25/10/27
失業給付「不正受給」はなぜバレるのか バレたらどんなペナルティがある?

失業保険は、失業した人が次の仕事を見つけるまでの生活を支える大切な制度です。しかし、残念ながら不正に受給しようとするケースが後を絶ちません。この記事では、失業給付の不正受給がどのようにしてバレるのか、そして発覚した場合にどんなペナルティが科されるのかを詳しく解説します。
失業給付の不正受給とは?
失業給付の不正受給とは、偽りの申告や事実の隠蔽によって、本来受給できない失業保険を受け取る行為を指します。
重要なポイントは、実際に給付金を受け取ったかどうかは関係ないという点です。不正な申告をした時点で、たとえまだ給付金が振り込まれていなくても不正受給に該当します。
失業保険の不正受給の典型的な6つのケース
失業保険の不正受給の典型的なケースには、次の6つがあります。
●1.就職・就労の未申告
パートタイマーやアルバイト、派遣就業、試用期間、研修期間、日雇など、どのような形態の仕事であっても、就職・就労していることを申告することが必要です。「少しの時間だけ」「短期間だから」という理由は通用しません。
●2.求職活動の虚偽報告
実際には行っていない求職活動を、失業認定申告書に記載することも、不正受給に該当します。虚偽申告は、面接履歴や応募履歴との照合で必ず発覚します。企業への確認調査が入ることもあり、嘘の報告は容易に見抜かれます。
●3.自営業・個人事業の開始
自営業や個人事業を始めた場合、収入がまだ発生していなくても、事業を開始した時点で申告が必要です。近年増えているのが、物販、ブログでの広告収入、動画配信など、ネットビジネスの未申告。税務署への開業届や売上記録から発覚するケースが増えています。
●4.内職や手伝いの未申告
「家族の手伝いだから」「少額だから」という理由であっても、未申告で就業することは認められません。報酬が銀行口座に振り込まれると、その入金履歴から容易に発見されます。
●5.会社役員への就任
会社の役員になった場合、たとえ名義だけの役員であっても申告が必要です。登記簿謄本に役員として記録が残っているため、不正受給と判断されます。
●6.就労能力や就職意思がない場合
失業保険は「就職する意思と能力がある」ことが受給の前提条件です。定年後、失業給付の受給終了直後に年金を受給しようと計画している場合など、制度の趣旨から外れた利用は認められません。
失業給付の不正受給はこうしてバレる
「自分は失業給付の不正受給をしてもバレない」ということはありません。厚生労働省大阪労働局のウェブサイトにも「不正受給をした場合は必ず発見されます」と書かれています。ハローワークでは、次のような形で失業給付の不正受給がないかをチェックしています。
①コンピュータシステムによる自動検出
ハローワークでは雇用保険のデータを一元管理しています。複数のデータベースを横断的に照合することで、矛盾や不自然な点を自動的に検出できます。たとえば失業保険を受給しながら別の会社で雇用保険に加入している場合、システム上ですぐに発見されます。
②ハローワークの調査活動
ハローワークでは、事業所や企業に対して実際の雇用状況を確認したり、求職活動の実態を確認したりしています。また、失業給付の受給者本人への聞き取り調査も行います。これによって、失業保険の不正受給が明らかになることもあります。
③関係機関との情報連携
ハローワークは、税務署、年金事務所、市区町村役場などと情報を共有しています。たとえば雇用保険の手続きをするときに、過去の受給履歴から不自然な点が発覚したり、確定申告・年末調整で矛盾が発見されたりします。
④第三者からの通報
意外に多いのが通報による発覚です。
・家族、知人、元同僚からの通報
・SNSへの投稿からの発覚
・アルバイト先でのトラブル
・飲みの席での発言
といったことでも失業給付の不正受給が発覚する場合があります。
なお、通報者の個人情報は厳重に保護されており、不正受給者本人に伝わることはありません。
失業給付の不正受給のペナルティは「3倍返し」
失業給付の不正受給が発覚すると、非常に厳しいペナルティが科されます。
まず、不正行為があった日以降、一切の失業給付が支給停止になります。残りの受給期間があっても、失業給付を受け取る権利は完全に失われます。
また、不正に受け取った失業給付を全額返還しなければなりません。数十万円から百万円を超える金額を一括で返還するよう求められることもあります。
そして、失業給付の全額返還とは別に、不正受給額の2倍に相当する額の追加納付が命じられます。たとえば30万円を不正受給した場合、「30万円の返還+最大60万円(30万円の2倍)の追加納付=合計最大90万円の支払い」となります。俗に言う「3倍返し」です。
これらの返還命令に従わない場合、預金、給料、不動産など、ほぼすべての財産が差し押さえの対象になります。差し押さえの記録は信用情報として残り、将来的にクレジットカードやローンの審査にも悪影響を及ぼします。悪質なケースでは刑事告訴され、罰金刑や懲役刑などの刑事罰を科される可能性があります。前科がつくと、その後の就職活動に大きな支障をきたし、公務員、警備員、金融機関などの職業に就けなくなる場合もあります。
不正受給と誤解されやすいケース
制度の理解不足から、意図せず不正受給となってしまうケースがあります。以下の場合は必ずハローワークに相談してください。
・入社前研修:正式な雇用契約前でも申告が必要な場合がある
・無給の労働:給料をもらっていなくても、労働を提供した時点で申告が必要
・名義だけの役員:実態がなくても、登記簿に記載されていれば申告が必要
・売上ゼロの自営業:収入の有無ではなく、事業開始の事実が重要
自己判断で申告を怠った結果、不正受給の処分を受けてしまう事例が後を絶ちません。少しでも判断に迷う場合は、事前にハローワークへ相談しましょう。
失業給付の不正受給は絶対NG
失業給付の不正受給は、コンピュータシステム、調査活動、関係機関との連携、第三者からの通報など、多角的な方法で必ず発見されます。
発覚した場合のペナルティは「3倍返し」と極めて厳しく、経済的な打撃にとどまらず、将来の就職活動や社会生活全般に深刻な影響を及ぼします。
失業保険は、本当に困っている人を支えるための大切な制度です。少しでも判断に迷うことがあれば、自己判断せず必ずハローワークに相談しましょう。正直に相談することで、適切なアドバイスを受けられ、不正受給のリスクを回避できます。
失業給付は、正しく受給してこそ意味があります。制度の趣旨を理解し、誠実に対応することが、あなた自身の将来を守ることにつながるのです。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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