25/12/18
「金なし老後」に陥る4つの罠

長年働き続け、定年や退職という人生の節目を迎えると、「これからは自由だ」という安堵感から、お金の使い方が緩みがちになる方は多いのではないでしょうか。
しかし、老後の主な収入源は年金ですし、収入も現役時代のように多くはないため、資産が減っても簡単に挽回はできません。この人生の転換期に生じる心の緩みこそが、気づかぬうちに資産を大きく減らしてしまう最大の原因です。「あんなことしなければ…」と後悔する前に、しっかり対策を講じる必要があります。
今回は、多くのシニアが陥りがちな4つの「お金の罠」を挙げ、なぜ貴重な老後資金が消えていくのか、そして安定した長い老後を過ごすための具体的な回避策を解説します。
「金なし老後」に陥る罠1:退職金を華々しく使った
長年働き続け、ようやく手にした退職金。数千万円という金額は、多くの人にとって「人生で最大のまとまったお金」といえるでしょう。
しかし、通帳に記載された大きな数字を見ると、つい気が大きくなり、「長年のご褒美」として豪華な旅行に行ったり、高級車を購入したりと、衝動的に使ってしまう方が少なくありません。
注意が必要なのは、定年後の収入は現役時代の5~6割程度に減ることが多いという現実です。退職金は「余剰資金」ではなく、減ってしまった収入を補うための大切な命綱です。これを受け取った直後に無計画に使ってしまうと、その後の長い老後生活であっという間に資金が底をついてしまいます。
●罠を回避するための対策は?
「退職金が入っても、最低半年間は手を付けない(使わない)」というルールを徹底しましょう。時間が経つことで、高揚した気持ちが落ち着き、冷静な判断ができるようになります。 また、退職金の定義を「ご褒美」ではなく、「老後の生活を最後まで支えるための資源」と捉え直すことが大切です。その上で、冷静に使い道の計画を立てましょう。
「金なし老後」に陥る罠2:孫への際限ない出費
可愛いお孫さんのためなら、財布の紐も緩みがちです。「喜ぶ顔が見たい」という一心で、入学祝いや教育資金、高額なおもちゃなどを買い与えてしまうことはありませんか?
「可愛いから」という感情的な出費には歯止めが効きにくいものです。自分の老後資金の限度額を超えて援助を続けてしまうと、いつしか自分の生活費が不足してしまいます。さらに恐ろしいのは、子ども世代が「親が出してくれるのが当たり前」と期待するようになり、援助を止められなくなることです。
●罠を回避するための対策は?
ご自身の老後生活を守るための資金を最優先で確保し、残った余裕資金の範囲内だけを「子・孫への援助予算」と決めましょう。また、お金や物を渡すことだけが愛情ではありません。資金援助ではなく、「孫と一緒に公園で遊ぶ時間」や「手作りの料理を振る舞う」など体験をプレゼントするなど、お金を使わない心の交流へシフトすることが、双方にとって幸せな関係を築くコツです。
「金なし老後」に陥る罠3:無計画な家のリフォーム
退職金が入ったタイミングで、「これからの老後に備えて」と家のリフォームを計画する方も多いでしょう。
その際、どこまでお金をかけるか線引きをしておかないと、「せっかくだからキッチンも」「壁紙も変えたい」など要望が増えてしまいます。結果として、最初の見積もりよりも大幅に費用が膨らみ、老後資金を圧迫してしまうケースがあります。
●罠を回避するための対策は?
リフォーム会社に相談する前に、「生活に支障が出る箇所の修繕(雨漏りや水回り)」と、「単なる見た目や好みのリフォーム(嗜好品)」を明確に分け、優先順位を決めましょう。 築年数が古い家は直したい場所が多いかもしれませんが、思いの外高額になることもあります。予算は「退職金があるから」と大きく構えるのではなく、あくまで「老後の生活費」を確保した上で、余力の範囲内で組むようにしてください。また、場合によっては自治体の補助金が活用できる場合もあるので、必ず事前に確認しましょう。
「金なし老後」に陥る罠4:定年後も続く「現役時代の固定費」
定年して収入が激減したにもかかわらず、支出の構造が現役時代のまま変わっていないパターンです。「毎月の固定費を見直すのは面倒くさい」と放置していませんか?
特に、子どもが独立して不要になった高額な生命保険(死亡保障)、ほとんど見ていない動画配信などのサブスクリプション、現役時代と同じ大容量の通信プランなどが、毎月自動的に家計を圧迫し続けているケースは非常に危険です。
●罠を回避するための対策は?
定年退職は、生活のサイズを適正化する絶好のチャンスです。このタイミングで固定費の「棚卸し」を最優先で行いましょう。例えば、生命保険は「高額な死亡保障」から「自分を守る医療」だけに減らす、スマホは格安SIMに変更する、使っていない定額サービスは解約するなど、徹底して見直します。固定費の削減は、毎月継続的な収入源を確保するのと同じくらいの経済効果があります。
冷静な計画性が虎の子の資産を守る
「金なし老後」という事態は、何か特別な大失敗によって引き起こされるわけではありません。その多くは、人生の節目におけるふとした「気の緩み」や、家計の見直しを「面倒くさい」と後回しにする感情から静かに始まります。
虎の子である退職金や老後資産を守り抜くために不可欠なのは、一時の感情的な衝動買いや、惰性で続く固定費を断ち切る「冷静な計画性」です。
まずは、退職金が入ってもすぐには手を付けず、一度立ち止まってみてください。そして、ご自身の老後資金計画を冷静に立て直しましょう。一呼吸置くことが、豊かで安心な老後を手に入れるための、何よりの備えとなるでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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