25/10/14
年金「平均額」もらうために必要な年収はどのくらい?

多くの方が気になる老後の年金受給額。厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、会社員や公務員等で厚生年金に加入していた場合の年金の平均額(国民年金+厚生年金)は月14万6,429円となっています。では、この約14.7万円の年金「平均額」をもらうためには、現役時代にどの程度の年収が必要なのでしょうか?
年金制度の基本構造を理解しよう
まず、厚生年金受給者が受け取る年金の構造を整理しましょう。厚生年金受給者の年金は以下の2階建て構造になっています。
●1階部分:国民年金(老齢基礎年金)
2025年度の場合、40年間(480月)国民年金保険料を納めた場合の満額の年間支給額は83万1,700円で、月額にすると6万9,308円が満額となります。なお、国民年金からもらえる老齢基礎年金の平均年金月額は全体で5万7,700円となっています。
●2階部分:厚生年金(老齢厚生年金)
厚生年金部分は、現役時代の年収と加入期間によって決まります。厚生年金の受給額は、保険料の納付月数と収入によって決まる仕組みです。厚生年金は70歳まで加入することが可能。加入期間が長いほどもらえる厚生年金も増えます。また収入は、具体的には毎月の給料などの報酬を区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」と、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」を元にして計算します。収入が多ければ、その分受給額も上がります。
厚生年金平均額を受給するために必要な年収とは?
では、年金を平均額もらうために必要な年収を、順を追って計算してみましょう。ここでは、厚生年金に40年加入して国民年金を満額受け取れる人(賞与なしと仮定)の年収を考えます。
●①平均額受給に必要な厚生年金額は?
厚生年金(国民年金含む)の平均額月額14.7万円から国民年金の満額月額6.9万円を引くと、厚生年金部分は7.8万円となることが分かります。
・厚生年金(国民年金含む)平均額(月額):14.7万円
・国民年金平均額(月額):6.9万円
・厚生年金部分(月額):7.8万円
●②厚生年金7.8万円を受給するために必要な年収は?
厚生年金の受給額は、加入時期により異なる計算式が適用されます。
・平成15年3月以前の加入期間平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 加入月数
・平成15年4月以降の加入期間平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
ここでは平成15年4月以降に加入した人という前提で計算を行います。
●③必要な年収を逆算する
毎月7.8万円の厚生年金をもらうということは、年額で93.6万円の厚生年金をもらう必要があるということです。この金額をもらえる年収を計算すると、次のようになります。
93.6万円×12÷5.481/1000÷480月=426.9万円
単純計算で、年収は426.9万円と算出できました。
標準報酬月額は、毎月の収入を区切りのよい金額に直したものです。年収426.9万円を月額に換算にすると、約35.6万円です。標準報酬月額を調べる「厚生年金保険料額表」でみると、月額35万円から37万円の人はすべて同じ「36万円」(第22等級)に該当します。つまり、おおよそ現役時代の平均年収が420万円〜444万円であれば、厚生年金が月約7.8万円もらえるというわけです。
同様に、たとえば年金を毎月20万円もらえるようにする場合も、次のように算出できます。
・必要な厚生年金額…20万円−6.9万円=13.1万円(年額157.2万円)
・年収の逆算…157.2万円×12÷5.481/1000÷480月=717万円
・月収:717万円÷12=約59.7万円
・標準報酬月額59万円(第30等級・月額57.5万円〜60.5万円が該当)
→現役時代の平均年収…690万円〜726万円
正確な受給見込額は「ねんきんネット」が便利
厚生年金(国民年金含む)の平均額14.7万円を受給するためには、概算で年収420万円〜444万円程度が必要となることがわかりました。これは、40年間継続して厚生年金に加入することを前提とした計算です。
この金額はあくまで目安であり、個人の加入状況や将来の制度変更により変動する可能性があります。より正確な受給見込額を知りたい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」を活用して個別にシミュレーションすることをお勧めします。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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