26/03/06
年金を受給しなくても適用される在職老齢年金「51万円」が「65万円」へ改定

65歳以降も働きながら年金を受け取る場合、在職老齢年金制度により年金の一部または全部が支給停止になることがあります。2026年度は支給停止基準額が月「51万円」から「65万円」へと引き上げられることが決定しました。今回は、基準額引き上げの影響と注意点をわかりやすく解説します。
働く高齢者の年金がカットされる「在職老齢年金」の仕組み
65歳以降も会社員や公務員として働き、厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金には「在職老齢年金」という調整の仕組みがあります。これは、賃金と老齢厚生年金の合計額が一定の基準を超えた場合、超えた分の半額が年金から支給停止となる制度です。
支給停止額=(老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額相当額-基準額)×1/2
つまり、賃金月額と老齢厚生年金の合計が基準額を超えなければ全額支給、超えれば一部または全額が停止されることになります。なお、調整の対象は老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金(国民年金)は対象外です。
2026年度から支給停止基準額が「65万円」に引き上げ
在職老齢年金の支給停止基準額(月額)は、2024年度は50万円、2025年度は51万円でしたが、2026年度から65万円に引き上げられます。当初は2024年水準で計算して62万円と言われていましたが、名目賃金の変動に応じて65万円となりました。在職老齢年金の支給停止基準額が大幅に引き上げられたことによって、年金がカットされる人も大きく減ることになります。
たとえば、賃金月額が46万円、老齢厚生年金が10万円の場合、合計は56万円です。2025年度基準では基準額を超過した5万円の半分、2万5000円が支給停止となっていました。しかし、2026年度基準では56万円は基準内となり、老齢厚生年金は全額支給となります。年間では30万円の差です。
在職老齢年金の支給停止基準額引き上げの背景には、健康寿命の延伸や人材確保の観点から、高齢者が働き続けやすい環境を整える狙いがあります。今後は年金が減ることを気にせずに働ける環境になります。
高収入の人は年金を受け取っていなくても注意が必要
在職老齢年金の支給停止基準額が引き上げられたとはいえ、すべての人に影響がないわけではありません。年収が高い人は、引き続き年金の一部または全部がカットされる可能性があります。2026年度の場合、賃金と老齢厚生年金の合計が65万円を超える場合は、支給停止が生じる点を押さえておきましょう。
特に、在職中年金を受け取らずに繰り下げる人は注意が必要です。在職老齢年金によりカットされる部分は、繰り下げによる増額の対象になりません。増額されるのはカットされた後の年金額のみです。
以下のケースで考えてみましょう。
・65歳からもらえる国民年金(年額):84万7300円(2026年度満額)
・65歳からもらえる厚生年金(年額):180万円(月額15万円)
・65歳からの給与(月額):52万円
・賞与なし
・65歳から70歳まで働いて年金は70歳から繰り下げ受給
65歳から年金を受け取る場合、在職老齢年金によりカットされる年金額は
(15万円+52万円-65万円)×1/2=1万円
となり、1ヶ月あたり1万円が支給停止となります。
厚生年金を70歳まで繰り下げると年金額は42%増額しますが、増額の対象は「15万円-1万円=14万円」の部分です。カットされた1万円は増額されません。
70歳から受け取れる年金額は次のとおりです。
【老齢基礎年金】
84万7300円×1.42=120万3166円
【老齢厚生年金】
老齢厚生年金 (14万円×1.42+1万円)×12ヶ月=250万5600円
このように、カット部分は増えないため、繰り下げれば必ず大きく増えるとは限りません。働き方だけでなく年金の受け取り方もよく考えましょう。
年金を減らさずに働き続けられる時代へ
2026年度から在職老齢年金の支給停止基準額は65万円に引き上げられ、年金がカットされにくくなりました。これまでより「働くと損」という場面は減るでしょう。
ただし、高収入の人は引き続き支給停止の可能性があり、カット分は後から受け取れません。繰り下げを選ぶ場合も、増額の対象はカット後の年金のみです。
制度を正しく理解し、自分の収入や年金額を試算したうえで働き方を決めることが、これからの老後設計の鍵になります。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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