16/09/03
5年経過で保険に入る? がん経験者が注目の再発に備えた生命保険
アフラックから、がんを経験した方向けの保険が新しく発売され注目を集めています。
がん患者は定期検診を受けるたびに再発や転移が見つかるのではと気がかりで、治療費についても不安を感じています。
今回は、乳がん発症から5年を経過した筆者も気になる「がん経験者が加入できる保険」について紹介します。
入院、手術だけでは足りない保障
がんの再発や転移が見つかった場合、初めてがんになったときよりも入院せずに通院で治療することが多くなります。
筆者がかかった乳がんを例にとると、病状にもよりますが、同じ場所にできる再発のがんに対しては手術と放射線治療が、肺など別の部位に転移している場合には抗がん剤治療を行うことが主な治療法になっています。
放射線治療も抗がん剤治療もほぼ通院で行う治療なので、多くの方が加入している入院と手術だけを保障する保険では手当ができません。そのため、再発や転移に備え、新たに保険加入を考えたい患者が多くいるのが現状です。
告知でわかる加入の条件
一般的に加入を考えるのが標準型と呼ばれる医療保険です。健康な方が加入する保険で審査が厳しいのですが、例外として過去の病歴や現在治療中の病気があれば、その部位を保障の対象外にするなど特別な条件をつけることで加入できる場合もあります。
いずれにせよ加入にあたり健康状態や職業を告知する義務があり、告知の内容にはがんに関する事項があるのが普通で、標準型の保険はほとんどが「がん」になったことがあれば加入できないタイプとなっています。
例えばオリックス生命の「新CURE」では、告知書に「今までに、がんまたは上皮内新生物にかかったことはありますか」という質問があります。
アフラックの「ちゃんと応える医療保険」では「過去5年以内に下記の病気や異常で、医師の診察・検査・治療・投薬をうけたことがありますか?」という質問となっていますが、特約として「三大疾病保険料払込免除特約」「三大疾病一時金特約」を追加する場合には、「今までにがん(悪性新生物)にかかったことがありますか?」という質問に答える必要があります。
緩和型の保険なら入りやすい?
緩和型の保険とは引受基準緩和型医療保険のことで、年配の方が出演しているコマーシャルに見られるように、糖尿病など健康状態に不安があり標準型の保険への加入が難しい方に向けた保険となっています。
標準型と比べると加入の要件が緩やかという特徴があるのですが、多くの緩和型保険では過去5年以内にがんで入院や手術をしたかどうかが問われており、また治療や投薬についても5年以内の状況を問われる場合があります。
がんの再発や転移がなくても投薬を続けている患者は多くいるので、標準型と同様にがん患者にとっては加入のハードルが高くなっているのが実情です。
再発に備える保険も5年がボーダーライン?
アフラックの「がんを経験された方への生きるためのがん保険寄りそうDays」は 「満20歳~満85歳の方で『がん(悪性新生物)』の治療を受けた最後の日から、5年以上経過している場合にお申込みいただけます」とあります。特約を付加することで抗がん剤やがん先進医療の治療を保障できることが特徴です。
テラ少額短期保険の「がんサバイバーのための再発治療保険」は今までかかって治癒したがんについての質問があり、「病期(ステージ)Ⅰ期またはⅠ期相当の場合、手術あるいは放射線治療後3年以上経過」または「病期(ステージ)Ⅱ期またはⅡ期相当の場合、手術あるいは放射線治療後5年以上経過後」となっています。病期によっては3年経過後から保険に加入できそうですね。ただし、脳や血液のがんなど対象外になるがんもあるので確認が必要です。
また、乳がん患者を対象にしたセコム損害保険の「メディコムワン」は、ステージⅠ期の場合は手術日からの経過期間が1年超、ステージⅡ期の場合は3年超が条件のひとつとなっています。病院が限られますが、自由診療の治療費も補償されるところも特徴です。
このように5年に満たなくても加入できる保険はありますが、受ける治療が保障の対象外なら本末転倒。転移が予想される部位や治療法を調べたうえで加入を検討しましょう。また書類提出後に加入を断られるとツライですよね。病歴や現在の状況をしっかり伝え、加入できる可能性を確認してから申し込むことをお勧めします。
がんの治療費は高額になりがちです。だから保険で手当てをしたいと考えるのですが、健康不安を抱えている方が加入しやすい保険は、健康な方と比べ保険料が高くなるのは当然のこと。
また、がんはウイッグなど保険で保障されない費用が多くかかります。
高額療養費制度など社会保障だけで足りない費用は保険を頼らず貯蓄で用意できるよう、まずは日頃の家計管理をしっかりしていくことから考えてみてはどうでしょうか。
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辻本 由香 おふたりさまの暮らしとお金プランナー
企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。27歳で阪神大震災、43歳で乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。現在は奈良で独立系のFP事務所を開業。セミナーを主としながら、子どものいないご夫婦(DINKS・事実婚)やシングルの方の相談業務、執筆も行っている。著書『がんを生きぬくお金と仕事の相談室』(河出書房新社)。
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