25/03/08
50代「ねんきん定期便」は絶対確認!見ないと損する3つのポイント

老後の年金額が気になっている方はたくさんいます。しかし、毎年、誕生日の月になると日本年金機構から届く「ねんきん定期便」の記載事項は確認していますか?ある会社が行ったアンケート調査によると、50代の約6割はねんきん定期便が届いているのにもかかわらず、年金額を把握していないそうです。
ねんきん定期便は、私たちの老後の年金額に関わる大事な情報が記載されています。そこで今回は、50代のねんきん定期便で必ずチェックすべき3つのポイントをご紹介します。
50歳以上の人が受け取る「ねんきん定期便」の記載内容
ねんきん定期便は、50歳未満と50歳以上では記載内容が若干異なります。
共通している内容は、保険料納付額、月別状況(直近13月)、年金加入期間です。異なる内容は記載された年金額で、50歳未満の場合はこれまでの加入実績に応じた年金額が記載されています。しかし50歳以上の場合、現在加入中の年金に60歳まで加入すると仮定した場合に65歳から受け取れる年金見込額が記載されます。
つまり、50歳以上になると年金収入の目安がわかるので、ねんきん定期便の記載内容を必ずチェックする必要があるのです。
50代のねんきん定期便で必ずチェックしたいポイントは次の3つです。
<ねんきん定期便のイメージ>

(株)Money&You作成
ねんきん定期便で必ずチェックすべきポイント①:老齢年金の見込額
50歳以上の人が受け取るねんきん定期便には、今の年金に60歳まで加入した場合の「老齢年金の種類と見込額」が記載されています。見込額は年額なので、1か月に換算するといくらになるのかチェックしておきましょう。
その際、1か月の年金見込額と今の1か月の生活費を比較してみてください。比較することで、その年金額で生活していけるのか、今の生活水準を維持できるかどうかが見えてくると思います。生活していくのが厳しいようであれば、どうやって生活費を補てんするか、貯蓄や運用に頼るか、あるいは働く期間を延ばすか、できることを考えておきましょう。
ねんきん定期便で必ずチェックすべきポイント②:年金の加入状況
ねんきん定期便には、「直近13月の加入状況」と「これまでの年金加入期間」が記載されています。また、59歳で受け取るねんきん定期便には、全期間の加入状況が記載されます。老齢基礎年金をもらうには、年金に10年以上(120月以上)加入する必要があります。ねんきん定期便では、「これまでの年金加入期間」にある「受給資格期間」をチェックしてみてください。ここが120月以上になっていれば老齢基礎年金をもらうことができます。
また、ねんきん定期便に記載されている「直近13月の加入状況」と「これまでの年金加入期間」を見て、漏れや誤りがないか確認しましょう。記載漏れや誤りがあると、もらえる年金額が減る可能性があります。特に、転職したことがある人、会社員から個人事業主になった人、結婚して専業主婦になった人など、国民年金と厚生年金の切り替えをしたことがある人は、切り替えのタイミングの加入状況をよくチェックしておきましょう。
自分の加入状況に応じた年金を確実に受け取るためにも、加入履歴はしっかりと確認しておくことが重要です。もし、記載内容に漏れや誤りがあったときは、日本年金機構のサイトから「年金加入記録回答票」をダウンロードし必要事項を記入して、最寄りの年金事務所へ提出しましょう。
ねんきん定期便で必ずチェックすべきポイント③:保険料の納付額の累計
60歳になるまでは国民年金もしくは厚生年金に加入するので、ねんきん定期便に記載してある「これまでの保険料納付額(累計)」は、毎年増えていくはずです。それなのに、前年分に記載してある納付額(累計)よりも金額が増えていない場合、誤りなど何か問題が起きていることになります。ねんきん定期便を受け取るたびに、これまでの保険料納付額(累計)に記載された金額が毎年増えているか確認しましょう。
年金見込額をカンタンに見える化できるツール「公的年金シミュレーター」
会社を退職後の生活設計を立てる際、年金見込額を知ることはとても重要です。その年金見込額をカンタンに確認できるツールがあります。それは「公的年金シミュレーター」です。公的年金シミュレーターは、厚生労働省が2022年(令和4年)4月から運用を始めたツールで、スマートフォンやパソコンからカンタンに年金見込額を試算できます。
仕事を辞めて年金生活になってからも安定した生活を送るためには、年金収入や支出を想定して生活設計を立てることが大事です。その際、年金見込額を手軽に確認できる公的年金シミュレーターは大いに活用できるでしょう。
<公的年金シミュレーターのイメージ>

