23/06/27
改正健康保険法で増え続ける保険料。保険料負担はいくら上がるのか
75歳以上の後期高齢者医療制度加入者の保険料が段階的に引き上げられることなどを盛り込んだ改正健康保険法が成立したことをご存知でしょうか。そこで今回は、改正健康保険法の改正の背景とその内容をご紹介。2024年度以降の高齢者1人あたりの年間保険料額の見込みについてもご説明します。
改正健康保険法で増え続ける医療費に対応
日本の医療費は年々増えています。厚生労働省「国民医療費の概況」によると、2020年度の国民医療費の総額はおよそ43兆円。2021年度は45兆円にもなる見込みです。
その内、後期高齢者の医療費はおよそ4割を占めています。
「団塊の世代」と言われる第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた世代が後期高齢者となる時期も迫ってきており、医療費が今後も増え続けていくことが予想されます。そのような環境下において、公的医療保険制度を持続させていくためには改革が必要ということで、健康保険法が改正されることになりました。
改正健康保険法の内容は?
今回の改正健康保険法には、次のような内容が盛り込まれています。
●改正健康保険法のポイント1:高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し
後期高齢者の医療給付費を後期高齢者と現役世代で公平に支え合うため、後期高齢者負担率の設定方法について、「後期高齢者一人当たりの保険料」と「現役世代一人当たりの後期高齢者支援金」の伸び率が同じとなるよう見直されました。この見直しに伴い、後期高齢者の保険料負担額が引き上げられることになります。具体的な引き上げ金額については、後段でご説明します。
●改正健康保険法のポイント2:こども・子育て支援の拡充
従来42万円であった出産育児一時金の支給額が、2023年4月からから50万円に引き上げられました。また、出産育児一時金の支給費用の一部は、現役世代だけでなく後期高齢者医療制度も支援する仕組みとなりました。そのうえ、2024年1月からは産前産後期間における国民健康保険料が免除される予定。免除相当額は国・都道府県・市町村が負担します。
●改正健康保険法のポイント3:医療保険制度や医療・介護の連携の基盤強化
「医療保険制度」、そして「医療・介護の連携機能及び提供体制等」の基盤強化等を図るために、「かかりつけ医機能」が法定化され、医療機関による都道府県知事への「かかりつけ医機能」の報告制度が創設されます。また、前期高齢者給付費と前期高齢者に係る後期高齢者支援金について、各保険者(公的医療保険の運営機関)が前期高齢者加入率に応じた納付金を負担し、保険者間での負担の均衡も図られることになります。
2024年以降の年間保険料額は?
今回の改正健康保険法で気になるのは、75歳以上の方の保険料がいくらになるかでしょう。2024~2025年にかけて、保険料は段階的に引き上げられます。
75歳以上の方の2025年度の保険料は、改正がなかった場合に比べて最大13万円上昇し、年間保険料の上限は80万円になる予定です。年80万円といえば、単純に保険料を月額換算すれば6万円超となりますので、決して少ない金額とは言えません。
ただし、すべての人の保険料が13万円上がるわけではありません。厚生労働省の試算によると、75歳以上の高齢者1人当たりの年間保険料額は、次のようになっています。
●75歳以上の高齢者1人当たりの年間保険料額
厚生労働省の試算より筆者作成
保険料引き上げの対象となるのは、
・2024年度:75歳以上で年金収入が年間211万円を超える人
・2025年度:75歳以上で年金収入が年間153万円を超える人
です。
したがって、年収が80万円の場合は改正後も負担に変化はありません。低所得層の保険料負担が増加しないよう配慮されています。
しかし、年収200万円だと2025年度、年収400万円・1100万円だと2024年度から健康保険料は増額になります。増額幅も、年収が多いほど上がります。
年金収入が153万円を超える75歳以上の人は、およそ4割を占めています。これらの方々は、早ければ2024年度から健康保険料が値上がりしていくことになります。
まとめ
今後、医療費が益々増加することが予想される中、公的医療保険を持続可能な制度としていくためにも、今回の健康保険法の改正は必要なものであると考えます。
老後における保険料負担の増加に対して金銭的な蓄えを行っていくことと同時に、考えておきたいのは健康維持です。健康であれば、金銭的な蓄えに不足が生じても働くことで、不足分のカバーを図ることもできます。
人生100年時代と言われる環境下で、自らの健康寿命を延ばしていくための工夫や努力も大切にし、心身共に豊かな老後を送っていくための準備を始めていきましょう。
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キムラミキ 株式会社ラフデッサン 代表取締役
AFP・社会福祉士・宅地建物取引士。外資系生命保険会社、マンションディベロッパーの営業を経て独立。現在は、就労移行支援事業所Fine米子オフィス(うつや発達障がいのある方の就労サポート施設)の運営に携わり、経済的自立をしたいと考える方のサポーターとして活動中。得意分野はライフプラン、キャリアプラン、生命保険、不動産。BSS山陰放送ラジオパーソナリティ歴10年以上の顔も持つ。
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