26/04/11
国民年金保険料「40年間全額免除」だと、年金はいくらもらえる?

国民年金保険料を支払えなくなったときには「国民年金保険料の免除制度」が用意されています。国民年金保険料の免除制度を利用すれば、国民年金保険料の全額(一部)を納める必要がなくなりますが、将来もらえる年金額は減額されます。では、仮に国民年金保険料を40年間、全額免除を受けた場合、年金はいくらもらえるのでしょうか。
今回は、国民年金保険料の免除制度の内容と、国民年金保険料を40年間全額免除された場合の年金額、そして年金額を増やす方法を解説します。また、2026年10月からスタートする国民年金保険料の育児免除制度についてわかりやすく解説します。
国民年金保険料の免除制度とは?
失業したり、急激に収入が減ったりして国民年金保険料を支払えなくなる場合があるかもしれません。国民年金は納付期限(翌月末日)から2年以内に納めないと未納になってしまいます。国民年金保険料の未納が続くと、障害を負ったときにもらえる障害基礎年金や、万が一のとき残された家族が受け取れる遺族基礎年金を受けられなくなる場合があります。また、老後の生活費となる老齢基礎年金ももらえなくなってしまいます。
そのようなことにならないように、国民年金保険料を支払えなくなったときの救済措置があります。それが「国民年金保険料の免除制度」です。
●国民年金保険料の免除制度とは?
国民年金保険料の免除制度とは、失業や大幅な収入減など経済的な理由で国民年金保険料を納めることが困難になった場合、申請により国民年金保険料の全額もしくは一部が免除される制度です。
国民年金保険料の免除制度の対象となる人は、以下の通りです。
・本人、世帯主または配偶者が失業した場合
・本人、世帯主または配偶者の前年所得が一定額以下になった場合
また、国民年金保険料の免除制度で免除される額は「全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除」の4種類です。
国民年金保険料の免除制度に申請し承認されると、前年所得の状況により国民年金保険料の金額が決まります。2026年度の場合、国民年金保険料の金額は1か月あたり1万7920円ですが、免除を受けた場合の国民年金保険料は
・全額免除 0円
・4分の3免除 4480円
・半額免除 8960円
・4分の1免除 1万3440円
となります。
●免除制度を利用した場合、将来もらえる年金額
国民年金保険料の免除制度を利用した場合、免除期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれるため、将来年金がもらえなくなるわけではありません。しかし、国民年金保険料の免除制度で免除された期間の年金額は、国民年金保険料を全額納付した場合よりも減額されます。
国民年金保険料の免除制度で免除される額により、老齢基礎年金は以下のように減額されます。
・全額免除:国民年金保険料を全額納付した場合の2分の1
・4分の3免除:国民年金保険料を全額納付した場合の8分の5
・半額免除:国民年金保険料を全額納付した場合の8分の6
・4分の1免除:国民年金保険料を全額納付した場合の8分の7
40年間「全額免除」の場合、年金額はいくらになる?
国民年金保険料の免除制度を利用すると、将来もらえる老齢基礎年金が減額されることがわかりました。ではここで、40年間国民年金保険料を「全額免除」にした場合、国民年金保険料を全額納付した場合と比べてもらえる年金額がどれくらいになるのか見てみましょう。
ここでは2026年度の老齢基礎年金(満額)で比較します。
・国民年金保険料を40年間全額納付した場合の年金額:84万7300円
・40年間、国民年金保険料を全額免除した場合の年金額
全額免除の年金額=国民年金保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1
=84万7300円×1/2
=42万3650円
40年間全額免除の場合、年金額は42万3650円になることがわかりました。この場合、月額では約3万5300円になりますが、この年金額で生活していくのは厳しいことがうかがえます。
年金額を増やすためにやっておきたいこと
失業や収入減などやむにやまれぬ事情があり、国民年金保険料の免除制度を利用する場合があるかもしれません。しかし、将来年金生活になったときのことを考えると、できれば年金額を増やしておいた方がよいでしょう。
実は、年金額は増やすことができます。ここでは年金額を増やす方法をご紹介します。
●国民年金保険料の免除制度を受けてから10年以内の場合
国民年金は10年以内であれば、さかのぼって国民年金保険料を追納(後払い)することができます。追納すれば、老齢基礎年金を増やせます。また、追納した分は全額、社会保険料控除の対象になるため、確定申告や年末調整をすることで、所得税や住民税を軽減することも可能です。また、年金額を増やすことができれば、生活が楽になるかもしれません。追納は最寄りの年金事務所へ国民年金追納申込書と、マイナンバーカードもしくはマイナンバー確認書類+本人確認書類を添えて申請します。
ただし、追納の際、3年以上前の国民年金保険料には加算額が上乗せされます。そのため、追納は2年以内に済ませることをおすすめします。
●60歳を過ぎたら国民年金に任意加入する
国民年金は、以下に該当すれば60歳から64歳の間、任意加入することができます。
・日本国内に住む60歳以上65歳未満の人
・老齢基礎年金の繰り上げ受給を受けていない
・国民年金保険料の納付月数が480月(40年)未満である
・厚生年金保険に加入していない
国民年金に任意加入すれば、老齢基礎年金を増やすことができます。また、納めた保険料は全額、社会保険料控除の対象になります。年金を増やすことができ、加入している間の所得税と住民税を軽減できるのです。
国民年金保険料を納めていない期間があるときは、老齢基礎年金を満額に近づけるためにも国民年金に任意加入することをおすすめします。ただし、任意加入時の保険料には免除制度がないので注意しましょう。