公的年金シミュレーターのウェブサイトより
カンタンに使える公的年金シミュレーターの特徴
公的年金シミュレーターは次のような特徴のあるツールです。
・ねんきん定期便の二次元コードをスマートフォンで読み取って使える
・IDとパスワードなしで使える
・年金見込額を金額とグラフで確認できる
・カンタンに入力や条件設定ができる
・個人情報が残らない
●ねんきん定期便の二次元コードをスマートフォンで読み取って使える
ねんきん定期便のハガキを開くと、右下に二次元コードがあります。これをスマートフォンで読み取ると、公的年金シミュレーターにアクセスできます。また、ねんきん定期便を電子版で受け取っているときは、ねんきんネットで電子版ねんきん定期便を確認できますが、電子版ねんきん定期便にも二次元コードが掲載されているので活用してみましょう。
●IDとパスワードなしで使える
公的年金シミュレーターはIDとパスワードを取得しなくても使えて、カンタンにアクセスできるのが特徴です。
ねんきんネットでも公的年金のシミュレーションはできますが、ユーザIDを取得する必要があります。また、マイナポータルからアクセスすればユーザIDを取得せずに利用できますが、それにはマイナンバーカードの準備が必要です。
その点、公的年金シミュレーターはIDとパスワードを取得する手間がなく、いつでもカンタンにアクセスできます。できるだけ手間をかけずにシミュレーションしたい人にとっては便利なツールになるでしょう。
●年金見込額を金額とグラフで確認できる
公的年金シミュレーターでは年金見込額を金額だけでなくグラフでも確認することができます。グラフで確認できると数字だけを見るよりもイメージしやすいので、将来の年金収入について考えるきっかけになるのではないでしょうか。もちろん金額でも確認できるので、生活設計を立てるのに役立ちます。
●カンタンに入力や条件設定ができる
ねんきん定期便の二次元コードを読み取ってアクセスすると、生年月日を入力するだけで、公的年金シミュレーターに自分の年金情報が引き継がれます。そして、今後の働き方や年収などの条件設定も手軽にできます。また、年金の受給開始年齢を変更して年金額の増減も試算できるので、シミュレーションしてみるとよいでしょう。
●個人情報が残らない
公的年金シミュレーターの良いところは、アクセスした後、個人情報が残らないことです。シミュレーターを閉じるとデータは自動的に消去され、サーバーにも残りません。個人情報の漏えいを心配せずに使えるので安心です。
詳細な公的年金のシミュレーションは「ねんきんネット」で
手軽に利用できる公的年金シミュレーターですが、あくまでも簡易的な試算です。おおよその年金額を知りたいときは、カンタンにアクセスできる公的年金シミュレーターを活用するとよいでしょう。しかし、詳細な年金額を試算したいときや複数の条件設定で比較したいときは、ねんきんネットでのシミュレーションが便利です。ねんきんネットでは、その時点での最新の年金額を確認でき、詳細な条件設定で最大5件まで試算結果を登録し、グラフで比較することができます。また、受取開始年齢の変更では、老齢基礎年金だけ、あるいは老齢厚生年金だけ繰り下げ受給を利用した場合の年金額も試算できます。繰り下げ受給を検討中の人は、さまざまなパターンを検討できるでしょう。
簡易的な年金額を手軽に試算したいときは「公的年金シミュレーター」、最新の年金額を詳細に確認したいときは「ねんきんネット」というように、自分の欲しい情報にあわせて2つのツールを使い分けるとよいでしょう。
年金見込額に不安を感じたときの対策
老齢年金の見込額を見て「生活するには少ないかも」と感じる場合があるかもしれません。そんなときは、できるだけ早く対策を考えておきましょう。
上の公的年金シミュレーターの紹介でも少し出てきましたが、通常65歳から受給できる年金の受給開始年齢を66歳から75歳までの間に遅らせる「繰り下げ受給」は、年金額を増やせる制度のひとつです。
繰り下げ受給は、年金の受給開始を1か月遅らせるごとに0.7%年金が増額される制度です。66歳や67歳など、75歳までなら自分の希望するタイミングまで繰り下げることができます。ねんきん定期便にも70歳、75歳まで受給を繰り下げた場合の年金額が記載されています。
ただし、受給開始までの生活費を準備する必要があることと、年金額を増やすことで天引きされる税金や社会保険料が増えることは留意する必要があります。安易に繰り下げ受給を選ぶのではなく、生活費の準備や年金の手取り額などを考慮したうえで選択しましょう。
また、貯蓄や運用による老後資金の準備も重要です。年金収入だけでは不足する分を確認し、現在の貯蓄額やライフプランを考慮したうえで、NISAやiDeCoの利用、月々の貯蓄などで生活費の補てん分を蓄えていきましょう。また、長く働くことで生活費を補てんする方法もあるでしょう。老後生活に向けて、自分にあった生活費の補てん方法を考えておくことをおすすめします。
【関連記事もチェック】
・年金生活者に1月届く「公的年金等の源泉徴収票」絶対確認すべき3つのポイント
・年金をもらいながら働いている人も「確定申告が必要」は本当か
・年金いつまで払う?国民年金と厚生年金で支払い義務年齢ともらえる金額はどう違うのか
・厚生年金「夫16万円・妻10万円」夫が亡くなると妻がもらえる年金はいくら?
・厚生年金で絶対やってはいけない5つのこと

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう