23/02/14
年金だけで裕福に暮らす6つのアイデア
何かと不安視されることの多い年金。とはいえ、老後生活の大きな支えとなるお金には違いありません。将来、年金暮らしがスタートしたときになって「少ない」「困った」と慌てないようにしたいですね。
今回は、これから年金暮らしを始める方に向けて、年金生活を裕福なものにする6つのアイディアをご紹介します。
生活が苦しい高齢者世帯は約半数
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2021年)によると、公的年金・恩給のみで生活している高齢者世帯(=公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯)は24.9%となっています。
●年金で生活している高齢者世帯の割合
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2021年)より
実は「公的年金・恩給のみで生活している高齢者世帯」は、前回調査(2019年※2020年調査は中止)では48.4%でした。
●年金で生活している高齢者世帯の割合(2019年調査)
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2019年)より
2019年調査と2021年調査を見比べてみると、収入が「公的年金だけ」という世帯が48.4%から24.9%とおおむね半減し、「80%〜100%未満の世帯」が12.5%から33.3%に増加していることがわかります。「80%未満の世帯」の各割合はそれほど変わっていませんが、老後の生活費が年金だけでは足りない方が増えている様子がうかがえます。
また、高齢者世帯にあっても「生活が大変苦しい・やや苦しい」と答えた世帯の割合は合計50.4%にのぼっています。
●高齢者世帯の生活意識
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2021年)より
データはどの世帯も半数以上の世帯が「生活が苦しい」と感じていることを示していますが、高齢者世帯も例外ではない、というわけです。
厚生労働省の「家計調査年報」(2021年)によると、実収入から支出を引いた「不足額」は夫婦高齢者不足世帯(65歳以上の夫婦のみの無職世帯)で毎月約1.8万円、高齢単身無職世帯(65歳以上の単身無職世帯)では毎月約0.9万円となっています。単純に、これが30年続けば夫婦世帯で648万円、単身世帯で324万円の不足です。
不足分は預貯金を取り崩すなどしていくわけですが、毎月お金が少なくなっていく状況は、これまで働いてお金を稼いできたときにはなかったのではないでしょうか。
年金だけで裕福に暮らすには?
しかも、追い打ちをかけるようですが、このあと劇的にお金が増えることは考えにくいのが現実です。今後毎年の年金額が増えていくとも思えませんし、働いていなければ給料やボーナスもありません。年金とこれまでの蓄えで暮らしていくことになります。
2023年度の年金額は前年比+2.2%(67歳以下)、+1.9%(68歳以上)となっています。増えたのでよかったと思われるかもしれませんが、物価上昇率は+2.5%でしたので、年金額は実質的には目減りしています。
このように見ていくと、バラ色の老後などまず無理と暗くなってしまいそうですが、そんなことはありません。老後の生活をお金の面でも気持ちの面でも裕福なものにするために、次の6つのことを意識することをおすすめします。
●年金だけで裕福に暮らすアイディア1:毎月の支出を予算化する
若者を中心に話題となった「FIRE」(経済的自立と早期リタイア)では、生活費を節約するとともに投資を行い、得られる不労所得だけで生活することを目指します。不労所得よりも生活費が少なければ、計算上お金は減らないため、早期リタイアしても大丈夫、と考えるのです。
年金で生活する場合も、これと同様のことがいえます。まずは毎月の支出を予算化してみましょう。支出には個人差がありますが、一般的に老後の生活費は現役時代の約7割といわれています。この支出を、老後の公的年金収入+貯蓄などから毎月取り崩せる金額でまかなうことができるのであれば、老後生活が困るということは、ひとまずないでしょう。
支出が多くてまかなえないという場合は、節約できるところがないか検討してみましょう。たとえば、スマホ代は格安スマホや格安プランに乗り換えるだけで月3000円程度、年間で3万円〜4万円程度は節約できます。また保険も、入りっぱなしになっている保障を見直すことで、節約につながるでしょう。このように削れるところを考え、毎月の支出を予算化しましょう。
●年金だけで裕福に暮らすアイディア2:年金が少ないなら働く
もしも、それでも年金額が少ないのであれば、60歳以降も働くのがおすすめです。はじめに紹介したとおり、金額の多少は別として、年金の他に収入を得ている人は増えています。それに何より、今は希望すれば65歳までは働ける時代ですし、「70歳まで働く」時代も見えてきています。今の60代は、まだまだ若いのです。
公的年金のうち、厚生年金は70歳まで加入できます。60歳以降も会社勤めして、厚生年金に加入すれば、将来もらえる厚生年金の金額が増えます。それに、毎月給与がもらえますし、社会とのつながりがあることで、健康維持にも役立ちます。働くことは、生活の大きな支えとなるでしょう。
