25/10/16
マッチング拠出上限撤廃、iDeCo・企業型DCの上限増…掛金を増やすならどの制度?

令和7年度税制改正で確定拠出年金制度が見直されることになり、会社員は老後資金を準備する際の選択肢が広がります。ただ、マッチング拠出とiDeCoは併用できないため、自分に合った制度を選択する必要があります。
そこで今回は、確定拠出年金制度の改正内容と、マッチング拠出とiDeCoを選ぶ際のポイントについて解説します。
企業型DCとiDeCoはどんな制度?
私的年金制度の1つである確定拠出年金には企業型DC(企業型確定拠出年金)とiDeCo(個人型確定拠出年金)の2種類がありますが、それぞれどのような制度なのか確認しましょう。
●企業型DC(企業型確定拠出年金)
企業型DCは、会社が従業員に対し掛金を拠出し、運用は従業員が自ら行う私的年金制度です。次にお話しするiDeCoでは加入時手数料や運営管理手数料などを負担する必要がありますが、企業型DCでは会社が手数料を負担するので、従業員はコストをかけずに運用できます。
企業によっては、従業員も掛金を拠出できる「マッチング拠出」を実施しているところがあります。従業員も掛金を拠出することで、より手厚く老後資金を用意できます。マッチング拠出で従業員が拠出した掛金は全額所得控除できるため、毎年の所得税や住民税が安くできます。そのうえ、企業型DCの運用益には税金がかからないのもメリットです。
●iDeCo(個人型確定拠出年金)
IDeCoは、個人で掛金を拠出し、自ら運用する私的年金制度です。iDeCoでは拠出した掛金が全額所得控除できるため、毎年の所得税や住民税が安くできます。運用益にかかる税金もゼロにできます。こうしたメリットから、老後資金の準備のため加入する人は増えています。
2022年の制度改正で、企業型DCの加入者も拠出限度額まではiDeCoを利用できるようになっています。
確定拠出年金制度の改正で企業型DCとiDeCoが変わる
令和7年度税制改正では企業型DCの制度見直しが行われます。
まず、企業型DCの掛金限度額が引き上げられます。企業型DCの掛金額の上限は、同じく企業年金の制度「確定給付企業年金(DB)」に加入しているかにより異なります。これまでは
・DBに加入していない人 月額5.5万円
・DBに加入している人 月額5.5万円からDBの掛金相当額を控除した金額
でしたが、2027年1月からは
・DBに加入していない人 月額6.2万円
・DBに加入している人 月額6.2万円からDBの掛金相当額を控除した金額
となる予定です。
また、これまで企業型DCのマッチング拠出では、従業員が救出できる掛金は事業主が拠出する掛金額を超えてはならないというルールがありました。たとえば、月額5.5万円が上限でも、事業主が拠出する掛金が5000円だったら、従業員が拠出できる掛金も5000円までだったのです。しかし、2026年4月からはマッチング拠出の上限が撤廃される予定ですので、従業員が事業主よりも掛金を多くする、ということもできるようになります。
さらにiDeCoも拠出限度額が引き上げられます。企業型DCの加入者は月額6.2万円(現行は2.0万円)から企業型DCとDBの掛金相当額を差し引いた額がiDeCoの拠出限度額になります。
マッチング拠出の上限撤廃と企業型DCとiDeCoの掛金限度額の引き上げにより、これまでよりも多くの資金を老後資金の準備に回せるようになるでしょう。
マッチング拠出とiDeCo、どちらの掛金を増やすのがいい?
企業型DCのマッチング拠出の上限撤廃で、加入者は掛金限度額の範囲内で自由にマッチング拠出の掛金を設定できるようになります。しかし、企業型DCのマッチング拠出とiDeCoは併用できないため、加入者はマッチング拠出とiDeCoのどちらかを選択しなければなりません。自分の置かれた状況によっては、マッチング拠出で掛金を増やす方がいい場合もあるし、iDeCoで掛金を増やした方がいい場合もあります。より賢く老後資金を準備するために、自分はどちらを選択すべきか確認しておきましょう。
●マッチング拠出を選んだ方がいい人
通常、iDeCoでは手数料を自分で負担する必要がありますが、企業型DCは加入時や運用時にかかる手数料を負担してくれるのは会社です。企業型DCはコストを抑えながら運用できるので、勤務先が実施する企業型DCの運用商品が充実しているのであれば、マッチング拠出で掛金を増やすのがよいでしょう。
●iDeCoを選んだ方がいい人
しばしば企業型DCは運用商品が少ない場合があります。勤務先の企業型DCで運用できる商品に不満がある人は、マッチング拠出で掛金を増やすよりも、運用商品が豊富なiDeCoを選択した方がよいでしょう。
また、近々転職する予定の人もiDeCoを選択した方がよいでしょう。転職する場合、これまで加入していた企業型DCの加入資格を失い、掛金はiDeCoや他の年金制度に移換する必要があります。転職先で企業型DCを実施していればそこへ移換すればいいのですが、企業型DCがない場合、あるいはiDeCoに移換する予定の場合は、マッチング拠出で掛金を増やすよりも、iDeCoに加入して運用した方がよいでしょう。
効率的に老後資金を増やせる制度を選ぼう
令和7年度税制改正で企業型DCやiDeCoの掛金を増やせるようになるため、老後資金の準備方法は選択肢が大きく広がり、準備する速度も加速します。制度改正で効率的に老後資金を増やせるようになりますが、企業型DCのマッチング拠出とiDeCoは併用できないため、利用する制度を正しく選ぶ必要があります。自分はどの制度を利用するのがベストなのかを検討して、老後資金の準備に最適な方法を選択しましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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