25/11/26
年金繰り上げで「住民税非課税世帯」を狙わない方がいい4つの理由

年金の繰り上げ受給は、65歳よりも前に年金をもらえる制度です。年金の受給額は減額されますが、収入が減れば住民税が非課税になり、社会保険料や医療費を軽減できるメリットがあるため、あえて繰り上げ受給で住民税を非課税にしようとする人がいます。しかし、そこには落とし穴があるのでおすすめはできません。
今回は、年金を繰り上げて住民税非課税を狙ってはいけない4つの理由について解説します。
住民税非課税を狙う前に知っておくべきこと
年金は通常65歳からもらえますが、60歳から64歳の間で繰り上げ受給すると受給額を減らすことができます。繰り上げ受給では、1ヵ月につき0.4%減額されるので、5年繰り上げて60歳から受給すると24%の減額が可能です。そのため、年金を繰り上げ受給して受給額を減らせば、場合によっては住民税の均等割や所得割が非課税になる可能性があります。
しかし、繰り上げ受給で住民税非課税を狙う前に知っておくべきことがあります。それは、住民税が非課税になる基準額が自治体により異なる点です。
住民税が非課税になる基準額は、3つの級地区分(1級地・2級地・3級地)により異なります。1級地は東京23区を含む大都市、2級地は中規模都市、3級地はその他の都市が該当します。
級地ごとに設定された住民税非課税となる目安の基準額(均等割、所得割ともに非課税)を、年金収入のみの場合を例にご紹介します。
<年金収入のみの場合の住民税非課税の基準額>

「事例の都市」の自治体のウェブサイトより筆者作成
まずは、住民税が非課税になる基準額が自治体により異なる点に留意しておきましょう。
繰り上げ受給で住民税非課税を狙ってはいけない理由
住民税が非課税になると税負担が軽減される他、国民健康保険料や介護保険料が軽減されたり、高額療養費の限度額が下がったりするメリットがあります。また、非課税になることで自治体などが実施する助成制度の対象になる場合もあります。
確かに住民税が非課税になると家計を助けてくれるメリットはありますが、安易に繰り上げ受給をして住民税を非課税にするのはおすすめできません。それには4つの理由があるからです。
●①配偶者が亡くなると非課税基準額が下がるから
住民税非課税は世帯単位で判定され、単身者は扶養家族がいる場合にくらべて非課税になる基準額が低くなります。そのため、夫婦世帯では非課税でも、配偶者が亡くなって単身世帯になったときに基準額が下がって課税対象になる可能性があります。
●➁引っ越しで非課税基準額が変わるから
住民税が非課税になる基準額は自治体により異なります。移住などで他の自治体へ引っ越しした場合、元の自治体よりも基準額が下がれば課税対象になるかもしれません。
●③制度改正がないとはいえないから
現在、定められている住民税非課税の基準額も、将来的に制度改正が実施され見直しが行われる可能性はゼロとはいえません。もし今よりも基準額が下がれば、課税対象になる可能性があります。
●④年金の減額は一生涯続くから
繰り上げ受給を選択することで、住民税が非課税になり、社会保険料や税金の負担が減ったり、助成制度の対象になったりして家計の負担が減るかもしれません。しかし、繰り上げ受給をすると、決定した減額率が一生涯続き、途中で取り消すことができません。仮に非課税の基準額が変わって課税対象になったとき、もらえるのは減額された年金です。後から繰り上げ受給を取りやめて増やすこともできません。
あえて繰り上げ受給をして住民税非課税になることが本当に得なのか、よく考えてから選択しましょう。
繰り上げ受給の選択は慎重に
住民税を非課税にするための繰り上げ受給は、いくつかのメリットはあるものの、基準額の変更で課税対象になるリスクがある点は注意が必要です。繰り上げ受給は、年金の減額が一生涯続き、後からやめたいと思ってもやめることができません。繰り上げ受給を選択するかどうかは、制度を正しく理解したうえで判断することをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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