25/12/25
年金受給しながら働く人が、確定申告で得する7つの節税

年金収入だけでは生活が厳しく、年金をもらいながら働く人は増えています。年金受給者には確定申告をしなくてもいい制度「確定申告不要制度」がありますが、この制度の対象者でも確定申告をした方がお得になるケースがあるのをご存じですか?
今回は働く年金受給者の確定申告と、確定申告をした方がお得になる7つのケースについて解説します。
年金受給者には確定申告不要制度がある
基本的に、所得はあるが会社で年末調整をしていない場合、確定申告で所得や所得税を申告する決まりになっています。とはいえ、年金受給者が毎年、年金収入の申告手続きをするのは負担が大きいことから、「確定申告不要制度」が設けられました。
確定申告不要制度は、以下の要件に該当する人が対象になります。
(1)公的年金等の収入が400万円以下であり、かつ、公的年金等の全部が源泉徴収(※)の対象になっている。
(2)公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である。
(※)源泉徴収とは、給与や年金などの支払金額から、あらかじめ所得税や復興特別所得税などを差し引くこと。
年金受給者で上記の要件に該当する場合、基本的には確定申告は必要ありません。
年金をもらいながら働くと確定申告が必要になる
勤務先で年末調整をした場合でも、それは給与所得のみの手続きなので、年金収入の確定申告が必要です。給与所得が20万円を超え、確定申告不要制度の要件に該当しないときは、必ず確定申告をしましょう。また、家賃収入の不動産所得、株式の配当を受け取ったときの配当所得、生命保険の満期返戻金を受け取ったときの一時所得なども、その所得が20万円を超えていれば確定申告が必要です。
●いくら給与収入があれば確定申告が必要になる?
給与所得は以下のように計算できます。
・給与所得=給与収入-給与所得控除
令和7年度税制改正により、2025年12月1日からは給与収入が190万円までの場合、65万円の給与所得控除を受けられるようになりました。
これをもとに計算すると、給与収入が85万円であれば給与所得が20万円になります。(給与収入85万円-給与所得控除65万円=給与所得20万円)
つまり、給与収入が85万円を超えたら給与所得が20万円を超えるので、確定申告が必要になります。
確定申告不要制度の対象でも確定申告をした方がお得なケース
年金をもらいながら働いても給与収入が85万円以下で、かつ、年金収入が400万円以下であれば確定申告不要制度の対象になるので、基本的には確定申告は不要です。
しかし、ケースによっては確定申告をした方が税金の負担を軽減できる場合があります。
ここでは確定申告をした方がお得になる7つのケースをご紹介します。
●確定申告をした方がお得なケース(1):「扶養親族等申告書」を提出していない
公的年金等をもらう人は、扶養控除や配偶者控除、障害者控除、寡婦控除などの控除を受けるために「扶養親族等申告書」を提出することになっています。
扶養親族等申告書は日本年金機構から源泉徴収の対象になる人に送られます。
源泉徴収の対象になるのは年金額が以下になる人です。
<源泉徴収の対象になる人>

日本年金機構「源泉徴収の対象となる年金額」より筆者作成
令和7年度税制改正により源泉徴収の対象になる年金額が引き上げられました。2025年までは源泉徴収の対象だった人でも、対象の年金額が引き上げられたことで、扶養親族等申告書が届かない場合があります。源泉徴収の対象にならない人は扶養親族等申告書を提出する必要はありません。
日本年金機構から扶養親族等申告書が届いた人は、内容を確認して必要事項を記入し、郵送またはマイナポータルから電子申請をしましょう。
源泉徴収の対象であるのに扶養親族等申告書を提出していない人は、扶養控除や配偶者控除を受けるために確定申告をした方がよいでしょう。控除によって所得税の還付を受けられる場合があります。
●確定申告をした方がお得なケース(2):年の途中で退職し、再就職していない
通常、会社員は年末調整によって納めた税金の過不足分を精算しますが、年の途中で退職すると年末調整を受けられません。この場合、確定申告をすれば税金の過不足分を精算できるので、納めすぎている税金が還付される場合があります。
●確定申告をした方がお得なケース(3):医療費を多く支払った
その年の1月1日から12月31日までの間に支払った、自分と生計を一にする家族分の医療費の合計が一定金額を超える場合、医療費控除を受けられます。
医療費控除の対象となる金額は以下のとおりです。
・医療費控除額=(実際に支払った医療費の合計-保険金などで補てんされる金額)-10万円
※ただし、最高200万円まで。
また、その年の総所得金額が200万円未満の場合、医療費控除額は「総所得金額の5%」となります。年金をもらっている人の場合、総所得金額が200万円未満になるケースも多いでしょう。
