23/07/16
定年後「給与減」でも働き続けた方がいい5つの理由
老後の過ごし方の選択肢の一つとして、働き続ける人が増えています。長い間働いてきたのに、これからも働き続けるのか…と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、長生きが当たり前になってきた今、働くことで得られるメリットも見逃せません。
今回は、定年後たとえ給与が減ったとしても、働き続けた方がいい5つの理由を考えてみましょう。
定年後働き続けた方がいい理由1:健康が保てる
老後を健康に過ごすためには、食事、運動、睡眠のほか生活習慣がポイントになります。そして、定年後も健康で長生きしている人の特徴として、仕事や趣味を持って意欲的に活動していることがあげられます。定年後も急激に活動量を落とさず、定年を通過点とか、新しいスタート地点ととらえています。
仕事をしていた人が「定年を迎えたから働かないでいい」と、定年を人生のゴールのように考えてしまうと、毎日何をして過ごしたらいいのか戸惑い、一日の大半をテレビのお守りで過ごす人もいます。コロナ禍で活力がなくなったうえに、活動量が急激に減ることによって60歳を超えるとうつが急増するそうです。
定年を迎え、いつ起きても、いつ寝てもいい状況になると、規則正しい生活を送ることはかなり難しくなります。動かないことで血流が悪くなり、意欲が減退し、無気力な状態で何もしたくなくなるという悪循環に陥り、老化の進行を早めることにつながります。
しかし、定年後も仕事を続ければ、メリハリのある規則正しい生活を送ることができます。日中、体を動かすことによって、意欲がわいてきて、健康に過ごすことができます。働き続けようという意欲があれば、健康寿命を延ばすこともできるでしょう。
定年後働き続けた方がいい理由2:年金以外の収入が得られる
老後の不安で多いのは、病気やケガ、お金の問題です。生命保険文化センター「生活保障に関する調査2022年度」によると、「老後の生活に不安を感じる」と回答した人は8割以上もいました。特に長生きをする女性は、男性より不安に感じる人が多く、男性より6.6ポイント上回った85.1%の人が不安感を抱いています。
老後生活に対する不安(複数回答)のトップは「公的年金だけでは不十分」(79.4%)、続いて「日常生活に支障が出る」(57.3%)となっています。
●老後生活に対する不安の内容
生命保険文化センター「生活保障に関する調査2022年度」より
2019年に「老後資金2000万円」が話題になり、長生きすればするほど老後資金が必要となる現実を突きつけられました。この報告書のもとになるデータは、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)を基礎にしています。老後資金の状況は、会社員と自営業やフリーランスの場合では大きく異なります。自分がもらえる年金額や日々の生活費を知らないまま、メディアにあおられて不安を感じて誤解をしている人も多いようです。
たとえば、実際の数字を把握してみると、それほど大きな金額が必要ないことや、足りない分を定年後働いて補えばどうにかなりそうということに気づくかもしれません。定年後も長く働くことで年金以外に収入があれば、不安感は小さくできるのではないでしょうか。収入があることで、経済的にも精神的にもゆとりがある生活を送ることができ、安心度が増します。
定年後働き続けた方がいい理由3:年金が増やせる
定年後も会社員などで働き続けることができれば、厚生年金を増やすことができます。厚生年金には、定年後も働くことで70歳まで加入できます。老後の厚生年金の金額は、厚生年金に加入していた間の平均月額収入と加入月数に応じて計算されるしくみになっています。ですから、長く働けばそれだけもらえる年金額は多くなります。これは老齢厚生年金だけではなく、遺族厚生年金も増えます。
2022年の改正では、「在職定時改定」が導入されました。改正前は、65歳以降に厚生年金に加入して働いても、退職するか、70歳を迎えるまでは、年金の再計算はされませんでした。しかし、在職定時改定の導入により、65歳以降も厚生年金に加入して働くと、在職中でも70歳まで毎年年金額が再計算され、毎年の年金額が増えることになりました。
