24/05/13
「住民税非課税世帯」がもらえるお金は予想以上に多い

住民税非課税世帯とは、世帯内に住民税を課税されている人が一人もいない世帯のことをいいます。国や自治体が行う住民税非課税世帯への給付金や支援制度は意外と多くあることはご存知でしょうか。今回は、住民税非課税世帯がもらえる給付金や支援制度を9つ紹介します。
住民税非課税世帯がもらえるお金1:児童扶養手当
児童扶養手当は、父母が離婚したり、死亡したり、一定以上の障害を持っていたりする場合に、ひとり親世帯で子どもを育てる家庭に対して支給される手当です。対象になるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子ども(障害児の場合は20歳未満)です。手当がもらえるのは、子どもを世話する父母または祖父母等です。
児童扶養手当の支給額は児童の数によって異なり、年に6回(1月、3月、5月、7月、9月、11月)支給されます。
児童扶養手当の支給額(2024年度)は、以下のとおりです。
《子ども1人あたりの月額》
・全部支給:4万5500円
・一部支給:1万740円~4万5490円
《子ども2人目からの加算額》
・全部支給:1万750円
・一部支給:5380円~1万740円
《子ども3人目からの加算額》
・全部支給:6450円
・一部支給:3230円~6440円
また、児童扶養手当の支給に該当する世帯かどうかは、前年の所得にもとづき算定されます。
●児童扶養手当の所得制限限度額(収入ベース)
・全部支給(2人世帯):160万円
・一部支給(2人世帯):365万円
収入の目安が「全部支給の所得制限限度額」より少ない場合は全部支給に該当します。また、全部支給の所得制限限度額よりは多くても「一部支給の所得制限限度額」より少ない場合には、一部支給に該当します。
なお、児童扶養手当を受給するには、自治体の窓口での申請が必要です。請求理由ごとに書類などが異なるので、詳しくは窓口に確認しましょう。
住民税非課税世帯がもらえるお金2:0~2歳児の保育料無償化
幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳までの全ての子供たちの利用料が無償化されます。
さらに、子供が2人以上の世帯の負担軽減の観点から、保育所等を利用する最年長の子供を第1子とカウントして、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無償となります。
ただし、年収360万円未満相当世帯については、第1子の年齢は問いません。また、年収360万円未満相当世帯の子供たちと全ての世帯の第3子以降の子供たちについては、施設利用料以外に、副食(おかず・おやつ等)の費用が免除されます。
対象となる施設は、幼稚園、保育所、認定こども園に加え、地域型保育、企業主導
型保育事業(標準的な利用料)です。このほか、認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業も対象になります。
保育料無償化の申請は、原則、通っている幼稚園を経由して、お住まいの市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。
住民税非課税世帯がもらえるお金3:児童手当
児童手当は、子どもを養育している保護者に対して支払われる給付金。子どもが中学校を卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日)するまでもらえます。
2024年10月分(2024年12月支給分)から児童手当の制度が拡充されます。拡充前と後では、次のように変わります。
<児童手当はどう変わる?>

筆者作成
赤字にしたところが主な変更点です。
これまで、児童手当の対象となる子は中学校を卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日)までの子でしたが、拡充後は高校を卒業(18歳の誕生日後の最初の3月31日)までになります。また、第3子以降の金額も拡充後は増加。0歳から高校生まで月3万円になります。所得制限もなくなるため、児童手当が少なかった(もらえなかった)人ももらえるようになります。
ただし、「第3子以降」のカウントの仕方は「18歳(22歳)年度末までの子のうち、3番目以降」です。たとえば第1子が成長して22歳年度末を迎えると、第3子は児童手当の計算上は「第2子」になるため、児童手当が月3万円でなくなります。
住民税非課税世帯がもらえるお金4:就学援助
就学援助とは、生活保護を受けている人、または市町村教育委員会が生活保護法第6条第2項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮していると認める人が育てる子どもの学費等の一部を援助する制度です。
修学補助の支給の対象になる学費は、学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費等、通学用品費、オンライン学習通信費など、多岐にわたります。
就学援助の認定基準や援助費目などは、各市町村で異なります。詳細はお住まいの市町村にお問い合わせください。
住民税非課税世帯がもらえるお金5:高等学校等就学支援金
高校へ進学すると、高等学校等就学支援金がもらえます。高等学校等就学支援金は、国が高校などの授業料を支援してくれる制度です。支給される年額は、通う高校が公立か私立かで違いがあり、以下のとおりです。
・公立高校:11万8800円
・私立高校:39万6000円
<高等学校等就学支援金の支給額のイメージ>