さらに、年金の繰り下げ受給をすれば、年金額を増やすことができます。年金の繰り下げ受給とは、本来65歳からもらえる年金を、66歳以降にもらうことです。年金を1か月繰り下げることで、年金額は0.7%増加します。年金は最長で75歳まで繰り下げることができ、84%も増やせます。
65歳からもらえる国民年金+厚生年金の平均受給額は月額約14.6万円(厚生労働省「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)。これを70歳まで繰り下げれば月額約20.7万円、75歳まで繰り下げれば約26.9万円に増加する計算です。もちろん、繰り下げ受給の間の生活費を用意する必要はありますが、たとえば70歳まで働くのであれば、十分繰り下げ受給を目指すことができるでしょう。
●年金だけで裕福に暮らすアイディア3:確定申告は毎年きちんとする
老後の年金は「雑所得」として、所得税や住民税の課税対象となります。65歳未満で年金受給額が108万円超、65歳以上で年金受給額が158万円超の場合、年金から所得税があらかじめ源泉徴収されます。ただ、年金から天引きされる所得税は、あくまで概算の金額ですので、もし税金を納め過ぎていれば、確定申告をすることでその分が還付されます。
年金受給者の確定申告には、条件に当てはまる場合はしなくてもいい「確定申告不要制度」があります。確定申告不要制度の対象になるのは、
①公的年金等の収入金額が400万円以下
②公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
の2つの条件を満たす場合です。年金生活者のほとんどは、確定申告不要制度の対象となると考えられます。
しかし、だからといって確定申告しないでいると、納めすぎになった所得税を取り戻すことができません。医療費がかかった場合(医療費控除・セルフメディケーション税制)、ふるさと納税(寄附金控除)、投資の利益と損失を相殺する損益通算や繰越控除が利用できるなら、少々手間でも毎年きちんと確定申告しましょう。
●年金だけで裕福に暮らすアイディア4:支出にメリハリをつける
生活費が足りるからといって、ただそれで生活していくだけなのは少々味気ないですね。やりたいことを実現することも大切です。そのためのお金を出すためには、支出にメリハリをつけることが大切です。つまり、自分にとって価値のある、優先順位の高いことにはお金をきちんと出して、それほどでもない、優先順位の低い支出はなるべく削るようにするのです。
これが上手にできているのがお金持ち。何にでもじゃぶじゃぶお金を使うお金持ちはほとんどいません。むしろ、支出にメリハリをつけています。ここぞというときにはお金をしっかり使い、無駄な支出はしっかりと削る。そうすることで、満足度の高いお金の使い方をしているのです。
●年金だけで裕福に暮らすアイディア5:お金のかからない老後の楽しみを見つける
お金をかけてお出かけ!も楽しいですが、そんなことばかりしていたら、あっという間にお金がなくなってしまいます。平均寿命は女性87.57歳、男性81.47歳。65歳から数えても、老後は平均的に20年前後あるわけです。ですから、お金のかからない老後の楽しみ、趣味を見つけることが大切です。
おすすめは公共サービスを利用すること。図書館に行けば無料で本や新聞が読めますし、公民館のサークル活動やスポーツ施設なども安価で利用できます。大学の生涯学習センターなども同様で、意外と充実しているものです。もしお住まいの近くにあるならば、一度のぞいてみるといいでしょう。
また、美術館・博物館・映画館など、格安なシニア料金が設定されている施設も多くあります。ぜひ活用しましょう。
●年金だけで裕福に暮らすアイディア6:孫消費に注意する
意外と「ザル」になりがちなのが、孫(子ども)に対する消費です。かわいい孫や子どものためならば何でもしてあげたいという気持ちはわかります。でも、いくらかわいいからといってお金を出してしまうと、老後資金が一気に減ってしまい、足りなくなってしまうことも考えられます。これでは、予算をいくら立てようが、年金を増やそうが、本末転倒です。
もちろん「何にも買い与えてはいけない」とはいいません。しかし、ここは支出のメリハリのつけどころです。優先順位をつけて、本当に買ってあげたいものだけを買うようにしたほうが、老後資金不足にも悩まずに済みますし、満足度も高まるでしょう。
まとめ
将来、年金暮らしがスタートしたときになって「少ない」「困った」と慌てないようにするためには、支出を予算化すること、長く働いて年金を増やすこと、支出にメリハリをつけることが大切です。また、お金を一度に大きく減らさないようにするため、お金のかからない楽しみを見つけること、孫支出に注意することもお話ししました。これから老後を迎える方はもちろん、すでに年金暮らしをスタートさせている方にも、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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