21/11/26
2022年4月年金改正に対応した働き方をしないと損をする
2022年4月に年金制度が大きく変わります。もうすぐ定年を迎える人には、大きな問題です。
というのは、今回の改正は、これからの年金受給者にとって、知っているとトクすることが多く含まれているからです。逆に言うと知らない人はソンをするということです。
今回の改正のポイントは、年金の受け取り方や働き方の選択の幅が広がる改正だということ。老後資金の増やし方を自助にゆだねていると言っていいかも知れません。ですので、制度を賢く使うことで、年金を大きく増やすことも可能になっているのです。では、どんな使い方をすれば、トクをするのでしょうか。トクする改正について5つのポイントに分けて解説をしていきましょう。
年金改正のポイント1:年金の受け取り開始が75歳まで延びた
いままでは、60歳から70歳の間ならばいつでも年金の受給開始をすることができました。それが2022年4月からは60歳から75歳までの間に広がります。
66歳以降に年金を受け取るのを繰下げ受給といって、年金が増額されます。75歳まで繰下げ受給をすると最大84%の増額になります。ほぼ倍近くなります。
損益分岐点は、約12年です。すると75歳まで繰り下げたときには、87歳まで生きていると得になります。長寿の時代なので繰下げ受給をできるだけすれば、得になる可能性があります。
とはいっても、繰り下げている間は年金を受け取れないので、かなりの老後資金を準備しておくか、働いて収入があるということでないと難しいでしょう。ただし年金の繰下げ受給はいつ辞めてもいいので、ご自分の資産と健康状態を見ながら検討することができます。
また、繰上げ受給の場合、1ヵ月早く受け取ると0.5%だったのが、改正で0.4%になります。繰上げ受給の減額率は下がるのですが、減額した金額が一生涯続くことになるのでお勧めはできません。
年金改正のポイント2:60歳前半の在職老齢年金の緩和
60歳以降65歳未満で公的年金を受け取りながら働いていると、年金の一部または全額が支給停止になることがありました。いままでは、給与と年金額の合計が28万円以上の場合は、年金の一部または全額が支給停止になってしまいました。その基準が2022年4月以降は47万円に引き上げられます。
これによって、年金が支給停止になる人がぐっと減ります。これからは、年金が減るということで、仕事をセーブしながら働こうなんて考えずにすむのです。
60歳以降も厚生年金に入って働く人は、厚生年金を支払っているので、その分65歳以降の年金が増えます。定年後も頑張って働くとその分、年金額が増えて家計が助かるということですね。
年金改正のポイント3:65歳以降も働く人は、毎年、厚生年金が増える!
厚生年金は70歳まで加入できます。ですので、65歳以降も働いていると年金額は増えていきます。この65歳以降に働いた分の年金は、現状70歳または退職時に計算されます。つまり、70歳まで働くとしたら、65歳から69歳までの年金額は同じで、70歳からまとめて増えるという仕組みでした。
2022年4月以降は、65歳以降で働いて増えた分の年金は、毎年10月に再計算されて増額になります。標準月額報酬が20万円ぐらいだとしたら、年間1万3000円ぐらいの増額という感じになります。毎年少しでも増えるという実感がでれば、頑張ろうという気持ちになりますね。
年金改正のポイント4:厚生年金の適用範囲が拡大される
厚生年金の適用は、パート勤務などの人の場合、従業員が500人超の企業で働く人が対象でした。ところが2022年10月からは100人超の企業まで、2024年10月からは50人超の企業まで適用範囲が広がります。これによってパートも、厚生年金に加入できる人が増えます。
パートで働く人は、厚生年金に加入をすることで、手取り額が少なくなります。そのため、「手取り額が少なくなるから、働く時間を調整しよう」と考える人がいるかも知れません。でもその考えは、ちょっと待ってください。
たしかに手取り額は減るかも知れませんが、将来に受け取れる年金が増えます。しかも厚生年金は、会社側が半額を支払ってくれるのでとてもお得なのです。目先のことだけではなく、将来の方に目を向けていただきたいです。厚生年金に加入することで手取りは減りますが、老後の年金を考えるとずっとお得なことなのです。
年金改正のポイント5:「確定拠出年金」の加入が延長になった
いままでは、企業型確定拠出年金は65歳未満まで拠出できましたが、2022年5月からは70歳未満まで拠出できるようになります。同じようにiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)も65歳未満まで拠出することができるようになります。60歳以降拠出する場合には、国民年金の加入が条件なのですが、会社員は厚生年金に加入しているので65歳まで拠出できます。
まとめ
このように、2022年の年金改正によって、年金の受け取り方の選択肢が増えたり、再雇用やパートなどで働くときの年金の選択肢、優遇が増えたりします。ですから、これらの年金改正をよく知ることで、年金のトクな受取方、定年後のトクな働き方が選べるようになるのです。
また、定年後には雇用保険や健康保険、年金、税金などの手続きが必要になってきます。中にはかなり複雑なものもありますが、知っておかないとこれも損につながってしまうことになります。
それらをまとめて知っておくと、定年後は安心できる生活を送れるようになります。
「定年前後の手続きガイド 2022年制度改正対応版」中島典子/長尾義弘 監修
2022年4月の年金制度改正に対応! 定年前から定年時、定年後まで、「やるべきこと」を「やる順」に解説した、手続きガイドの決定版。もらえるものはきちんともらい、払わずに済むものは払わず、第二の人生の好スタートを切りましょう!
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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