19/11/08
こんな生命保険には入るな! 入ってはいけない6つの保険
生命保険文化センターの調べによると、何らかの生命保険に入っている人は82.1%(「生活保障に関する調査(速報板)」令和元年度)。世帯あたりの保険料の平均は年間38.2万円(月額約3万2000円)です(「生命保険に関する全国実態調査」平成30年度)。
生命保険の契約は、超長期に及ぶことが多いものです。場合によっては30年、40年と支払うこともあります。年間の保険料38.2万円を30年支払うと1146万円、40年ですと1528万円になります。かなりの高額になりますね。保険は、1000万円以上もする大きな買い物なのです。
ですからもし、あなたが必要のない保険に入っているとしたら、とても大きな損を抱えることになります。
そこで今回は、超辛口の保険評論家として、必要のない保険をバッサバッサと切っていきたいと思います。
保険の本来の役割を考えれば必要でない保険がわかる
保険のそもそもの役割を考えてみると、「必要な保険」と「必要でない保険」がわかります。
私が考える保険の本来の役割とは「滅多に起こらないけれど、もしそれが起こったときに経済的損失の大きなこと」に対して備えることです。生命保険の保険金・給付金は、現金支給です。つまり、困ったことをお金で解決するのが保険の目的なのです。
たとえば、20代の独身で、子どももなく扶養家族もないという方がもし死亡した場合、悲しむ人はたくさんいてくれたとしても、経済的に困る人がいなければ、死亡保障は必要ありません。
ところが、結婚をして子どもや家族がいる場合は、残された家族は経済的に困ってしまいます。この場合には死亡保障は必須になります。
また、経済的損失が小さいときは、わざわざ保険で備える必要はなく、貯蓄で備えればよいのです。
この原則を踏まえながら、「必要のない保険」を考えていきましょう。
●こんな生命保険には入るな!1:医療保険はいらない
医療保険について、先ほどの原則に当てはめてみましょう。
「入院は滅多に起こらないけれど、たまに起こることがある。しかしもしそれが起こったとしても、経済的損失は小さいので、保険ではなく貯蓄で備えよう」といえるでしょう。
なぜならば、治療費は健康保険があるため、3割負担で済みます。また、高額になっても高額療養費制度があるので、自己負担額は少ないのです。多くの人は入院が心配と言っていますが、経済的な負担はじつは少なく、おおむね30万円ぐらい貯蓄があれば対応できます。
医療保険で備えるよりも、貯蓄で備えましょう。
●こんな生命保険には入るな!2:終身保険はいらない
いまは低金利時代です。当然、保険の予定利率(予想される運用利回り)も低く、貯蓄としての終身保険の魅力はありません。死亡保障を考えるのでしたら、掛け捨て型の定期保険などで備えるのが合理的です。
ただし、相続税対策としては、死亡保険金には非課税枠があるので、とても有効です。また1999年4月1日以前)に契約した終身保険は予定利率が良いので、解約をしないで大事に取っておいてください。
●こんな生命保険には入るな!3:外貨建て保険はいらない
貯蓄型で円建ての保険は、予定利率がよくないので魅力がありません。ですから保険会社は、外貨建ての保険の販売に力を入れています。しかし、この外貨建て保険というのは、決してお得な商品ではありません。元本保証があるといっても、それは外貨での保証。為替の変動によって損をすることがあるので注意してください。また手数料も高い商品です。
保険商品を考える場合、保障と運用はわけて考えた方が効率的です。
●こんな生命保険には入るな!4:個人年金保険はいらない
老後資金が心配ということで、個人年金保険に入る人も多いのですが、こちらも予定利率はよくありません。老後資金を準備するのでしたら、個人年金保険よりもiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)、つみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)などを利用した方が効率的です。とくにiDeCoは税制優遇が大きいので、老後資金を準備するには最適です。
個人年金保険は、iDeCo、つみたてNISAの次、三番目に検討すればよい商品です。
●こんな生命保険には入るな!5:学資保険はいらない
子どもの学費は大きな出費になります。しかし学資保険には、元本割れする商品が多くあります。確かに、保険としての役割はありますが、学資を貯める役割には不十分です。もちろん払い込んだ保険料総額より増える商品もありますが、大きく増えるということはありません。
学資を貯めるという目的ならば、つみたてNISAを利用することをお勧めします。
●こんな生命保険には入るな!6:三大疾病保険はいらない
大疾病保険とは、がん・急性心筋梗塞・脳卒中と診断されると保険金を受け取ることのできる保険です(支払い要件は、がん・心疾患・脳血管疾患の商品もあります)。
がんの場合は、診断されると保険金を受け取ることができますが、急性心筋梗塞と脳卒中は、所定の要件を満たさないと保険金を受け取ることができません。それに、死亡保険と比べて保険料は高めになっています。そのうえ、もちろん三大疾病以外の病気になったとしても、保険金は受け取れません。
ですからこの場合は、就業不能保険で備えた方がいいかもしれません。
辛口保険評論家が勧める、本当に必要な保険とは
ここまで、必要ではない保険をあげてきました。それでは、本当に必要な保険とは何でしょうか?
それは、前述したように「経済的損失が大きなことに備える保険」です。
経済的損失が大きいリスクには、2種類あります。
ひとつは、もしものことがあって亡くなるリスクです。死んでしまうと残された家族が困ります。もうひとつは、病気やケガによって働けなくなり、収入が減ってしまうリスクです。生活に困ってしまいます。
亡くなるリスクに対応できる保険には、定期保険や収入保障保険があります。収入が減ってしまうリスクに対応できる保険には、就業不能保険やがん保険があります。また、これらより優先度は低いものの、介護費用のねん出が厳しいようであれば、介護保険を使うのもいいでしょう。
この中から、自分に合う保険を探すようにすればいいと思います。
以下、簡単にどんな保険か紹介します。
●定期保険
一定期間だけの保障を得ることができる保険で、掛け捨て型が中心です。掛け捨てなので少ない保険料で大きな保障を得ることができます。
●収入保障保険
基本は定期保険と同じですが、時間とともに保障額が減っていく保険です。子育て世代には合理的な保険です。定期保険よりも保険料はさらに安くなります。
●就業不能保険
ケガや病気で働けない状態が60日〜180日続いた場合に、給料のように毎月保険金を受け取ることができる保険です。収入減に備えることができます。傷病手当金がないフリーランスの人などには優先度の高い保険になります。
●がん保険
がんと診断されたときにお金が受け取れる保険です。がんの治療費は、他の病気と同じで高額療養費制度があるので、自己負担の費用はそれほどありません。しかし、治療のために仕事ができなくなることはあるでしょう。そのための生活費を補てんするという意味で、がん保険は役に立ちます。
●介護保険
必要な介護を受けるためのお金をカバーしてくれる保険です。介護費用は意外とかかります。介護期間や要介護度で異なりますが、損保ジャパンの「介護に関するアンケート調査」によると介護費用の総額は平均787万円というデータもあります。貯蓄で備えるのが合理的ですが、難しいときは保険を利用してもいいでしょう。
まとめ
保険は大きな買い物になりがちです。毎月の保険料はそれほどでなくても、30年・40年と契約することで、気がついたらまとまった出費となってしまいます。ですから、本当に入るべき保険だけを見定めて加入し、不要な保険に入らないように気をつけましょう。
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長尾 義弘 NEO企画代表
ファイナンシャル・プランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『お金に困らなくなる黄金の法則』『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。
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