25/06/18
【2025年度版】年金月10万円・15万円・20万円の手取りはいくら?

老後の生活において最も重要な収入源となる「年金」。多くの方が「年金はいくらもらえるのか」と同時に、「実際に手元に残るのはいくらなのか」という疑問をお持ちではないでしょうか。
年金収入からは所得税や住民税、介護保険料、後期高齢者医療保険料などが差し引かれるため、支給額と実際の手取り額には差があります。本記事では、月額10万円・15万円・20万円の年金を受け取る場合の手取り額を、東京都在住・65歳~74歳・単身の方を例に詳しく解説します。
年金収入にかかる税金と保険料
年金受給者の手取り額を計算するには、以下の項目を差し引く必要があります。
●所得税と住民税
年金収入が一定額を超えると所得税と住民税が課税されます。年金収入は「雑所得」といって、収入金額から公的年金等控除を差し引いて計算します。公的年金等控除は以下のとおりです。
<公的年金等控除の金額>

日本年金機構の資料より
また、基礎控除(全ての納税者に適用される控除)は最大で95万円となっています。
●介護保険料
40歳以上65歳未満の方は医療保険と一体で徴収されますが、65歳以上の方は年金から天引きされます。金額は自治体や所得によって異なります。
●後期高齢者医療保険料
75歳以上(一定の障害がある場合は65歳以上)の方が加入する医療保険で、保険料は年金から天引きされます。こちらも自治体や所得によって金額が異なります。
●国民健康保険料
75歳未満の方は国民健康保険に加入することになり、所得に応じた保険料を支払います。
年金月額10万円の場合の手取り額はいくら?
月額10万円の年金を受け取る場合、年間の年金収入は120万円となります。年金月額10万円(年額120万円)の場合、所得税・住民税はかからず、社会保険料のみ差し引かれるため、手取りは月額約9.6万円(年額115.3万円)となります。
<年金月額10万円の手取り額の計算(東京都新宿区・65歳~74歳、単身の場合)>

筆者作成
年金月額15万円の場合の手取り額はいくら?
月額15万円の年金を受け取る場合、年間の年金収入は180万円となります。年金月額15万円(年額180万円)の場合、所得税はかかりませんが、住民税はかかります。住民税と社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)が差し引かれ、手取りは月額約13.6万円(年額163.2万円)となります。
<年金月額15万円の手取り額の計算(東京都新宿区・65歳~74歳、単身の場合)>

筆者作成
年金月額20万円の場合の手取り額はいくら?
月額20万円の年金を受け取る場合、年間の年金収入は240万円となります。年金月額20万円(年額240万円)の場合、所得税と住民税がそれぞれかかります。社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)は所得に応じて金額が高くなり、手取りは月額約17.3万円(年額207万円)となります。
<年金月額20万円の手取り額の計算(東京都新宿区・65歳~74歳、単身の場合)>

筆者作成
2025年税制改正による基礎控除の変更点
2025年の税制改正により、基礎控除の金額が変更されました。2024年以前は合計所得金額が132万円以下の場合48万円だった基礎控除が、2024年から95万円に大幅に増額されています。これにより、同じ年金収入でも控除額が47万円増えたため、課税所得が減少し、特に中低所得の年金受給者の税負担に関しては、軽減傾向にあります。
<基礎控除変更前後の比較(年金月額20万円の場合)>

筆者作成
より多くの年金を手元に残すためのポイント
以上を踏まえて、より多くの年金を手元に残すためにはどうすればいいのでしょうか。ここでは5つのポイントを紹介します。
① 医療費控除を活用する
年間の医療費が10万円を超えた場合(または所得が200万円未満の場合は所得の5%を超えた場合)、確定申告をすることで医療費控除が受けられます。高齢者は医療費がかさむことが多いため、レシートや領収書等はしっかり保管しておきましょう。
② 社会保険料控除を忘れずに
国民健康保険料や介護保険料は全額が社会保険料控除の対象となります。年金から天引きされる保険料も忘れずに申告しましょう。
③ 配偶者がいる場合は配偶者控除も検討
配偶者がいる場合、配偶者の収入によっては配偶者控除や配偶者特別控除が適用されることがあります。
④ 各種障害者控除の確認
身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方、または自治体から障害者控除対象認定書を受けている方は、障害者控除が適用されます。
⑤ ふるさと納税の活用
住民税の一定額まで控除される「ふるさと納税」は、厳密には節税できる制度ではないのですが、好きな自治体に寄付することで実質2000円の自己負担でお礼の品(返礼品)がもらえる点にメリットがあります。特に住民税が発生する年金収入のある方には有効な方法です。
実際に手元に残る金額を把握しよう
年金収入が増えるにつれて、税金や社会保険料で差し引かれる割合も大きくなる傾向にあります。2025年の税制改正による基礎控除の増額は、特に中低所得の年金受給者にとって税負担軽減につながっているとはいえ、正しい金額を把握しておくことが大切です。年金の手取り額は居住地や年齢、家族構成などによって変わりますので、ご自身の状況に合わせて確認されることをおすすめします。また、税金や社会保険料の計算方法は年度ごとに変更される可能性があるため、最新の情報を確認するようにしましょう。この記事が皆様のライフプランニングの一助となれば幸いです。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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