26/01/07
退職後の健康保険「特例退職被保険者制度」が任意継続より得は本当か

特例退職被保険者制度という制度をご存じですか?これは、会社を退職後に在職中と同じ健康保険に加入できる制度です。特例退職被保険者制度は主に大企業が導入している制度なので、すべての人が加入できるわけではありませんが、勤め先が特例退職被保険者制度を導入しているのなら、選択肢の1つとして検討してみてもよいでしょう。
今回は、特例退職被保険者制度について概要やメリット、注意点、提供される保健事業サービスを解説し、任意継続被保険者制度や国民健康保険と比較するポイントをご紹介します。
特例退職被保険者制度とは?
会社を退職した後の健康保険は、国民健康保険に加入するか、在職中の健康保険に任意継続被保険者として加入するかの2択になりますが、大企業に勤めている場合、もう1つの選択肢があるかもしれません。それが「特例退職被保険者制度」です。
特例退職被保険者制度とは、条件を満たせば在職中の健康保険に75歳になるまで加入できる制度です。主に大企業や規模の大きな健康保険組合が導入しています。
特例退職被保険者制度に加入するには以下の条件を満たす必要があります。
・健康保険組合に20年以上加入していること、もしくは40歳以降に10年以上加入していること
・老齢厚生年金を受給できる年齢に達していること
・日本国内に住民登録していること
・後期高齢者医療制度の加入年齢に達していないこと
現在、老齢年金は原則65歳から受給できるので、健康保険組合の加入期間を満たし、日本に住んでいれば65歳から75歳になる誕生日の前日まで特例退職被保険者制度に加入できることになります。
特例退職被保険者制度の保険料は、全被保険者の平均標準報酬月額と平均標準賞与額をもとに計算した標準報酬月額に保険料率を掛けた額で、在職中の年収に関わらず一律です。また、通常の健康保険料は会社と折半になりますが、特例退職被保険者制度の保険料は全額自己負担になります。
特例退職被保険者制度に加入するメリット
特例退職被保険者制度には、次のようなメリットがあります。
・任意継続被保険者制度よりも長く加入できる
・扶養家族も健康保険に加入できる
・退職前と同様に付加給付制度や保健事業のサービスを受けられる
・保険料が安くなる可能性がある
任意継続被保険者制度は2年間しか加入できませんが、特例退職被保険者制度は75歳になるまで加入できます。また、在職中と同様に扶養家族も加入できます。
任意継続被保険者制度でも扶養家族の加入はできますが、国民健康保険の場合、扶養の概念がないため家族全員分の保険料を負担する必要があります。その点を踏まえると、特例退職被保険者制度は保険料の負担を軽減できるでしょう。
さらに、健康保険組合によっては高額療養費制度とは別に、医療費の自己負担額が一定額を超えたとき、超えた額を健康保険組合が支給してくれる付加給付制度を導入しているところがあります。特例退職被保険者制度の加入者はこの付加給付制度も受けることが可能です。その他、保養所の利用や定期健診などの保健事業のサービスも受けられます。
特例退職被保険者制度では保険料の安さにも注目です。
国民健康保険は前年の所得をもとに保険料が決まります。そのため、退職後の1年間は保険料が高くなり、なおかつ扶養家族の保険料も負担することになります。
任意継続被保険者制度の保険料は、退職時の標準報酬月額、もしくは全被保険者の平均標準報酬月額のどちらか低い方の額に保険料率を掛けて求められます。
その点、特例退職被保険者制度の保険料は、「全被保険者の平均標準報酬月額+(平均標準賞与額×1/12)×1/2」で求めた標準報酬月額に保険料率を掛けて計算します。そのため、任意継続被保険者制度の保険料よりも安くなる可能性があります。
特例退職被保険者制度の注意点
特例退職被保険者制度では健康保険組合の保険給付や保健事業サービスを受けられますが、傷病手当金と出産手当金は支給されません。これは任意継続被保険者制度でも同様です。
また、最近では特例退職被保険者制度を廃止する企業が出てきています。自分の勤める会社が特例退職被保険者制度を導入していても、制度を続けるかどうかは確認しておきましょう。
さらに、国民健康保険料は前年の所得をもとに計算されるので、退職後2年目以降は収入が減り、保険料が安くなる可能性があります。扶養家族の分もあわせて保険料をチェックしてみましょう。
提供される保健事業サービスにはどんなものがある?
