22/04/16
60歳貯蓄ゼロの人がするべきたった1つのこと
60歳で迎えた定年退職。何十年と勤めてきた会社から「おめでとう!ご苦労様でした」とねぎらいの言葉をかけられ、正社員としての仕事はひと区切りがつきました。
ところが、家計の状態をみると、「貯蓄がゼロ!」。退職金は出たものの、住宅ローンの返済にすべて使ってしまった!
退職したとたん、まさに「(お金も)ゼロからのスタート」です。
「こんなのでこれから先、本当に大丈夫なのか?私たち!」と思っている人いませんか?
これは、他人事ではありません。4人に1人がこんな思いをしているのです。
4人に1人が貯蓄100万円未満
PGA生命の「2021年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」によると、1961年生まれの人の貯蓄額の平均は意外と多く約3000万円でした。ところが、その内容を見てみると、1億円という回答をした人が9%いる反面、67%の人が2000万円未満です。さらに、なんと100万円未満という人が25%もいました。
つまり4人に1人は、老後資金の準備ができていないということになります。
●現段階の貯蓄金額
PGA生命「2021年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」より
では、60歳の時点で「貯蓄がゼロ」と言う人は、このまま「老後破綻」の道を歩むことになるのでしょうか?
いや、そんなことはありません。大丈夫です。これからでも老後の準備は十分間に合います。豊かな老後を過ごすためには、たった1つのことでなんとか乗り切ることができるのです。
老後資金を準備するのが難しいのが現実!
では、どうして老後資金を貯めることができなかったのでしょうか?
いまさら、自分を責めても仕方ありません。
現実問題、貯めることが難しい社会情勢になってきているのも一つの要因です。
近年は晩婚化が老後資金作りを困難にさせています。
晩婚化により、結婚、出産、住宅ローンと定年までの時間が短くなっています。そのため、人生の三大支出である「教育資金」「住宅資金」「老後資金」が同時になってしまい、家計がパンク状態になるのです。
結婚出産から定年までの20〜30年の間に数千万円のお金を準備するというのは現実には難しいことです。結果的に最後に必要な老後資金が後回しになり、60歳のときには、貯蓄がスッカラカンということになります。
こうした事態の解決策は、老後資金の後ズレしかありません。つまり、老後資金を60歳から用意するという考え方です。
そんなことができるのか?と疑問の声が上がってきそうですが、大丈夫!なんとかなります。
長く働くことで年金が増えていく!
60歳の時点で貯蓄がゼロの人がとるべき道は、たった1つです。
そうです!働いて稼ぐことしかありません。誰かの遺産がドンと入ってくるとか、突然金持ちになるってことは、異世界での話。現実問題、働いて収入を得ないと生活をすることができません。つまり、貯蓄ゼロから老後を豊かにするたった一つの解決法とは、「長く働いて稼ぐ」ということです。
しかし、ただ単に長く働くというのではありません。「年金を増やしながら長く働く」というのが、本当の正解です。
「年金を増やしながら?長く働く??」ピンとこない人もいるかも知れません。
会社員・公務員の人は、厚生年金に加入しています。たとえ再雇用になったとしても、短時間労働者ではない限り厚生年金に加入しています。この厚生年金は最大70歳まで加入できます。70歳まで厚生年金の保険料を支払って働いていることになりますから、その分、65歳から受け取る厚生年金の受給額も増えます。
たとえば、年収180万円で1年間働くと年金額は約1万円(年額)の増額になります。
同様に、
・年収180万円の2倍の年収360万円で1年働くと約2万円の増額
・年収360万円で5年働くと約10万円の増額
・年収360万円で10年働くと約20万円の増額
年金が少なくて不安だという人は、長く働くことで年金の受給額を増やすことができます。
繰下げ受給をするとさらに年金が増える
年金の受給額をもっと増やす方法もあります。それは、年金の繰下げ受給です。
通常、年金は65歳から支給されますが、年金の受け取りを遅らせるのが繰下げ受給です。繰下げ受給をすると、年8.4%の増額になります。70歳まで繰り下げると42%の増額になります。75歳まで繰り下げることができますが、75歳まで繰り下げると84%の増額です。
長く働くことで、繰下げ受給はしやすくなります。なぜなら、長く働くとすると、その間の生活費は給与でカバーできるからです。働いていれば、70歳まで繰下げ受給をすることも可能でしょう。
たとえば、夫婦の年金が合計200万円だったとしたら、夫婦ともに70歳まで繰下げ受給をすると284万円になります。84万円の増額というのは、大きなインパクトだと思いませんか。しかも増額した金額は一生続きます。老後生活の収入の中心が年金になったときに、年金が増えていることは、豊かな老後生活につながります。
長く働くためのキャリア・スキルを磨くのも重要!
「人生100年時代」と言われ、長寿時代になります。元気で働ける期間も延びて、70歳まで働くことが普通の時代になってきました。こんな時代に重要なのが、長く働けるキャリア・スキルを身につけることです。定年を迎える前までにキャリア・スキルを磨き、元気で長く働きたいものです。
たとえ、60歳時点で「貯蓄がゼロ」だからといってオロオロしなくても、大丈夫です。「年金を増やしながら長く働く」を実行すれば、安心できる老後生活になります。
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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