「名前の読み方が複数ある場合」にも注意が必要です。
高山:ああ、そうか。漢字だけだと間違いますよね。
社労士みなみさん:あとは生年月日などでしょうか。今はそういうことはあまりないと思うんですけど。ゆるかった時代に生年月日をごまかしたこともあるようです。
頼藤:年齢詐称していたと。
社労士みなみさん:一回ごまかしてしまうと訂正のしようがないので、実は年金で損しているかもしれません。ですので、ぜひ調べてみてください。
持ち主不明年金の有無は、日本年金機構の「持ち主不明記録検索」ページで検索できます。日本年金機構が提供するオンラインシステムを利用してご自身の名前や生年月日を入力して確認できます。こちらに何か思い付く限りを入れていただいて調べていただければと思います。
頼藤:結婚したり離婚したりすると、特に女性は名字変わりますからね。
社労士みなみさん:そうですね。ですから、調べていただければと思います。
調べた結果、30年前の年金が見つかったという場合には、30年間遡って年金を受け取れます。しかも、年金記録の訂正には時効はないため、さかのぼって全額受け取れます。
過去には、年金記録の訂正により1000万円以上の年金を一括で受け取った例もあります。
高山:それはすごい金額!
頼藤:今の年齢は90歳とか100歳とかの方ですか。
社労士みなみさん:そうですね。90歳の方が20歳くらいまでさかのぼると70年ですね。70年さかのぼって3000万円というケースもあります。
頼藤:すでに亡くなっているという場合もあります?
社労士みなみさん:はい。その場合は相続になります。
頼藤:相続のときに持ち主不明年金に該当しないか調べないといけないですね。
1000万円とか3000万円は結構大きな金額ですね。
高山:この番組を見て見つかったらみなみさんに感謝!ですね。
社労士みなみさん:ですので、ご自身だけじゃなくて、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、ひいおじいちゃんひいおばあちゃんまでですね、探してみるのがよいのかなと思います。
頼藤:そうですね、時効もありませんしね。
高山:ちょっと時間がある時にやってみると良いかもですね。
社労士みなみさん:そうですね。年金の記録の訂正になりますので、さかのぼってもらうことができます。
年金は請求しないともらえない
社労士みなみさん:ねんきん定期便(年金定期便)を過信せず、自分で確認・申請することで、加給年金・振替加算・厚生年金基金・持ち主不明年金がもらえる可能性があります。該当すれば数十万円、場合によっては数百万円の差が生まれるかもしれません。年金は請求しないともらえませんので、ぜひ確認してみることをおすすめします。
今回の内容は動画で紹介しています。動画では、社労士みなみさんの年金戦略も初公開していますので、ぜひご覧ください。
【関連記事もチェック】
・国民年金保険料「未納が4割」は大ウソ、実際の未納率は?
・50歳代「ねんきん定期便(年金定期便)」は絶対確認!見ないと損する3つのポイント
・国民年金「絶対やってはいけない」10のこと
・ねんきん定期便(年金定期便)「放置」絶対ダメ!届いたらすべきたった1つの行動
・年金生活者に1月届く「公的年金等の源泉徴収票」絶対確認すべき3つのポイント

頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍100冊、累計180万部超。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

この記事が気に入ったら
いいね!しよう