26/01/22
定年退職後の失業給付の金額、「65歳未満」と「65歳以上」で全然違う

会社を定年退職した後、「もう一度働きたい」「しばらく仕事を探したい」と考える人は少なくありません。一般的に、退職後は次の仕事が見つかるまで失業給付(雇用保険の基本手当)を受け取れますが、定年退職の場合も同じようにもらえるのか、判断に迷う人も多いのではないでしょうか。年齢や働く意思によって扱いが変わることもあり、制度は少し分かりにくいのが実情です。
この記事では、定年退職後に受け取れる給付の条件や注意点をわかりやすく解説します。
定年退職でも条件を満たしていれば失業給付をもらえる
失業給付とは、労働者が失業した場合に、雇用保険から給付されるお金です。失業保険とも呼ばれます。
失業給付は、求職者が安心して再就職活動できるよう、生活を支援するために支給されるものです。離職前の賃金をもとに算出した基本手当日額が所定の給付日数分支払われることになっています。
失業給付をもらう条件は、次のとおりです。
【失業給付の受給に必要な条件】
・失業状態であり再就職の意思がある
・離職の日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある
・65歳未満である
会社を定年退職した場合でも、上記の条件を満たしていれば、失業給付をもらえます。
なお、65歳未満では、特別支給の老齢厚生年金を受給できる人もいます。しかし、失業給付と特別支給の老齢厚生年金は、同時に受給することができません。どちらの金額が多いか確認し、失業給付を申請するかどうか考えた方がよいでしょう。
定年退職でもらえる失業給付の額はいくら?
失業給付の金額は「基本手当日額×給付日数」で計算します。
基本手当日額は、離職した日の直前6ヶ月の賃金を180で割った「賃金日額」の約50~80%(60~64歳は45~80%)です。ただし上限があり、60~64歳の基本手当日額の上限は7623円(令和7年8月1日時点)となっています。
失業給付の給付日数は離職理由や年齢、被保険者期間によって異なります。定年退職の場合の給付日数は、年齢に関係なく次のようになります。
<定年退職の場合の失業給付の支給日数>

筆者作成
たとえば、60歳で20年以上勤めた会社を定年退職し、基本手当日額が7623円と仮定すると、もらえる失業給付の総額は114万3450円となります。
65歳以上の人は高年齢求職者給付の対象になる
以前は雇用保険に加入できるのは65歳未満の人でした。法改正により2017年以降、65歳以上の人も「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となっています。
ただし、失業給付がもらえるのは、65歳未満の人に限られています。65歳以上の人が失業した場合には、失業給付の代わりに高年齢求職者給付金がもらえる仕組みになっています。
高年齢求職者給付金を受給できるのは、次の条件を満たす人です。
【高年齢求職者給付金の受給に必要な条件】
・失業状態であり再就職の意思がある
・離職の日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が6ヶ月以上ある
・65歳以上である
高年齢求職者給付金としては、次の日数分の失業給付に相当する額を一括してもらえます。
<高年齢求職者給付金の支給日数>