文部科学省の資料より
なお、高等学校等就学支援金は返還する必要がありません。
●高等学校等就学支援金の対象となる人
高等学校等就学支援金には所得制限があります。上の図は両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安で、年収が590万円以下であれば最大39万6000円、910万円以下であれば11万8800円となることを示しています。
支援の対象になる世帯の年収目安は、次のとおりです。住民税非課税世帯であれば、最大の39万6000円が受け取れます。
<支援の対象になる世帯の年収目安>

住民税非課税世帯がもらえるお金6:給付型奨学金と授業料の免除
奨学金は、経済的理由で進学を諦めることのないように、学費などを支援する制度。一定の基準を満たした大学や専門学校へ通う場合に利用できます。たとえば、日本学生支援機構が行う奨学金の制度には、返済義務のない給付型の奨学金や、返済義務のある貸与型の奨学金(第一種は無利子、第二種は利子がつく)があります。
このうち、給付型の奨学金には、現金で支払われる奨学金と、授業料が減免される2つの制度があり、両方を同時に受けることもできます。支援を受けられる金額は世帯年収や家族構成により異なります。
給付奨学金の家計基準については、申込者本人と生計維持者が、以下の「収入基準」及び「資産基準」のいずれにも該当する必要があります。
生計維持者となるのは、父母がいれば原則として父母(2名)です。収入については、直近前年度分の住民税情報により算出された支給額算定基準額が以下に該当するかどうかが判断の対象となります。
<給付型奨学金の収入基準>

日本学生支援機構のウェブサイトより
市町村民税所得割が非課税の人は、この計算式にかかわらず、支給額算定基準額が0円となります。ただし、ふるさと納税、住宅ローン控除等の税額控除の適用を受けて住民税非課税となる場合は対象から外れます。
給付奨学生になった時点から卒業まで、世帯の所得金額に基づく区分に応じ、一定額が毎月振り込まれます。実際にどれだけ奨学金が支給されるかは、独立行政法人日本学生支援機構の「給付奨学金シミュレーション」で調べることができます。
申し込み・受給にあたっては、学校の成績が一定以上であることに加えて、面接やレポートなどによる審査なども行われます。年収の要件だけでなく、本人の「勉強しよう」という意思なども条件となります。
住民税非課税世帯がもらえるお金7:高額療養費制度
高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定の金額を超えたとき、その超えた分が支給される制度です。70歳未満の場合、5つの所得区分があり、それぞれ自己負担額の上限が異なります。また、直近1年間で3回以上(3か月以上)高額療養費の支給を受けている場合、4回目(4か月目)からは「多数回該当」となり、自己負担限度額がさらに減額されます。
<高額療養費制度の自己負担額(70歳未満)>

厚生労働省の資料より
住民税非課税者の場合、1か月の医療費の自己負担限度額は3万5400円になります。実際に、1か月の医療費が100万円かかった場合でも、高額療養費制度があるおかげで、医療費の最終的な負担は「3万5400円」だけとなります。
住民税非課税世帯がもらえるお金8:国民健康保険料・介護保険料の軽減
各自治体では、住民税非課税世帯の国民健康保険料や介護保険料の減免制度があります。
国民健康保険料や介護保険料を計算するときは、一定よりも低い所得の世帯については、本来支払うはずの保険料の7割、5割又は2割を減額されます。
対象となる所得基準は、次のとおりです。
●3人家族(夫婦40歳・子1人)収入を得ているのが夫のみのケース
・減額割合7割:所得43万円以下(年収98万円以下)
・減額割合5割:所得43万円+(被保険者数)×29万円以下(年収197万円以下)
・減額割合3割:所得43万円+(被保険者数)×53.5万円以下(年収302万円以下)
国民健康保険料などの算定方法は、各自治体の条例(国民健康保険組合の場合は規約)で定められています。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口にてご確認ください。
住民税非課税世帯がもらえるお金9:定額減税に関する7万円の給付金
過去2年の税収増を国民に還元するため、住民税非課税世帯には、すでに3万円が給付されていますが、それに加えてさらに7万円が支給されます。
また、所得税非課税で、住民税の「均等割」を支払っている低所得者世帯については、10万円が支給されることになっています。さらに、どちらも18歳以下の子どもがいる世帯には、追加で子ども1人あたり5万円が給付されます。
申請は、お住いの自治体から給付金の「申請書」が届いた世帯が手続きを行います。オンラインでの手続きも可能です。
住民税非課税世帯に対する7万円の給付金の手続きは既に締め切られている自治体が多いですが、「住民税の均等割を支払う世帯等」の申請、「18歳以下の子どもがいる世帯」への給付金への申請は、5~6月までに手続きが必要という自治体が多くあります。
お住まいの市区町村から発表される情報、書類などに注意しましょう。
もらえるお金はモレなく手続きを
住民税非課税世帯への給付金や支援制度は、子育て世帯を対象にしたものが充実しています。申請については、行政から案内のあるものもあれば、自己申告が必要なものもあります。詳しくは自治体の窓口や、ホームページなどで確認しましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー

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