26/05/24
50代からのNISA、オルカン1本で大丈夫?守りながら増やすシニアの資産形成術

主要ネット証券の投資信託積立ランキング上位の常連、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称「オルカン」はSNS等でも人気があります。
1本で世界の国・企業・通貨へ分散投資ができ、投資タイミングを考えずにすむことも、「ほったらかし投資」として人気を集めている理由の1つです。証券会社によっては100円という少額から積立可能。大きな資金のない人や投資初心者でも始めやすく、NISAの代表的な運用方法の1つとなっています。
しかしここ数カ月、中東情勢緊迫化による影響などで、基準価額が乱高下し、大きく売られた局面では「もし今、退職して取り崩しが必要な時だったら」と、不安な気持ちを抱いたシニア世代は多かったことでしょう。
現場でも良く寄せられる、50代からの資産形成も「オルカン1本」で大丈夫なのかといった疑問に「投資をしているFP」として、分かりやすく解説します。
オルカンは1本で分散可能な商品だが投資対象は「株式100%」
オルカンは、1本で国・企業・セクター・通貨の分散が、信託報酬年0.05775%(税込み)という低コストで可能な優れた商品です。投資初心者でも始めやすく、長期で積立を続けることで複利の効果による資産形成が期待できます。
実際、直近5年という短い期間で見ても、5年前の2021年5月時点で基準価額約1万4860円という水準だったオルカンは、2026年5月11日時点では3万6455円となり、約2.5倍となっています。年率換算では約19.7%の複利で成長した計算となり、長期投資による大きな効果を感じます。
そんな優れた投資商品である「オルカン」の大きなリスクの1つが、投資対象がすべて株式という資産クラスだという点です。株式は値動きが大きい資産です。
そのため、世界同時株安のような暴落時には、資産額が大きく減少する局面もあります。
実際、2025年4月の米国関税政策をきっかけとした世界経済の混乱時や、2026年2月下旬から続く中東情勢緊迫化も株式市場に大きな影響を与え、基準価額は短期間で大きく下落しました。
●退職して資産取り崩しの時に株価が暴落したらどうする?
50代以降は、資産を「増やす」だけでなく、「どう取り崩すか」という出口戦略も重要になります。
もし退職直後に株価暴落が起こり、オルカンのみの資産構成だった場合、値下がりした資産を取り崩さざるを得ない状況になる可能性があります。
株価低迷が長引けば、資産寿命が短くなることも考えられるでしょう。
50代の資産形成では「異なる値動きの資産」を持つことが選択肢に
では、どうすれば良いのでしょうか。
その対策として考えたいのが、株式とは異なる値動きをする資産を持つことです。
●元本保証の商品の中で選択肢のひとつとなる「個人向け国債(変動10年)」
シニア世代でなくとも、投資を始める前に確保しておきたい生活防衛資金ですが、一部は現金で、残りを個人向け国債で保有することも、守りながら増やす選択肢になります。
個人向け変動10年国債は元本保証の商品です。なかでも、変動金利の「変動10年」は半年ごとに利率が見直されるため、金利が上昇すればもらえる利子が増えます。インフレ局面でも比較的保有しやすい商品です。
また購入1年経過後から、全部もしくは一部の売却(中途換金)が可能となります。中途換金では、直前2回分の受け取り利子が差し引かれますが、元本割れはしません。なお、特に手数料などはかかりません。
●インフレ局面に強い現物資産である「ゴールド」
ゴールド(金)も株式とは異なる値動きをする資産です。ゴールドは現物資産であるため、ものの値段が上がるインフレ局面ではゴールドの価格も一般的に上昇する傾向にあります。インフレヘッジとしての役割も期待されます。
ただし、ゴールドは保有していても利息や配当はないため、株式のように大きく資産を増やす投資先とはいえません。オルカンの基準価額低迷時に取り崩すことのできる「守りの資産」という役割と位置付けると良いでしょう。
2025年4月の米トランプ大統領の関税政策をきっかけとした株価急落局面においては、筆者自身の保有資産のうちゴールド以外はすべて含み損となりました。「これが退職後だったら」と分散投資の重要性について考えさせられました。
ゴールドへの投資は、投資信託やETFを活用すれば少額から投資でき、保有資産の5~10%を目安に組み合わせる考え方もあります。ゴールドは現物資産としてインフレヘッジが期待されますが、価格変動のある資産であるため万能ではない点には注意が必要です。
50代の資産形成「オルカン1本が正解」ではない
SNSでは「オルカン1本で十分」という意見を見かけることは多いです。その考えに異論はなく、オルカンは長期投資において非常に優れた商品の1つだと思います。
ただし、年齢・資産額・リスク許容度は人それぞれ異なります。同じ60代でも、退職しているか、まだ働いているかというライフスタイルによっても答えは異なります。
特に50代以降は、「どれだけ増やすか」だけでなく、「暴落時でも続けられるか」「暴落時でも安心して取り崩せる資産があるか」という出口戦略が重要になります。
大切なのは、自分が続けられる資産配分を見つけることです。
オルカンは優れた商品ですが、投資対象は株式のみです。シニア世代の資産形成は特に取り崩すことを意識し、株安時はゴールドや債券を取り崩す、ゴールド安の場合はオルカンや債券というように、常に取り崩せる資産があると心強いことでしょう。
異なる資産クラスの商品を組み合わせながら、自分に合った資産形成を考えることが、シニア世代の「守りながら増やす」資産運用では重要になるかもしれません。
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藤田寛子 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員二種資格保有。投資歴23年
「金融はより良い暮らしのためのもの」をモットーに、難しい金融テーマを生活者目線でわかりやすく伝えることを心がけている。
自身でも長年にわたり資産運用を継続しており、シニア世代の出口戦略を見据えた資産形成や、生活防衛資金を含めた現実的な資産設計を得意とする。
現在は、暮らしに影響を与える社会保障制度・投資・資産形成に関する制度(NISA・iDeCo)・老後資産形成など、金融分野を中心に執筆活動を行っている。
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