25/06/03
2025年度の「住民税決定通知書」は絶対確認、見るべきところはココ!

毎年5月〜6月ごろに「住民税決定通知書」が手元に届きます。住民税決定通知書は、納める住民税の金額を知らせる書類なのですが、きちんと見ていますか?住民税の金額をチェックするだけで終わりにしていませんか?
住民税決定通知書に誤りがあると、税金が正しく減っていない可能性があります。今回は、住民税決定通知書のチェックポイントを3つ、ご紹介します。
そもそも住民税とは?
住民税は、市町村民税と道府県民税の2つを合わせた税金です。東京23区では特別区民税・都民税と呼ばれています。個人の場合、毎年1月1日時点で住所のある市区町村に両方まとめて支払います。納めたお金は、福祉や公共設備などの行政サービスに充てられます。
住民税には、所得割と均等割の2種類があります。
所得割は、前年1年間の所得に応じて金額が計算される税金です。所得割の税率は市町村民税と道府県民税の2つを合わせて一律10%です。つまり、所得が多ければ金額も多くなります。
均等割は、一定以上の所得がある人全員が同じ金額を負担する税金です。均等割は
・市町村民税(特別区民税):年3,000円
・道府県民税(都民税):年1,000円
・森林環境税:年1,000円
を住民税均等割と合わせて支払うので、合計5,000円です。
なお、自治体によってはこれに加算した税金を徴収している場合もあります。
住民税の金額がわかる住民税決定通知書の見方
納める住民税の金額を知らせてくれる書類が住民税決定通知書です。住民税は6月〜翌年5月が年度となっているため、住民税決定通知書も6月ごろに届きます。
<住民税決定通知書>

(株)Money&You作成
住民税決定通知書は横長で、実際には矢印のところでつながっています。
大まかにいうと
①所得欄…給与収入と給与所得
②所得控除欄…給与所得から差し引く「所得控除」の金額
③税額欄…税額を直接差し引く「税額控除」と、税額控除適用後の税額
が記載されています。
会社員や公務員の場合、住民税決定通知書は勤め先からもらいます。住民税は「特別徴収」といって、毎月の給与から天引きされます。
住民税決定通知書のチェックポイント
住民税決定通知書が届いたら、次の3つのポイントをチェックしましょう。
<住民税決定通知書のチェックポイント>

