22/03/24
退職金の扱い方でわかる「老後破綻する人」
日本弁護士連合会「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、破産債務者のうち60歳以上の方が占める割合は、およそ25%となっています。「退職金があるから大丈夫」と安心している方もあると思いますが、退職金の使い方によっては、「老後破綻」が他人事ではない可能性もあります。今回は、老後破綻する人はどんな人なのか、チェックリストをもとにご紹介します。
退職金の使い方で老後破綻の危険性がわかる
退職金や退職後の生活についてどのように考えていると「老後破綻」の可能性があるのでしょうか。チェックリストでご自身の考え方をチェックしてみましょう。
●退職金・退職後の生活チェックリスト
1. 退職金は自分へのご褒美だ
2. 退職金は年金では貰わず、全部一時金で貰う予定だ
3. 年金生活で赤字になっても、退職金で補填できるから安心だ
4. 退職金で住宅ローンの一括返済をしようと思っている
5. 孫のためならお金は惜しまず使いたい
6. 退職金が出たら豪華クルーズ旅行に出かけたい
7. 退職金があるので趣味はおおいに楽しみたい
8. 金利の高い「退職金運用プラン」に預けて増やすつもりだ
9. 退職金を不動産に投資して、年金代わりにするつもりだ
10. 退職金を元手に事業を立ち上げてみたい
どうでしょうか?当てはまるものはありましたか?
1つでも該当するものがあれば、「老後破綻」予備軍。5個以上当てはまるものがあれば「老後破綻」のレッドゾーンと言えるでしょう。
退職金は「自分へのご褒美」ではない
1~3は退職金という大金の捉え方、4〜7は退職金でありがちな使い道です。
多くの人にとって、退職金はこれまで見たことのない大金かもしれません。「自分へのご褒美」と捉えたい気持ちはわかります。また、長年頑張ってきたのだからと旅行や趣味、さらにはかわいい孫などのために使いたい気持ちもわかります。
しかし、たとえ退職後も再雇用等で働くことを選択する場合でも、いずれ老齢年金のみが定期的な収入となる時期は必ず来ます。その時になってから慌てないように、退職金を無計画に使ってしまうのはやめましょう。
まずは、退職後の生活費として必要となりそうなものを書き出して、それぞれにどれくらいかかりそうなのかを考えてみましょう。そして、その生活費が年金の受給金額内に収まるのか、また赤字が出そうであれば、毎月どれくらいの補填が必要になるのか計算してみましょう。
将来受け取れる老齢年金の見込額は、50歳以降のねんきん定期便に記載されていますので、退職前にあらかじめ考えておくこともできます。赤字補填額の総額を100歳ごろまで累計してみると、退職金がいかに「老後破綻」しないために大切なものであるかを実感されると思います。
また、もしも4~7に当てはまることをしたいと考える場合には、その余裕があるのかどうか家族で話し合い、今後の見通しを確認してから実行に移すようにしましょう。退職金を一括でもらうと使いすぎてしまいそうという方は、分割(年金)でもらうように設定するのもひとつの方法です。
老後の「一極集中の投資」にも要注意
8~10は、投資にあたるものです。退職金を元手に投資をして「個人年金がわり」、「お金を殖やす手段」にしたいと考える方もあるでしょう。
退職金運用プランは一見預金金利が高いものの、その金利は数ヶ月しか続きません。そのうえ、抱き合わせの投資信託の手数料が高いため、損するリスクが高いといえます。不動産投資も投資資金を回収するためには長い年月を要します。起業も、誰もが成功するものではありません。
投資をしたものの、リターンが見込めないとき、若い時であればがむしゃらに働いてリカバリーすることもできないわけではありません。しかし、退職後、体力も衰えを見せる時期になってから、がむしゃらに働くことは難しいかもしれません。
もしも、投資を行いたいと思うのであれば、退職金を元手にこうした一極集中の投資を行うのではなく、少額から行えるリスクの少ない投資商品を選択するようにしましょう。
まとめ
退職金として、多額のお金が入金されると、金銭感覚が狂い、嬉しくなって使いすぎてしまうことにもなりかねません。しかし、退職金の過信は禁物です。
人生100年時代の今日、退職後に過ごす期間も長くなりました。その長い期間、「老後破綻」せず穏やかに暮らしていくためにも、退職金は大切なものです。長期的な見通しをもって、計画的に使っていくことを心がけましょう。
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キムラミキ 株式会社ラフデッサン 代表取締役
AFP・社会福祉士・宅地建物取引士。外資系生命保険会社、マンションディベロッパーの営業を経て独立。現在は、就労移行支援事業所Fine米子オフィス(うつや発達障がいのある方の就労サポート施設)の運営に携わり、経済的自立をしたいと考える方のサポーターとして活動中。得意分野はライフプラン、キャリアプラン、生命保険、不動産。BSS山陰放送ラジオパーソナリティ歴10年以上の顔も持つ。
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