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26/03/07

相続・税金・年金

【知らないと大損】年金繰り下げ増額の対象となるのは「65歳の前月分まで」

【知らないと大損】年金繰り下げ増額の対象となるのは「65歳の前月分まで」

老後の生活設計を考えるうえで、年金の「繰り下げ受給」は非常に魅力的な制度です。受給開始を遅らせるほど年金額が増えるため、繰り下げ受給は「長生きリスクへの備え」として注目されています。しかし、繰り下げ受給にはあまり知られていない重要なポイントがあります。それは、繰り下げで増額されるのは「65歳の前月までの加入記録で計算された年金額」に限られるという点です。

今回は、この誤解されやすいポイントを分かりやすくに整理しながら、年金繰り下げを検討する際の注意点を解説します。

そもそも年金の繰り下げ受給とは

老齢基礎年金・老齢厚生年金は原則65歳から受け取れますが、受給開始を遅らせると、1か月あたり0.7%ずつ増額されます。これを年金の繰り下げ受給といいます。
「70歳まで繰り下げれば 42%増」
この数字だけを見ると、繰り下げは非常に魅力的に映りますよね。しかしながら、増額されるのはあくまで65歳時点で確定した年金額のみとなります。65歳以降に働いて増える厚生年金は、増えるけれど42%増にはならないという仕組みがあります。

たとえば、65歳時点の年金額が月10万円の場合、70歳まで年金を繰り下げることで年金額は42%増で「月14.2万円」になります。一方、65〜70歳の5年間働いて厚生年金が月1万円増えたとしても、この1万円は「そのまま1万円」として加算されるだけで、42%増にはなりません。結果、70歳からの年金額は月14.2万円+1万円=15.2万円となります。
「5年働いた分も42%増になる」と誤解している人は多いですが、制度上はそうならないことを理解しておきましょう。繰り下げで増額の対象になるのは「65歳の前月分まで」なのです。

65歳の前月分までしか増額対象にならない理由

ではなぜ、65歳の前月分までしか繰り下げ受給の増額対象にならないのでしょうか。それには、大きく2つの理由があります。

●理由(1)繰り下げ増額は「受給権発生時点の年金額」を基準に計算する制度だから

繰り下げ増額は、「老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権が発生した時点の年金額」に増額率を乗じて計算します。
65歳以降に働いて増える厚生年金は、受給権発生後に追加される「後納的な加算」という扱いのため、増額率の対象外になります。

●理由(2)在職老齢年金の支給停止分も繰り下げ対象外

65歳以降も働き、給与と年金の合計が一定額を超えると、在職老齢年金により厚生年金が一部または全部停止されます。ここで重要なのは、支給停止された部分は「後でまとめて受け取れる」わけではないという点です。
厚生年金の支給停止分は「そもそも支給されなかった」扱いになるため、繰り下げ増額の対象にも含まれません。つまり、「停止された分も後で42%増で取り戻せる」ということはありません。

年金の繰り下げを選ぶべき人はどんな人?

年金の繰り下げは「長生きリスクへの備え」としては有効ですが、「働けば働くほど繰り下げの増額が大きくなる」という制度ではありません。

このことを踏まえると、年金の繰り下げは基本的に、次のような人に向いていると言えます。
・長生き家系で、平均寿命以上の生活を見込む人
・65歳以降の収入が少なく、在職老齢年金の支給停止が起きない人
・65歳時点の年金額が比較的高く、増額効果が大きい人
・貯蓄に余裕があり、65〜70歳の無年金期間を乗り切れる人

逆に、
・65歳以降も高収入で働く人
・在職老齢年金の支給停止が発生する人
・65歳以降の就労で年金が大きく増える見込みのある人
は、年金の繰り下げのメリットが限定的になる可能性があります。

繰り下げの「対象範囲」を理解して賢く選択を

繰り下げ受給は魅力的な制度ですが、「増額されるのは65歳の前月分までの年金額だけ」という制度の本質を理解しておくことが不可欠です。仮に70歳まで働いても、その5年間の年金は増えるものの、繰り下げによる42%増の対象にはなりません。在職老齢年金で支給停止になった分も同様です。
制度の仕組みを正しく理解し、自分の働き方・収入・寿命リスクを踏まえて、「繰り下げが本当に自分にとって得なのか」を冷静に判断することが、老後の安心につながります。

KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士

長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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