会社を退職した後、特例退職被保険者制度を利用すると、在職中に提供されていた健康保険組合の保健事業サービスとほぼ同等のサービスを受けることができます。
では、特例退職被保険者制度で利用できる保健事業サービスにはどのようなものがあるか見ていきましょう。
●保養所
多くの健康保険組合では、保健事業サービスの一環として保養所を利用できます。保養所は、健康保険に加入している人たちの健康増進や心身のリフレッシュなどを目的に設けられている施設です。独自で運営している保養所もありますが、最近では、ホテルや旅館、コンドミニアムなど民間宿泊施設を契約するところが増えています。多くの保養所はリゾート地や観光地にあり、全国展開する宿泊施設と契約するところもあります、また、最大の特色は宿泊料が補助される点です。宿泊費は手頃な料金になっているので、旅行などで活用する人が多く、お得な保健事業サービスとなっています。
●健康診断
ほとんどの健康保険組合では、社員の健康維持のために毎年健康診断を実施しています。在職中の社員だけでなく、特例退職被保険者制度の加入者も同様の健康診断を受けられます。基本的な健康診断だけでなく、健康保険組合によっては生活習慣病予防診断やインフルエンザ予防接種、郵送によるがん検診などを提供しているところもあります。また、特例退職被保険者制度の加入者本人だけでなく、配偶者や扶養家族も健康診断を受けられるところもあるので、家族で健康維持に役立てることができるでしょう。
●人間ドック
健康増進の一環として、人間ドックを利用できる健康保険組合があります。人間ドックは病気の早期発見を目的とするもので、通常の健康診断よりも検査項目が多く、さまざまな角度から検査を行い、身体の異常がないかどうか検査します。人間ドックの費用は一般の健康診断よりも高額になりますが、費用の一部を健康保険組合が補助してくれます。特例退職被保険者制度の加入者も社員と同様に人間ドックを受診でき、配偶者も利用できるところもあります。
●電話やWebによる健康相談
気になる症状があるが病院へ行くべきかどうか迷ったり、病院へ行くほどではないが気になる部分があったりするとき、気軽に利用できるのが電話やWebによる健康相談です。家にいながら相談でき、特例退職被保険者制度の加入者も同様に利用できるので安心です。
また、相談者のプライバシーは守られるようになっているので、気軽に利用できるでしょう。
●付加給付制度
医療費が高額になったときは高額療養費制度を利用できますが、月々の自己負担限度額までの費用負担は必要です。収入によっては自己負担限度額が高額になるので、家計への影響が大きくなってしまいます。そんなとき安心なのが「付加給付制度」です。付加給付制度では、自己負担限度額のうち付加給付基準額までは健康保険組合が負担してくれるので、加入者は付加給付基準額を超えた分だけの支払いで済みます。残念ながら一部の企業しか導入していませんが、加入する健康保険組合で付加給付制度が導入されていれば利用するとよいでしょう。
●健康づくりプログラム
保健事業サービスとしてスマートフォンアプリによる健康づくりプログラムを実施しているところがあります。ウォーキングアプリを利用しますが、歩数計や体重管理、目標歩数の設定などの機能を活用できます。また、ゲームの要素があったり、地域名産品やデジタルギフトがもらえたりする楽しい機能もあり、楽しみながら健康増進に取り組むことができるでしょう。
●契約フィットネス施設の利用
健康保険組合によっては、契約フィットネス施設を利用できるところがあります。施設の会費や利用料、プール利用料、スクールや教室の使用料の一部を健康保険組合が補助してくれます。自分でフィットネス施設と契約すると、会費など費用の負担が大きくなりますが、健康保険組合が補助してくれるので費用の心配なく利用できるでしょう。
退職後の健康保険を選択するポイントは保険料の比較
退職後の健康保険をどうするか、その選択肢の鍵となるのが保険料です。また、扶養家族の有無も健康保険を決めるポイントになります。
国民健康保険は扶養家族の分も保険料を負担する必要がありますが、特例退職被保険者制度と任意継続被保険者制度では扶養家族の保険料はかかりません。一方で、国民健康保険料は前年の所得をもとに計算するので、退職後に収入が大きく減る場合は、2年目以降の国民健康保険料が特例退職被保険者制度や任意継続被保険者制度の保険料よりも安くなる可能性があります。
扶養家族の保険料も考慮したうえで保険料を比較し、受けられる保健事業サービスをチェックして、最も負担が軽くなる制度を利用するのがよいでしょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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