医療費控除は確定申告で手続きをする必要があるので、医療費を多く支払った人は医療費控除額を確認してみましょう。医療費控除の対象であれば、確定申告をすれば税金の還付を受けられます。
また、市販の対象医薬品を購入した代金の合計が1万2000円を超える場合、超えた分が控除される「セルフメディケーション税制」を受けられます。ただ、医療費控除との併用はできないのでお得な方を選択しましょう。
●確定申告をした方がお得なケース(4):生命保険料や地震保険料を支払った
生命保険や医療保険、個人年金保険に加入して保険料を支払っている場合、その年に支払った生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料は「生命保険料控除」の対象となり、一定金額の控除を受けられます。
また、地震保険に加入している場合も、その年に支払った保険料が「地震保険料控除」の対象になり、一定金額の控除を受けることができます。
生命保険や医療保険、個人年金保険、地震保険に加入している人は、確定申告をすれば生命保険料控除や地震保険料控除を受けられます。また、保険会社からは毎年10月頃に控除証明書が届きますが、これは確定申告に必要なので大切に保管しておきましょう。
●確定申告をした方がお得なケース(5):ふるさと納税をした
ふるさと納税をすると「寄附金控除」を受けられます。
ふるさと納税による寄附金控除額は以下のとおりです。
・ふるさと納税による控除額=ふるさと納税による寄附金の合計額-2000円
収入や家族構成などに応じた控除上限額までの寄附なら、実質2000円で返礼品も受け取れるのがふるさと納税の魅力です。また、確定申告で寄附金控除の手続きをすれば、税金が還付されます。
年金をもらいながら働いている人は、納税先の自治体が5団体までなら、確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」を利用できます。ただし、寄附金控除のほかに医療費控除などほかの所得控除も受けたいときは、確定申告で寄附金控除の手続きをしましょう。
●確定申告をした方がお得なケース(6):災害や盗難の被害に遭った
自然災害や火災、生物による災害、盗難、横領などにより、資産に損害を被ったときは「雑損控除」を受けられます。
雑損控除額は、以下のいずれか多い方の金額になります。
(1)(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の金額)-(総所得金額)×10%
(2)(災害関連支出の金額-保険金等の金額)-5万円
災害や盗難などの被害に遭ったときは、確定申告で雑損控除の手続きをすれば、税金の還付を受けられます。
ただし、損害の対象となる資産は生活に通常必要な資産のことで、貴金属や絵画、骨董など生活に通常必要でない資産は含まれないので注意しましょう。また、詐欺や恐喝により損害を受けたときは雑損控除を受けられません。
●確定申告をした方がお得なケース(7):住宅を購入またはリフォームした
住宅ローンを利用して自宅を建築、購入、リフォームした場合、要件を満たしていれば「住宅ローン控除」を利用できますが、2026年以降の実施については未定です。2025年度末(2026年3月末)までには政府から税制改正大綱で発表される見込みですが、制度自体が5年間延長されるという報道があります。
また、住宅ローンを利用していなくても、自宅を一定の要件のもと「バリアフリー改修工事」「省エネ改修工事」「耐久性向上改修工事」「子育て対応改修工事」「多世帯同居改修工事」を行ったときは「住宅特定改修特別税額控除」を受けることができます。また、自宅の「耐震改修工事」を行ったときは「住宅耐震改修特別控除」を受けられます。
いずれも確定申告をすることで税金の還付を受けられます。住宅ローン控除については今後の動向に注目しましょう。
確定申告で税負担を軽減できるなら忘れず申告しよう
年金をもらいながら働く場合、給与所得が20万円を超えるときは確定申告が必要です。また、自分が確定申告不要制度の対象者であれば確定申告の必要はありません。しかし、生命保険料控除や医療費控除、雑損控除などの所得控除を受けるときは、確定申告をした方が税金の負担を軽減できるのでお得です。
確定申告により税金の還付を受けるときは「還付申告」になりますが、この手続きは1月1日から可能です。また、還付申告は5年前までさかのぼって申告できます。5年間のうち申告していない年があれば手続きすることをおすすめします。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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