筆者作成
65歳以上の人の基本手当日額の上限は7255円(令和7年8月1日時点)となっています。たとえば、65歳で1年以上勤めた会社を退職し、基本手当日額が7255円と仮定すると、もらえる高年齢求職者給付金の総額は36万2750円となります。
65歳以上の人では、年金を受給している人が多いでしょう。高年齢求職者給付金は、年金と同時に受給することも可能です。失業給付よりも支給日数は少なくなっていますが、審査に通れば30日分・50日分が一括でもらえます。
高年齢求職者給付金には受給年齢の上限がなく、受給回数の制限もありません。65歳以降、条件を満たせば複数回もらうことも可能です。
失業給付と高年齢求職者給付金の金額以外の違い
65歳未満で受け取れる失業給付と65歳以上で受け取れる高年齢求職者給付金は、金額以外にもいろいろな違いがあります。両者の違いを改めて確認してみましょう。
●給付の受け取り方と生活への影響の違い
失業給付は原則として4週間に1度、求職活動の実績を確認したうえで分割して支給されます。再就職までの一定期間、継続的に生活を支えることを目的とした制度であり、収入が途絶えた状態でも生活の見通しを立てやすい仕組みといえるでしょう。
一方、高年齢求職者給付金は、所定の日数分を一括で受け取れます。継続的に支給されるものではなく、一度受給すれば給付は終了します。そのため、再就職までの長期的な生活保障というよりは、次の仕事に就くまでの当面の資金を補う性質の給付と言えます。
●求職活動の考え方と制度の目的の違い
失業給付と高年齢求職者給付金はどちらも再就職を前提とした制度ですが、求職活動に対する考え方や制度の目的には違いがあります。
失業給付は、再就職を目指して積極的に求職活動を行う人を対象とした制度です。ハローワークでの求職申し込みや、定期的な認定を受けることが求められ、就職活動を継続して行うことが前提となっています。一定期間、生活を支えながら再就職を目指すことを想定した仕組みと言えるでしょう。
一方、高年齢求職者給付金は、高年齢者の就労実態を踏まえ、無理のない形で再就職を後押しすることを目的としています。再就職の意思は必要ですが、失業給付ほど継続的な求職活動管理は行われません。長期間の生活保障というより、定年後の働き方を見直す移行期を支える補助的な制度として位置づけられています。
●年金との併給の可否という違い
65歳未満で受け取る失業給付は、特別支給の老齢厚生年金とは同時に受給できません。年金を受け取るか失業給付を受け取るかを選択する必要があり、金額や生活状況を踏まえた判断が求められます。
一方、高年齢求職者給付金は65歳以上の人を対象とした制度で、老齢年金との同時受給も可能とされています。年金を受け取りながら再就職を目指す人にとって、利用しやすい点が特徴と言えるでしょう。
●再就職手当を受け取れるかどうかの違い
失業給付を受給している人が所定給付日数を一定以上残した状態で早期に再就職した場合には、再就職手当を受け取れる可能性があります。再就職手当は、早めに安定した仕事に就いた人を支援する制度です。一定の要件を満たせば、次のとおり残っている基本手当の一部がまとめて支給されます。
・所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合…支給残日数の60%
・所定給付日数の3分の2以上を残して再就職した場合…支給残日数の70%
再就職手当により、失業給付受給中の人の早期の再就職が後押しされる仕組みになっています。
一方、高年齢求職者給付金を受給した場合には、再就職手当は支給されません。高年齢求職者給付金は一括で支給されるもので、受給後に再就職したとしても追加の給付は行われない仕組みとなっています。
失業給付や高年齢求職者給付金をもらいたいなら
失業給付または高年齢求職者給付金をもらうには、ハローワークで求職申し込みの手続きをする必要があります。手続きの際に用意しておく書類等は、次のとおりです。
●申請に必要な書類
・離職票
・マイナンバーカード(※ない場合には個人番号確認書類と身元確認書類)
・顔写真(※マイナンバーカード提示で省略できる場合あり)
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
失業給付や高年齢求職者給付金を受け取れるのは、離職した翌日から1年間です。手続きが遅れると、全額をもらえなくなる可能性があるため注意しましょう。
定年退職後の働き方は雇用保険の制度を踏まえて考えよう
定年退職の場合でも、条件を満たせば失業給付または高年齢求職者給付金を受給できます。再就職を考えているのであれば、早めにハローワークで手続きを行うことが大切です。
失業給付・高年齢求職者給付金は、離職後に受給できる期間が限られています。働くかどうか迷っているうちに、受給の機会を逃してしまうこともあります。定年退職後の生活や働き方を見据え、年金や再就職の予定とあわせて、どの制度が自分に合っているのかを事前に考えておきましょう。
【関連記事もチェック】
・50歳代で買うと「老後破産」を招く3つのモノ
・年金受給しながら働く人が、確定申告で得する7つの節税
・「退職時の大損」を防ぐために、確認すべき4つの手続き
・厚生年金「夫16万円・妻10万円」、夫が亡くなったら妻の年金はいくらになるのか
・定年後に払い続けると貧乏へ転落する「5つの支出」
森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
