国民年金保険料の免除制度のほかにも利用できる制度
国民年金保険料の免除制度は、国民年金保険料の支払いが免除されるだけでなく、減額にはなりますが、将来もらう老齢基礎年金の年金額にも反映されます。経済的に苦しくて、どうしても国民年金保険料を支払えない人は国民年金保険料の免除制度を申請しましょう。
ただ、国民年金保険料の免除制度には審査があり、所得が基準以下にならないと承認されません。
〇国民年金保険料の免除制度の所得基準(障害者、寡婦、ひとり親を除く)
・全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
・4分の3免除:88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・半額免除:128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
・4分の1免除:168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
さらに、国民年金保険料の免除制度では本人の所得だけでなく、配偶者と世帯主の所得も基準以下にならないと承認されません。たとえば親と同居して「世帯合併」の場合、親の所得が基準よりも多ければ、免除は承認されず利用できないことになります。
所得基準に該当せず国民年金保険料の免除制度を利用できない場合、「納付猶予制度」の利用を検討してみましょう。
●国民年金保険料の納付猶予制度
国民年金保険料の納付猶予制度とは、20歳以上50歳未満の人が利用できる制度で、申請して承認されると国民年金保険料の納付が猶予されます。
国民年金保険料の納付猶予制度にも所得の基準が設けられています。
・納付猶予制度:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
ただし、所得の審査を受けるのは本人と配偶者のみです。世帯主の所得は問われないので、所得の多い親と同居していても利用できる可能性はあります。
国民年金保険料の納付猶予制度は免除制度よりも審査を通りやすいかもしれませんが、1つ注意したいことがあります。それは、国民年金保険料の納付猶予を受けている期間は老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)に含まれますが、老齢基礎年金の年金額には反映されない点です。国民年金保険料の納付猶予制度を利用したときは、年金額を増やすために10年以内に国民年金保険料を追納することをおすすめします。
●学生なら「学生納付特例制度」を利用しよう
20歳以上でも学生であれば、申請し承認されれば「学生納付特例制度」を利用できます。学生納付特例制度は学生で、本人の所得基準(128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等)を満たせば利用可能です。
ただし、学生納付特例制度も制度としては「猶予制度」です。そのため、老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、年金額には反映されません。できるだけ老齢基礎年金の年金額を増やすためにも、学校を卒業し収入を得られるようになったら、10年以内に保険料を追納しましょう。
出産を控えている人は利用したい「産前産後期間の免除制度」
自営業や個人事業主、もしくはその妻であり国民年金の第1号被保険者の場合、産前産後期間は保険料の支払いが免除される制度「産前産後期間の免除制度」があります。
●産前産後期間の免除制度とは
保険料が免除される期間:出産予定日または出産日のある月の前月から4ヵ月間
※多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日のある月の3ヵ月前から6ヵ月間
産前産後期間の免除制度では、上記の期間、国民年金保険料の納付が免除されます。この制度での出産は、妊娠85日(4ヵ月)以上の出産を指し、死産、流産、早産も含まれます。
また、産前産後期間の免除期間は国民年金保険料を納付したものとみなされて、老齢基礎年金の年金額にも反映されます。さらに、免除制度や学生納付特例制度を申請して承認されている人でも、出産を控えていればこの制度を利用できます。
通常の免除制度は追納しないと老齢基礎年金が減額されます。その点、産前産後期間の免除制度では国民年金保険料の納付が免除されていても、老齢基礎年金は免除期間に相当する分の減額がないので安心です。
また、国民年金保険料の納付が免除されている期間は、付加保険料を納めることができます。通常の免除制度では付加保険料を納付することができないので、産前産後期間の免除制度はメリットが大きいといえるでしょう。老齢基礎年金を増額するため、国民年金保険料とともに付加年金にも加入している人は、産前産後期間も付加保険料を納めるとよいでしょう。
個人事業主やフリーランスにも経済的支援!国民年金保険料の育児免除制度
これまで自営業者や個人事業主、フリーランスなど国民年金に加入している人は、産前産後期間(出産予定月の1ヵ月前〜2ヵ月後までの4ヵ月間)しか国民年金保険料が免除されませんでした。一方で、会社員は産前産後休業期間だけでなく、満3歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した場合、育児休業期間中の厚生年金保険料と健康保険料、介護保険料(40歳以上)の納付が免除されています。個人事業主やフリーランスなど国民年金加入者は、育児で収入が減っても国民年金保険料を払い続けなければならず、家計の大きな負担となっていました。
会社員だけでなく、個人事業主やフリーランスなどにとっても子育てにかかる経済的負担の厳しさは同じです。そこで、働き方に関係なく仕事と育児の両立を支援するため、国は2026年10月から国民年金保険料の育児免除制度を始めることになりました。この新制度により個人事業主やフリーランスなど国民年金加入者も子どもが1歳になるまでは国民年金保険料の納付が免除されます。
●国民年金保険料の育児免除制度とは?
