25/08/21
アルファードじゃなくてもやばい「残価設定ローン(残クレ)」5つの問題点

いわゆる「残クレアルファード」が少し前からネットで話題になっています。
「残クレ」は、残価設定クレジット(残価設定ローン)の略、アルファードはトヨタ自動車の高級車です。アルファードの価格帯は新車で500万円〜1000万円以上と高額ですが、残クレを活用すれば手が届きやすいというメリットはあります。ただ、アルファードはもちろん、他の高級車でも、残クレを利用して車を購入するデメリットは、決して小さくありません。今回は、残クレのしくみとメリット、そして5つの問題点を紹介します。
残価設定クレジット=残クレのしくみとメリットとは?
残クレは、将来の下取り価格を「残価」として設定して、残価を差し引いた金額を分割払いにする支払い方法です。
たとえば、300万円の新車を買う時に、3年後の残価を100万円と設定しておきます。
そして、300万円から残価の100万円を差し引いた、200万円を分割払いする、という支払い方法です。
残クレを利用して支払いを終えても、車は自分のものにはなりません。残価設定の契約期間が終わった後は、次の3つのなかから1つ選択します。
①残価を支払って買い取る
②自動車を返却する
③新しい自動車に乗り換える
「①残価を支払って買い取る」を選んだ場合は、引き続き残価を支払うことで、車を自分のものにできます。
「②自動車を返却する」「③新しい自動車に乗り換える」を選んで車を返却した場合は、残価の支払いはありません(ただし、後述しますが追加料金が発生する場合があります)。
残クレには、以下のようなメリットがあります。
●残クレのメリット1:月々の支払額を抑えられる
300万円のローンより、200万円のローンの支払いのほうが月々の支払い額が安くなります。
契約期間が3年の月払いなら、3年×12カ月=36回払いになります。
単純に36で割ると、月あたり約2万7000円も安くすることができます。
300万円÷36月=約8万3000円
200万円÷36月=約5万6000円
●残クレのメリット2:マイカーをグレードアップできる
月々の支払額を抑えられると、マイカーをよりグレードの高い車にすることができます。
仮に月の予算が10万円だったら、通常の3年ローンで支払える金額は360万円ですが、残クレで残価を「140万円」とすれば、500万円の車に手が届く、というわけです。
(通常の3年ローン)
10万円×36月=360万円
(残クレの3年ローン)
10万円×36月=360万円+残価140万円=500万円
●残クレのメリット3:新車にすぐ乗れる
残クレを利用すれば、新車にすぐに乗ることができます。
残クレの手続きは、車の購入手続きと同時に販売店で行いますので、銀行などの金融機関で別途カーローンを申し込む、といった手間がありません。
金融機関のローンは審査に時間がかかることも珍しくありません。
その点、残クレなら販売店のスタッフに聞きながらスムーズに手続きができます。
残クレのデメリット
ただし、残クレには注意すべきデメリットがあります。
●残クレのデメリット1:傷やへこみで追加費用がかかる
3年後の残価を100万円に設定するということは、3年後に下取りしてもらうときの価値(下取り価格)が100万円ということがあります。そのため、下取り価値を下げてしまうような傷やへこみがあると、「②自動車を返却する」「③新しい自動車に乗り換える」を選んだ場合でも追加の費用がかかります。
●残クレのデメリット2:走行距離の制限がある
残クレでは「月の走行距離1000km(年間1万2000km)などと、契約時に定めた走行距離を守る必要があります。走行距離の制限をオーバーすると、車両返却時に距離に応じて追加費用がかかります。
●残クレのデメリット3:内装や外装を変えられない
残クレの場合、内装や外装を変えるなどのカスタマイズは基本的にできません。
車の所有権は販売会社、もしくは信販会社ですので、規定に沿って使用する必要があります。
●残クレのデメリット4:金利が高い
残クレの金利は、残価にもかかります。
たとえば、500万円の車を残価140万円の設定で残クレにしたら、360万円について分割払いすることになります。しかし、このとき金利は360万円だけではなく140万円にもかかる(500万円に対して金利がかかる)ので、支払う利息が高くなってしまいます。
●残クレのデメリット5:残クレを繰り返してしまいやすい
残クレの残価設定の契約期間が終了したら、
①残価を支払って買い取る
②自動車を返却する
③新しい自動車に乗り換える
のどれかを選ぶことを紹介しました。このうち、①と②は契約終了時にまとまった費用が必要になることが多いのですが、③は車を下取りして、新たな残クレを設定して新車に乗り換えます。
残クレの乗り換えでは、購入時の販売店で下取りして、同じメーカーの車を選ぶことが一般的。乗り換え時には残価の支払いが必要ですが、下取り価格が残価と同等以上なら実質的には実質的に支払いがないことも少なくありません。そのため、③を選ぶ人が多くなり、残クレを繰り返すことにつながります。
残クレは、契約期間終了後のまとまった費用も厳しいですが、それを避けるための残クレによる乗り換えもまた、高い金利を払い続けなければならないことを考えると、決しておトクとは言えません。
自動車購入の正解は?
残クレは、月々の支払いをおさえて、いい車に乗れるというメリットがありますが、実は高い金利を払うことになっています。
3年後に乗り換えるにしても、契約期間3年の残クレだけが選択肢ではありません。銀行などの6年ローンで購入して、大切に乗って3年後に下取りにして買換える、という方法もあります。
残クレを利用しなければ、乗っている間は、自分の車として自由にカスタマイズできますし、乗りかえ時にもメーカーや販売店に縛られることなく、好きなところを選べます。
目先のおトク感や見栄に惑わされず、自分に合った車と支払い方法を選んで欲しいと思います。
【関連記事もチェック】
・貧乏人は頻繁に行くけど、お金持ちはほとんど行かない場所5選
・「お金持ち夫婦」と「貧乏夫婦」5つの決定的な違い
・「賞与無し・給与高い」vs「賞与有り・給与低い」、年収が同じならどっちが有利?
・貧乏人は買うけど、お金持ちは買わないもの7選
・50代で買うと老後破産を招く6つのモノ

タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

この記事が気に入ったら
いいね!しよう