さらに65歳で年金をもらわず、遅くもらう「繰り下げ受給」をすれば、年金額の割増があります。年金は1か月単位で繰り下げることができ、1か月繰り下げると0.7%金額が増えます。したがって、70歳でもらえば42%、75歳でもらえば84%金額が増額されます。
繰り下げ受給は、国民年金と厚生年金とは別々に請求できますし、一度請求すれば、増額した年金を生涯もらえるので、効果は絶大です。定年後も働き続ければ給料ももらえますし、年金の繰り下げ受給を選びやすくなるのもメリットです。
この他にも年金の改正により、確定拠出年金に加入できる年齢が引き上げられました。企業型の確定拠出年金は70歳未満まで、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は65歳未満までになり、運用期間が長くなるため、私的年金が増やせるチャンスが拡大されました。iDeCoの掛金は、全額所得控除ができるため、節税のメリットも延長されることになります。
ただし、60歳以降もiDeCoに加入して掛金を出すことができるのは、厚生年金に加入している場合か、国民年金に任意加入している場合に限られるため、この恩恵を受けることができません。
定年後働き続けた方がいい理由4:社会保険料の負担を少なくできる
60歳を超えても、健康保険料や介護保険料といった負担は、仕事をしているかどうかに関わらず発生します。特に国民健康保険料は、家族の人数に応じて保険料が高くなるしくみです。定年を迎えて仕事を辞めて、社会保険から国民健康保険に変わると保険料が高いと感じる方が多いようです。
一方、会社で加入する社会保険は、収入額に応じて保険料が決まります。家族の人数が何人であっても保険料は変わりません。社会保険がある会社等で働くことができれば、保険料は労使折半になるので保険料の負担は半分になり、社会保険料の負担を軽くすることができます。健康保険料の負担以外にも、定期健診や健康保険組合の優遇された制度が適用されます。
また、国民年金保険料は60歳まで納めなくてはなりません。たとえば、夫に扶養されている60歳未満の配偶者の妻がいれば、夫が仕事を辞めたとたん国民年金の第1号被保険者となり、保険料を自分で納めなければなりません(夫と妻が反対でも同様です)。収入がない状態で、今まで納めていなかった年金保険料を納める負担は、感情的にも経済的にも大きいでしょう。しかし、定年後に夫が厚生年金を納めて働く場合には、専業主婦の妻の国民年金保険料は納める必要がなくなります。ただし、会社員として働いていても、65歳以上の会社員に扶養されている60歳未満の配偶者の場合には、第1号被保険者となるので注意しましょう。
定年後働き続けた方がいい理由5:生きがいが持てる
老後を元気に過ごすためには、「キョウイク」と「キョウヨウ」が大事だといわれます。これは、教育と教養なのかと思いきや、「今日行くところ」と「今日の用事」のことだそうです。
仕事をしていれば、特別な努力をしなくても毎日の用事ができますし、人と触れ合う機会が持てます。定年後、毎日が日曜日になると、必ず今日しなければならないことが減り、メリハリのある生活を送ることがむずかしくなります。居場所が会社だけだった人は、退職したことによって人とのつながりがなくなり、孤立した状態になる人もいます。
しかし、仕事を続けていれば、決まった日や時間に「今日行くところ」や「今日の用事」という予定が生じます。仕事をして世の中や人とつながりを持つことで得られる充足感があり、生きがいを感じることができるでしょう。自分らしく老後を過ごすためには、仕事でも趣味でもボランティア活動でもよいので、やりたいことを見つけ、生きがいを持つことが大事です。
まとめ
老後といっても毎日が忙しく、具体的なイメージがわかないという方もおられるでしょう。定年後は、気力・体力もあり、自分のために時間を使える最後のチャンスです。そのときに笑顔で過ごせるかどうかは、準備の程度によって変わってきます。準備不足で後悔するようでは、自分の理想的な第2の人生を築くことはできません。定年後も働き続けるには、意欲だけではなく、健康とそれなりのスキルを身につけておくなどの準備も大事になります。そのためには定年間際ではなく、40~50代はじめの早い時期から取り掛かるとよいでしょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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