19/08/08
学生時代の年金保険料を払わなかったら、年金は年間数万円以上減る!
「大学生は収入がないんだから、国民年金の保険料は自動的に免除されている」と思っていませんか?
それは大きな勘違いです。大学生であっても20歳以上であれば国民年金の保険料を納付する義務があります。
その大きな勘違いが、将来の年金額にどんな影響を与えるかを計算してみましょう。また、「払ってなかった!」という場合の救済措置である「学生納付特例制度」をご紹介します。
学生でも国民年金の保険料を納付しないといけない
国民年金法では、「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者」は、国民年金の被保険者になるとしています。つまり強制的に加入することになっていて、職業や収入額に関係なく保険料の支払い義務が生じます。ですから、大学生であっても20歳を迎えた月分から、国民年金保険料1万6410円(1カ月)(平成31年度保険料額)を納めないといけないのです。
例えば、1999年8月10日生まれの人なら、学生であっても、2019年8月分から国民年金保険料を納めなさいという通知が届きます。
保険料を納めなかったら将来の老齢年金はどれだけ違うか
その通知を、「大学生は国民年金保険料を払わなくていい」と勘違いして無視した場合、保険料を納めなければならないのに納めていないこと(未納)となり、将来65歳から受け取る老齢基礎年金の額は、満額からその納めていない月数分減ってしまいます。
以下に具体的な金額を示しましょう。
●保険料をすべて支払った場合
65歳から受給できる老齢基礎年金の年額は、単純に20歳~60歳の40年間480カ月の間に納めた保険料の月数で決まります。
計算式は、年金を受け取る年の老齢基礎年金の満額に納付月数をかけます。学生の間の国民年金保険料もしっかり納めていた場合、平成31年度の老齢基礎年金の満額は、78万100円なので、
78万100円×480カ月/480カ月=78万100円となり、年間約78万円の老齢基礎年金を受け取ることができます。
●20歳から22歳になった3月の大学卒業まで保険料を払っていない場合
浪人せずに大学入学した8月生まれの人が、22歳の4月に就職して厚生年金に加入し続け60歳を迎えました。しかし大学生の間の国民年金保険料を納めなかったら、65歳からの老齢基礎年金額はいくらになるのでしょうか。
平成31年度満額78万100円で考えると次のようになります。
78万100円×(480カ月-32カ月)/480カ月≒72万8000円となって、満額と比較すると年間で約5万2000円少なくなります。
●2年間浪人して大学に入学し、24歳の4月から働いた場合
同じく8月生まれの人が、2年浪人して大学に入学し、20歳から24歳で卒業する3月までの国民年金保険料を納付しなかった場合は、
78万100円×(480カ月-56カ月)/480カ月≒68万9100円となり、年間9万1000円も減ってしまいます。
この人が90歳まで生きたとすると、9万1000円が25年間もらえないのですから、満額受給していた場合より合計で約227万円も少なくなってしまうことになります。
収入がある程度見込める間の年間9万円は、それほど大きくない金額かもしれませんが、全く労働収入がなくなって、年金だけが頼りとなってからの年間9万円は暮らしに大きな影響を与えます。
未納保険料は、2年しか遡って納付できないので、収入が安定したからと30歳になってから未納分を納付したいと思っても、それはできません。
学生納付特例制度の申請を忘れずに!
収入が全くない大学生に、月1万6000円以上(平成31年度の国民年金保険料は1万6410円)の保険料が払えるわけがないと思いますよね。そのために、救済措置として「学生納付特例制度」があります。
学生納付特例制度の対象となるのは、以下の要件を満たしている場合です。
・大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校などに在籍していること
・前年所得の目安が、118万円+扶養親族等の数×38万円以下であること
つまり独身で、アルバイト収入しかないなら、年収183万円以下(平成31年度の場合)の大学生などはこの特例を申請することができて、承認されるとその間は保険料を納める必要がなくなります。その上、10年以内であれば国民年金保険料を遅れて納付(追納)することができるので、30歳までに過去の分を納付すれば、将来の老齢基礎年金を満額にすることが可能です。
日本年金機構「学生納付特例制度のポイント」(令和元年度版)より
まとめ
大学生のときは将来の年金のことなど全く考えもしていなくて、今の暮らしが精いっぱいなのはよくわかります。でも50歳以降の方の相談を受けていると、大学生のときに支払っていなかった国民年金保険料を、何とか今から払える方法はないかと相談をされる人が多くいらっしゃいますが、それはありません。
老齢基礎年金の魅力は「一生涯、死ぬまで受け取るができる」という安心感です。その安心を、若い時代の勘違いから失うことがないようにしてほしいと願っています。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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