21/12/22
「退職金専用定期」を使い倒して退職金を超安全に10万円増やす方法
まとまった金額の退職金を受け取ったら、どこに預けようか、どう活用しようかと悩む方も多いでしょう。虎の子の退職金、大切にしたいですよね。そんな方に利用を検討していただきたいのが「退職金専用定期」。期間限定ながら、普通預金よりも高い金利を受け取れる定期預金です。今回は、退職金専用定期の特徴と預金のポイント、注意点を解説します。
退職金専用定期の預け替えで高金利を維持
退職金専用定期は、銀行が用意している退職金専用の定期預金プラン。ほとんどの場合、普通預金よりも高い金利が設定されています。「最低300万円以上」などと預け入れの最低金額が決まっている、一定の地域の方しか申し込めないなど、預け入れに際しての条件も多いのですが、それでも高金利が受け取れるのは大きなメリットといえます。
たとえば、2000万円の退職金を金利年0.001%の普通預金に1年間預けていても、1年間で増えるお金はわずか200円(税引前・以下断りのない限り税引前)です。しかし、仮に3か月の金利が年1%の退職金専用定期(3か月もの)に3か月預けた場合、3か月で受け取れる利息は5万円となる計算。明らかに違います。
ただ、退職金専用定期で高い金利が受け取れるのは最初の1回だけ。それも、数か月短い期間で満期を迎えてしまうものがほとんどです。そのまま継続して預けると、2回目以降は通常の定期預金と同様の金利に下がってしまいます。
これを防いで、なるべく高い金利を受け取り続けるテクニックに、退職金専用定期の「乗り換え」があります。つまり、A銀行の退職金専用定期を利用して満期を迎えたら、今度はB銀行の退職金専用定期を利用するという具合に、退職金専用定期を乗り換えていくのです。
退職金専用定期の預け入れの条件には「退職金を受け取ってから一定期間(数か月・数年)内に預けること」といったものがあります。この条件は銀行によってまちまちなので、短いものから長いものへと退職金専用定期を乗り換えていけばいい、というわけです。
退職金専用定期のシミュレーション
たとえば、大阪府在住の方が2000万円の退職金を次の3つの退職金専用定期に預けるとして、簡単にシミュレーションしてみましょう。
①関西みらい銀行「退職金運用プラン」
特別円定期(1年もの・年利0.35%)
【利用条件】
・退職金受取後1年以内に預け入れ
・来店して店舗で申し込む
【利息】
2000万円×0.35%=7万円
②三井住友信託銀行「退職金特別プラン 定期預金コース」
スーパー定期(3か月もの・年利0.8%)
【利用条件】
・退職日から2年以内で1回のみ利用可能
・来店して店舗で申し込む
・ライフプランに関するコンサルティングを受ける
・メールアドレスを登録する
・アンケートに回答する
【利息】
2000万円×0.80%×(3/12か月)=4万円
③池田泉州銀行「退職金一時預かりプレミアムプラン」
基本プラン(2か月もの・年利1.0%)
【利用条件】
・退職日から2年以内で1回のみ利用可能
・来店して店舗で申し込む
【利息】
2000万円×1.00%×(2/12か月)=3万3333円
①〜③の順に預けていくと、受け取れる利息の合計は7万円+4万円+3万3333円=14万円3333円となります。ここから20.315%の税金を差し引くと11万4214円。普通預金よりも大きく増やすことができることがわかります。
地方の銀行や信用金庫などには、ほかにもいい条件の退職金専用定期も存在します。たとえば第四北陸銀行「定期預金プラン」では、退職金の預け入れに加えて年金受け取りの指定をする場合、3か月ものの退職金専用定期の金利が年利1.3%になります。また、呉信用金庫でも預け入れ1000万円以上・年金受け取りの指定によって6か月もののスーパー定期預金の金利が店頭表示金利が+0.75%されます。
ただし、退職金専用定期を利用するには、店舗の営業地域内に在住(または在勤)していることが条件の場合がほとんどです。どれでも併用するわけにはいかないので注意が必要でしょう。
退職金を手にする前に、お住まいの地域の銀行に退職金専用定期があるかを調べて、併用の作戦を立てるのがおすすめです。
「投資信託とのセット商品」には要注意
退職金専用定期を利用する際に注意したいのが、「退職金運用プラン」などと称して、投資信託やファンドラップなどの商品と一緒に定期預金を行うセット商品です。多くの場合、預けるお金の半分を定期預金に預け、もう半分を投資信託で運用します。
定期預金では、退職金専用定期よりもはるかに高い金利(5%〜7%!)が提示されていることも。これだけ見ればお得だと思われるかもしれません。しかし、一緒に購入する投資信託を買うときにかかる購入時手数料や、保有中にかかる信託報酬が高く設定されているものがほとんどです。
たとえば、2000万円の退職金のうち1000万円を定期預金(3か月もの・年利6%)に預け、もう1000万円で投資信託(購入時手数料3%)を購入したとします。このとき、3か月後に受け取れる定期預金の利息は15万円ですが、投資信託の購入時手数料は30万円と、受け取れる利息の倍もかかってしまうことに。これでは明らかに損ですね。
「投資信託は市況がよければお金が増える可能性がある」確かにそのとおりです。しかし、こうしたセット商品の投資信託は、信託報酬も1〜2%などと高く設定されていることが多いのです。これでは、効率よくお金を増やすことはできないでしょう。
投資信託でお金を増やしたいならば、ネット証券を活用するのがおすすめ。ネット証券は購入時手数料無料(ノーロード)の商品を多く取り揃えていますし、信託報酬も安いものは0.1%〜0.3%程度となっているからです。わざわざ退職金運用プランで、定期預金と一緒に投資する必要はないでしょう。
まとめ
退職金専用定期は、期間限定ながら普通預金よりも高い金利が受け取れるサービス。利用するには店舗の営業エリアに住んでいることなど条件はありますが、可能な限り乗り換えることで、高い金利を受け取り続けることができます。まだ退職金の預け先・使い道が決まっていない…という場合は、まずは退職金専用定期を活用しながら、じっくりと考えてみてはいかがでしょうか。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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