25/08/06
9割が知らない隠れ年金「加給年金」が年金改正で密かに改悪。もらえる年金額は5年で20万円減へ

「加給年金」とは、公的年金に上乗せされる“家族手当”のような制度。条件を満たせば年間数十万円が加算される年金の仕組みです。意外と知っている人が少ない、忘れがちな年金なのですが、年数十万円もらえるのは大きいですよね。
ところが、2025年に成立した年金制度改正により、2028年4月以降に加給年金をもらい始める人は、配偶者分が減額されることになりました。今後、受給を予定している人にとっては、見逃せない変更といえます。今回は、加給年金の基本と改正内容を、わかりやすく解説します。
加給年金とは、公的年金における「家族手当」のようなもの
「加給年金」とは、年金をもらい始める65歳の時点で、一定の条件を満たす配偶者や子どもがいる場合に、年金額に上乗せして支給されるお金です。
●加給年金をもらえる条件
加給年金を受け取るには、次の2つの条件を満たしている必要があります。
・本人が65歳になった時点で、厚生年金に20年以上加入していたこと
・65歳未満の配偶者や18歳になる年度の末日まで(または、障害等級1級または2級の状態にある20歳未満の子ども)を養っていること
配偶者や子どもが年齢制限を超えると、加給年金はストップします。
また、これらの家族と「生計を同じくしている」ことも条件です。
具体的には、同居している、または別居でも仕送りをしていて、対象者の前年の収入が850万円未満(または所得が655万5000円未満)である必要があります。
●加給年金の金額
加給年金の金額は、対象となる家族の人数などによって決まっています。以下は2025年度の金額です。
・配偶者(65歳未満):年間23万9300円
・1人目・2人目の子ども:それぞれ年間23万9300円
・3人目以降の子ども:年間7万9800円
また、配偶者の加給年金には、年金受給者の生年月日に応じて「特別加算」という上乗せがあります。この金額は3万5400円~17万6600円の間で、生まれ年が新しいほど加算額が多くなります。
たとえば、1950年生まれの厚生年金受給者が対象配偶者と暮らしている場合、通常の加給年金(23万9300円)に特別加算(17万6600円)がプラスされ、合計41万5900円が支給されます。
年金制度改正で加給年金が改悪?
2025年6月に成立した年金制度の改正では、これまでの「家族手当」のような役割を持っていた加給年金の仕組みが見直されました。 今回の改正では、年金を受け取りながら子育てをしている人への支援がより手厚くなる一方で、配偶者への加給年金は一部減額されます。
背景には、共働き世帯の増加や女性の社会進出が進んだことがあります。これまでのように「夫が働き、妻が家にいる」モデルに合わせた制度では、今の社会に合わなくなってきたため、時代に合わせて仕組みを調整したというわけです。
この改正によって、より支援が必要な子育て世帯を中心に、年金の加算額が変わります。
●配偶者加給年金が減額
新たに2028年4月以降、配偶者がいる場合の加給年金額が「年額約40万8100円(月3万4000円)」から約36万7200円(月3万600円)に年約4万円減少します(2024年度時点の金額をもとに計算)。つまり、加給年金の金額が1年で約4万円、5年では約20万円も減額となってしまうのです。ただし、既に受給している人は影響を受けず、現在の受給者は減りません。
●子どもがいる人は逆に増額
一方、子どもを扶養している場合の「子の加算」は、引き上げられます。
第1・第2子の加算が年23万4800円(2024年時点)から年28万1700円へと4万6900円アップ。第3子以降も7万8300円(2024年時点)から年28万1700円へと20万3400円増額となります。
<子の加算の引き上げ>

厚生労働省の資料より
多くの子どもを持つ年金受給者は、これまで以上にしっかり支援される仕組みになります。
「子育て世帯」への支援が手厚く
今回の年金制度改正により、配偶者に対する加給年金は2028年4月以降に新たに受給を始める人から年約4万円の減額となり、5年間で約20万円もらえる年金が減ることになります。一方で、子どもを養っている世帯には、加算額が増えるというプラスの見直しが行われました。
つまり、これからは「夫婦二人世帯」よりも「子育て世帯」への支援が手厚くなる制度に変わっていきます。現在すでに加給年金を受け取っている人には影響はありませんが、2028年4月以降に受給を予定している方は、自分の受給額を確認し、年金にあわせた働き方、資金準備など見直しをしましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー

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