20/05/11
みんなの生命保険の加入金額はどれくらい? 平均や分布はどうなっているのか
万が一の備えとして、多くの人が生命保険に加入しています。その中で気になるのは生命保険の加入金額(死亡時の保険金額)。実際のところ「みんなどのくらいの生命保険に入っているの?」と感じることはありませんか。
そこで今回は、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)から、生命保険の加入金額の平均・分布データを紹介します。その調査の結果を踏まえ、生命保険の備え方、上手な入り方などもあわせて説明します。
「生命保障に関する調査」の結果、特徴について
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、病気や事故で亡くなった際に支払われる生命保険加入状況は次のとおりです。
●生命保険加入金額
●年代別の加入金額・平均
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(令和元年度)より作成
ここから、4つの特徴が読み取れます。
①生命保険加入額の全年代での平均は、男性が1866万円、女性が801万円です。
②すべての年代での生命保険加入金額の分布は、男性の場合「1000万円以上1500万円未満」の層が最も多く17.3%であり、次いで「3000万円以上5000万円未満」15.1%や「1000万円以上1500万円未満」17.3%です。すべての年代の3割強が2000万円以上の保障に加入していることになります。
③女性の場合は、男性に比べると生命保険加入金額は少ない傾向にあります。具体的な生命保険加入額は、「200万円以上500万円未満」24.8%、次いで「500万円以上1000万円未満」22.7%、「1000万円以上1500万円未満」16.5%です。すべての年代の6割ほどが1000万円未満となっています。
④すべての年代のなかで、加入保険額が多いのは、30代の男女で、平均は1607.7万円となっています。なお、30代男性の平均は2331万円、30代女性の平均は1013万円です。
生命保険の加入金額は少ない?
生命保険に加入する目的は、万が一のことがあったときに、残された家族の暮らしを守るためです。しかし、この結果の生命保険加入額を確認する限り、男性の生命保険加入額は少ないように感じます。なぜなら、男性は一家の大黒柱という立場もあり、万が一の場合は、子供の教育費や家のローン、その後の家族の生活を支えるための準備が必要です。にもかかわらず30代の男性の生命保険加入額の平均が2331万円というのはイザというときに大丈夫なのか心配です。
一方、女性の場合、30代の生命保険加入額の平均は1013万円です。とはいえ、すべての年代で見てみると、1000万円未満の保障しか持たない女性が6割ほどを占めています。女性は結婚している方、していない方、共働き、主婦・パートなど生活の背景は多様であるため、生命保険の必要額もバラバラとなります。
実際のところ、共働きの場合であれば、夫の収入が中心になります。そうした場合、妻は大きな保障を必要としないかもしれませんが、子どもの学費、養育費などを不足なく準備したいと思えば、ある程度の生命保険を必要とする場合があります。
また、専業主婦やパート勤務であれば、万が一の場合、家計の収入が大きく減少することはありません。しかし、まだ子どもが小さいようなら、残された夫の家事負担が増え、ベビーシッターなどのサービスが必要となるかもれません。そうなれば、相応に費用がかかり、ある程度の生命保険を必要とする場合もあります。
一方で、ひとり暮らしの女性は、あまり大きな生命保険を必要としません。それよりも、安定した老後生活を迎える資金つくりを優先させた方が良いといえます。
このように、女性も生命保険を必要とするケースがあります。そのため、すべての年代の6割の女性が1000万円以下の保障しか持たないのは少ないと感じました。単純に生命保険は大黒柱である男性が掛けておくものではなく、女性も場合によってはある程度の保障が必要になってきます。
「生活保障に関する調査」の生命保険の充足度について
次に、実際に加入した生命保険の充足度について見てみましょう。「生活保障に関する調査」の中では、自分で生命保険に加入する私的準備と国の公的保障や勤め先の企業年金をあわせた公的準備での充足感があるかと質問しています。その結果は以下のとおりです。
●死亡保障に対する充足感
「十分足りている」5.9%、「どちらかといえば足りている」28.2%を合計した「充足感あり」は34.1%です。それに対し、「どちらかといえば足りない」38.4%、「まったく足りない」16.2%を合計した「充足感なし」は54.6%でした。
充足感ありに対して、充足感なしが20.5%も上回るという驚くべき結果となりました。過去の調査と比較すると、「充足感なし」は減ってきていますが、それでも大きな差があります。
先ほど、男性・女性ともに生命保険加入額の平均額が少なように感じると申し上げましたが、このアンケートの結果からも、保障が不足しているという現実をうかがい知ることができます。
「充足感なし」を「充足感あり」へ変えるために必要なこと
生命保険の加入額を「充足感あり」にするには、今よりも保障を増やせば大丈夫なの?と感じるかもしれませんが、実際はそう簡単なものではありません。なぜなら、生命保険は長期的に持つ必要があるため、大きな保障になればなるほど、保険料の負担も多くなるからです。
日々の生活があり、さらにライフイベントごとに必要なお金もあります。また、老後の蓄えも準備する必要もあるため、保険にばかりお金を掛けられないというのが実際のところではないでしょうか。そのため、それぞれ個人が、万が一の保障で充足感を得るためには、どのような保障を、いつまで、どのくらいの額で必要かを知ることが大事です。
そのためには、現状の生活をライフプランで把握し、万が一のときには、どの程度の生活を維持できるのか、シミュレーションしてみる必要があります。そうすることで、実際のお金の流れを可視化したり、万が一のときに受けられる公的保障や企業での福利厚生制度を確認してみたりします。また、保障のダブりなどがないか確認しながら、見えてきたリスクを効率的に補てんすることができれば、生命保険の加入額での「充足感あり」を得ることができるでしょう。
定期保険と終身保険の組み合わせを考えよう
生命保険にはいろんな種類があり、期間や保険料もさまざまです。生命保険を検討するなら、主に定期型か終身型のどちらかから選びます。
●定期型
定期型の死亡保険は、保障される期間が10年、20年と決まっている更新型と、保障される年齢が60歳、65歳までと決まっていて、更新しない全期型があります。保険期間中に支払った保険料は掛け捨てになります。少ない保険料で大きな保障を備えることができる点は良いのですが、更新する際に保険料が高くなる点には注意が必要です。
●終身型
終身型は、死亡するまで一生涯保障が続きます。更新などはないので、途中で保険料が上がることはありません。解約したときにお金が戻る解約返戻金があるタイプなので、定期保険と比べると保険料は高いのが特徴です。お金が貯まるという機能を生かし、老後の貯蓄として活用することもできます。
少ない保険料で大きい保障を備えることができる定期型と保険料は高くても貯蓄性を兼ね備えた終身型。この2つの保険の特徴を組み合わせ、自分にあった保険を選ぶことが大切です。
また、自分にあった保険というのは、結婚・子供の誕生・住宅取得・転職などのライフイベントのタイミングで変化するものです。保険に一度入ったらおしまいではなく、折を見て見直しをすることも充足感を得るための鍵になります。
まとめ
「みんなどのくらいの生命保険に入っているの?」と気になることもありますが、個人ごとに生活スタイルが違えば必要な保障もさまざまです。生命保険の大きい、少ないではなく、状況や希望にあった保険に加入することが重要です。そのためにも、自身のライフプランを作成し、現状のお金の流れ、公的な保障などを把握していきましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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