25/12/29
「60歳以降働く&繰り下げ」で、いくら年金が増やせるのか

リタイアが近づくと、気になってくる年金のこと。年金について、もっと早くに知っておけばよかったと後悔する方は多く、多くの方の老後生活の見通しに影響を与えています。
国民年金への保険料の支払いは原則として60歳で区切りを迎えますが、60歳以降も年金額を増やす方法はあります。
今回は60歳以降も再雇用や継続雇用を考えているなど、会社に勤務する方を対象に、60歳以降も年金額を増やす方法について解説します。
60歳以降も年金を増やす2つの方法
60歳以降も年金を増やす代表的な方法には、大きく以下の2つがあります。
(1) 60歳以降も厚生年金に加入し働き続ける
公的年金制度は2階建てです。1階建て部分の国民年金の保険料の支払いは原則として60歳まで。つまり、60歳以降は年金額を増やせないのが基本となっています。一方、2階建て部分の厚生年金保険は別です。原則として70歳まで加入することができるため、60歳以降も厚生年金に加入して働くことができれば、保険料を納めることとなります。
公的年金制度は、どちらも支払った保険料の記録に応じて将来の年金額が決まるしくみです。60歳以降も厚生年金保険に加入し、働くことによって、将来厚生年金から受け取る年金額を増やすことができます。
増やせる年金額は、厚生年金保険に加入した期間とお給料の額によって変わります。1年間厚生年金保険に加入した場合に増える月給別の年金額の目安は以下の表を参考にしてください。
<1年で増やせる年金額の目安>

筆者作成
お給料をもらいながら年金を受けとる場合は、制度上「在職老齢年金制度」の対象となり、給与額と年金額の合計額が一定の金額を超えると、厚生年金からの年金の一部または全部がカットされるケースがある点には注意が必要です。
要するに、働き続ければその分だけ年金額が底上げされる可能性がありますが、お給料と年金をダブルで受け取るときにはバランスに注意が必要、ということです。
年金額がカットされる2025年度(令和7年度)のボーダーラインは51万円です。必ずしも全員が対象となるわけではありませんが、自分は在職老齢年金制度の対象となりそうなのか、事前に確認しておきましょう。
●(2)「繰り下げ受給」で年金を増やす
公的年金を老後に受け取る場合、受け取り時期は65歳からが基本です。しかし、請求手続きの時期をずらすことによって、年金の受け取りを早めたり、遅らせたりすることができます。
年金の受け取りを遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。繰り下げ期間は月単位で設定でき、1カ月遅らせるごとに受給額は 0.7%増加します。
繰り下げできる期間は最長75歳まで(※)。以下のとおり、遅らせた期間に応じて、増額された年金を受け取ることができます。
※1952年(昭和27年)4月1日以前生まれの方、または2017年(平成29年)3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方は、繰り下げの上限年齢が70歳まで。
<繰り下げ増額早見表>

日本年金機構の資料より
例えば、70歳0カ月まで繰り下げた場合の増額率は42%です。年金額が月15万円の場合、月21.3万円になる計算です。
なお、年金は1階建て部分の基礎年金と2階建て部分の厚生年金の2種類ありますがどちらも増額対象となります。また、どちらか一方のみ繰り下げすることも可能です。
ただし、繰り下げ請求による増額計算の対象となるのは、原則として65歳までにつみあげた年金のみです。65歳以降に厚生年金に加入し、増えた年金があっても、その部分は増額できません。 くわえて、65歳以降に「在職老齢年金制度」の対象となり、支給停止となっていた部分の年金も繰り下げの対象外となります。
「いつまで働くか」と「いつからもらうか」をセットで考える
60歳以降も厚生年金に加入して働き続けること、そして老齢年金の受給開始を繰り下げること。この2つを組み合わせれば、公的年金は60歳を超えてからでも増やせます。
一方で、制度上の注意点もあり、「とにかく長く働けばよい」「できるだけ遅くもらえばよい」という単純な話でもありません。
リタイアは大きな転機です。「なんとなく」ではなく、「自分はどんな60代・70代を送りたいのか」という視点から、働き方と年金の受け取り方をセットで考えてみてください。そうすることで、より安心感のある老後につながりやすくなることと思います。
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内田英子 CFP,消費生活アドバイザー,住宅ローンアドバイザー
愛媛県在住。証券会社・保険ショップ勤務、専業主婦を経てひとり起業。現在、FPオフィスツクル(愛媛県松山市)代表。教育費から保険、住宅、資産形成、キャリア、相続まで幅広い視点で家計を診る家計の総合医として、ライフプランシミュレーションを駆使したファイナンシャルプランニングが強み。自治体や学校、団体・企業における金融教育講座も行う。
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