2023年12月22日に閣議決定された「こども未来戦略」に基づいて法改正が行われ、2026年10月1日から新たに国民年金保険料の「育児免除制度」がスタートします。これは、自営業者やフリーランス、個人事業主など国民年金加入者が出産した場合、生まれた子どもが1歳になるまで父母ともに国民年金保険料が免除される制度です。
○対象者
制度の対象となるのは、自営業者、フリーランス、個人事業主など国民年金の第1号被保険者で、1歳未満の子どもを養育する父母、養父母です。
○免除期間
子どもが1歳の誕生日を迎える前月までの保険料が免除されます。
・実母の場合
産前産後期間の4ヵ月間に引き続き、最大9ヵ月間(産前産後期間と合わせて最大13カ月間)保険料が免除されます。
・実父、養父母の場合
出生日(または養子になった日)から最大12ヵ月間の保険料が免除されます。
●育児免除制度のチェックポイント
育児免除制度は所得に関係なく、自営業者や個人事業主など国民年金に加入している20歳以上60歳未満で子どもが生まれた人であれば誰でも対象となり、育児のため仕事を休業していても免除を受けられます。また、母親だけでなく父親も同じように免除を受けられて、免除期間は保険料を払ったものとして扱われるので、将来受け取る老齢基礎年金にも反映されます。通常の免除制度では老齢基礎年金が減額されますが、育児免除制度の免除期間は年金が減額されない仕組みなので安心です。さらに、免除期間中も付加保険料を納付できるので、将来受け取る年金額に付加年金を上乗せできます。
ただし注意したいのは、育児免除制度を利用するには申請が必要になる点です。制度の対象者に該当していても自動的に反映されるわけではなく、申請しないと利用できないので注意しましょう。
育児免除制度の申請はマイナポータルから24時間365日電子申請が可能で、スマートフォンからでも手続きできるので便利です。また、役所の担当窓口へ「産前産後免除該当届/育児免除該当届・終了届」とマイナンバーカードの写し等を郵送または持参して申請することもできます。
育児免除制度は金銭的なメリットが大きい制度です。たとえば国民年金保険料が1万7920円(2026年度の場合)とすると、子どもが1歳を迎えるまでの12ヵ月間保険料が免除されれば、約21万円も負担が軽減されることになります。夫婦ともに国民年金の第1号被保険者であれば2人分の保険料が月額3万5840円になるので、12ヵ月間では約43万円の負担軽減です。かなり大きく出費を抑えられるので、対象になる人は2026年10月になったら忘れずに申請手続きをしましょう。
自分に合った制度を利用しよう
国民年金は20歳から60歳までの40年間加入すると、満額の老齢基礎年金をもらうことができます。しかし、事情により免除制度を利用すると、免除される額(全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除)に応じて、将来もらえる老齢基礎年金が減額されます。仮に40年間全額免除を受けた場合、国民年金保険料を全額納付した場合にくらべると、もらえる年金額が半額になってしまいます。
老後の生活を考えると、少しでも年金額を増やすために国民年金保険料の追納をしておきたいです。また、国民年金保険料の納付月数が40年に満たない場合、60歳から64歳の間、国民年金に任意加入して年金額を増やす方法もあります。少しでも生活に余裕ができたら追納し、それでも足りないときは任意加入を利用して年金額を増やすことをおすすめします。
国民年金保険料を支払えなくなったときに利用できる制度は免除制度だけではありません。本人と配偶者のみの所得基準を満たせば利用できる納付猶予制度、学生が利用できる学生納付特例制度、出産を控えた人や出産した人が利用できる産前産後期間の免除制度や2026年10月から始まり父母ともに利用できる育児免除制度もあります。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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