23/04/25
「ねんきん定期便久々に見たら大幅増額」年金額が数十万円増えている驚きの理由
最近になって「ねんきん定期便」を見て、以前より年金額が増えていると驚いた人はいないでしょうか?2021年に「ねんきん定期便」の年金額の表示の仕方に変更があったため、見た目の上で、年金額が増えている人が少なからずいます。今回は、一部の人について、「ねんきん定期便」の年金額が増えることになった理由について説明します。
2021年から「ねんきん定期便」の年金額が増加している人が多数
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」。「ねんきん定期便」を見れば、将来もらえる年金額がどれくらいかがわかります。
ところで、50歳以上の人の中で、近年「ねんきん定期便」の年金額が急に増えたことに気付いた人がいるのではないでしょうか?実は、2021年6月から一部の人の年金額の表示が変わり、以前よりも年金額が増えている人がいます。
「ねんきん定期便」の年金額が増えたのは、50歳以上かつ厚生年金基金の加入歴がある人です。年金額そのものが増えたからではありません。以前は「ねんきん定期便」の年金額に含められていなかった「厚生年金基金」の「代行部分」の年金額が、含めて表示されるようになったことが理由です。
「厚生年金基金」の「代行部分」とは?
「厚生年金基金」とは企業年金の一種です。国民年金を1階、厚生年金を2階とした場合、3階に相当する部分です。
●公的年金のしくみ
厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」より
厚生年金基金は私的年金ですが、国が行う老齢厚生年金の支給の一部を代行するという特徴があります。厚生年金基金では、独自に掛金を運用し、プラスアルファ部分として上乗せ給付も行います。
老齢厚生年金は「報酬比例部分」と「定額部分」に分かれますが、厚生年金基金は基金加入員期間の「報酬比例部分」の年金給付を代行します。基金加入者については、この「代行部分」の年金は基金から支給されるため、国からは「代行部分」を差し引いた年金が支給される仕組みになっています。
●厚生年金基金の基金代行部分の給付のイメージ
日本年金機構のウェブサイトより
厚生年金基金制度は1966年にスタートし、大企業を中心に導入が進みました。しかし、バブル経済崩壊以降は資金の運用が困難になり、2014年以降新規設立が不可となりました。既に存在している基金も、解散もしくは他の企業年金への移行が促進されており、実質的に制度廃止となっています。
「ねんきん定期便」掲載の年金額はどう変わった?
50歳以上の人の以前の「ねんきん定期便」では、厚生年金基金が給付を行う代行部分の年金額が含まれていませんでした。厚生年金基金に加入していた期間がある人は、実際の年金額よりも少ない額が記載されていたのです。
2021年6月以降は代行部分が含められているため、実際にもらえる年金額に近い数字になっています。年金額がどれくらい増えているかは、厚生年金基金の加入期間によります。長く加入していた人なら、数十万円くらい増えているかもしれません。
今回の変更は50歳以上の人に限ったものです。50歳未満の人の「ねんきん定期便」には、以前より代行部分が含まれていたため、今回の変更は関係ありません。
なお、「ねんきん定期便」に掲載されている年金額は、50歳以上か50歳未満かで次のような違いがあります。
・50歳以上の人…現在の年金制度に60歳まで加入を続けた場合の年金額
・50歳未満の人…これまでの加入実績に応じた年金額
50歳未満の人については、「ねんきん定期便」の年金額に代行部分は含まれていますが、今後の加入実績に対応する年金額が含まれていません。そのため、実際にもらえる年金額は、「ねんきん定期便」の額よりも増えることになります。
まとめ
現在では、50歳以上の人の「ねんきん定期便」の老齢厚生年金額に、厚生年金基金の代行部分の金額も含まれています。厚生年金基金加入歴がある人で、最近「ねんきん定期便」を確認していない人は、確認してみてください。これまで「年金が思ったよりも少ない」と感じていた人も、少し安心できるかもしれません。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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