(株)Money&You作成
①所得欄
給与収入は年収のこと。給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いた、残りの金額です。また、給与所得以外の所得がある場合には「その他の所得計」にその合計が記載されます。
会社員・公務員であれば、住民税決定通知書の所得欄と前年に勤め先からもらえる「給与所得の源泉徴収票」と見比べます。フリーランスや個人事業主などの場合は所得欄と確定申告で申告した所得額を見比べます。ともに、金額が同じになっているかを確認しましょう。
特に、会社員や公務員などで転職をした方や、2か所以上で働いて給与をもらった方は、金額の合計が正しく反映されているかを確認してください。
②所得控除欄
所得控除は、個人の事情に配慮して、税金の計算の元になる課税所得を減らせるしくみです。
所得控除には社会保険料控除、医療費控除、配偶者控除、扶養控除など、さまざまな控除が用意されています。そして、控除できる条件や控除できる金額に違いがあります。給与所得からこれらの控除を引いた金額が、課税所得となります。
年末調整や確定申告でこれらの控除を申告していれば、「所得控除」のそれぞれの欄に控除される金額が記載されているはずです。所得控除の金額が間違っていたり、記載されていなかったりすると、所得控除が少なくなり、税金が増える原因になりかねません。所得控除が記載されているか、金額が正しいかを確認しましょう。
③税額欄
税額欄には、市町村民税と道府県民税、それぞれに税額控除前所得割額、税額控除額、所得割額、均等割額が記載されています。
税額控除前所得割額には、②で求めた課税所得に税率をかけた金額がそれぞれ記載されています。税率は基本的に、市町村民税・特別区民税が6%、道府県民税・都民税が4%です(政令指定都市は市民税8%、道府県民税2%)。
所得割の額は、税額控除前所得割額から税額控除額を引いた金額(100円未満切り捨て)になります。ふるさと納税をした場合や、住宅ローン控除がある場合などは、この税額控除前所得割額からさらに税金を差し引く税額控除ができます。申告した金額が反映されているか、確認してください。控除された金額は、「税額控除額」の欄に記載されます。
●ふるさと納税・住宅ローン控除があるなら「摘要」も確認
ふるさと納税・住宅ローン控除を利用しているならば、②所得控除の欄の下にある(摘要)の欄も確認しましょう。
ふるさと納税をしていると、(摘要)の欄に「寄附金税額控除」が記載されます。
ワンストップ特例制度を利用した場合、控除額がすべて住民税から差し引かれます。したがって、記載されている市民税と県民税の合計額が「寄付金額−2000円」になっていれば、ふるさと納税の手続きが正しく行われていることになります。
確定申告を利用した場合は、住民税と所得税からそれぞれ控除されます。市民税・県民税の合計金額と、寄附金控除で控除された所得税を合計した金額が「寄付金額−2000円」になっていれば、ふるさと納税の手続きが正しく行われていることになります。
寄附金控除で控除された所得税の計算は複雑なので、税務署などに確認しましょう。
また、住宅ローン控除では原則として所得税が控除されますが、所得税から控除しきれなかった分は、住民税からも控除されます(前年度の課税所得×5%(最高9万7500円)まで)。
住宅ローン控除によって住民税が控除される場合は(摘要)の欄に「住宅借入金等特別控除 市民税◯円・県民税◯円」などと控除される金額が書かれているので、合わせて確認しましょう。
住民税を減らすには?
住民税は行政サービスの費用をまかなう大切な税金ではありますが、できれば支払いを減らしたいところです。そこで、住民税が決まるまでを見てみましょう。
<住民税が決まるまで>

(株)Money&You作成
住民税のうち、所得割を計算するもととなる「課税所得」を算出するときには、給与収入から給与所得控除と所得控除を差し引きます。また、税額控除といって、税額を直接差し引ける控除もあります。
このうち、給与所得控除は給与の額によって自動的に決まってしまいますが、所得控除や税額控除は、場合によっては増やせるかもしれません。
所得控除では、年末調整や確定申告で申告していないものがあれば忘れずに申告するようにしましょう。とくに医療費控除や生命保険料控除など、提出を忘れているものがあれば、もれなく提出しましょう。
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用すると、老後のために積み立てたお金(掛金)をすべて「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除できます。掛金は60歳まで原則引き出せませんが、自分の将来のお金を貯めながら住民税が減らせます。
税額控除では、ふるさと納税が使えます。ふるさと納税をすると、納税(厳密には寄附)した金額から2,000円を引いた金額を税金からダイレクトに差し引くことができます。そのうえ、ふるさと納税をした自治体からお礼の品(返礼品)がもらえます。
また、これらの控除の手続きを知らずに、取り戻せるはずの税金を取り戻してなかった場合、年末調整や確定申告の期間が過ぎていても、5年以内であれば、「還付申告」の手続きで払いすぎた税金を取り戻せます。
還付申告の手続きは、「所得税の更正の請求書」という書類に必要事項を記入し、該当年の証明書を添えて税務署に提出することでできます。
手続きが複雑なので、手続きをしていなかったならば、各種証明書を持ってお近くの税務署に相談してみましょう。手続きの仕方を具体的に教えてくれます。
これまで「住民税決定通知書をよく見てこなかった」という方も、今年こそはぜひよく見て、税額に間違いがないかを確認してください。また、還付申告できるものがあれば、今からでも税金が取り戻せますので、ぜひチェックしてみてください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍100冊、累計180万部超。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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