23/06/17
6月に届いた「年金振込通知書」確認しないとヤバイ!
老後の暮らしのベースになる公的年金。公的年金を受け取るようになると、6月に「年金振込通知書」が届きます。「年金は公的なものだから年金振込通知書に間違いはないだろう」とチェックもせず、いつの間にかどこかにいってしまった…、ということは避けたいものです。というのも、年金振込通知書には大切な情報が書いてあり、年金額が少ないのでは?ということにもすぐに気が付けるからです。
今回は、年金振込通知書に書いてあること、そして年金額が少ないと思った時の対処についてお伝えします。
年金振込通知書に書いてあること
年金振込通知書は、年金を口座振り込みで受け取っている人に、日本年金機構から送られてくる書類です。年金振込通知書には、その年度に受け取る年金額などが書かれています。文字通り、「年金を振込みます」というお知らせです。
なぜ6月に届くかというと、新年度4月からの年金が、最初に振り込まれる日が6月15日だからです。通知書と振込金額の確認を、忘れにくいタイミングと言えるでしょう。
●年金振込通知書
日本年金機構の資料より
年金は2カ月まとめて後払い。年度はじめの4月と5月の年金は6月に振り込まれます。年金の振込日を迎えたら、通帳記入、またはインターネットで取引履歴を確認すると確実です。
年金振込通知書が届いたら、記載されている内容を確認しましょう。具体的には、次のようなことが記載されています。
●振込先
年金が振り込まれる金融機関名や支店名が書かれています。
年金が振り込まれない!と思ったら、見ている口座が違っていた、という笑い話のようなことも実際にあります。年金の振込先の確認は、基本中の基本。しっかり見ておきましょう。
年金の振込先の口座変更もできますが、手続きが終わったと思っても、変更後の口座への振込が確認できるまではそれまでの口座を解約しないようにしましょう。
●年金支払額
振込1回あたりの年金支給額、つまり2カ月分の年金支払額です。年金支払額は税金などが差し引かれる前の金額です。給与明細の額面金額のようなものですね。
●介護保険料額
65歳以上の人は、年金から介護保険料が差し引かれます。要介護状態になっても、介護保険料は払わなくてはなりません。介護保険は、介護が必要になっても安心して暮らすために大切な制度です。きちんと払っていきましょう。
●所得税額および復興特別所得税額・個人住民税額
年金からは、所得税や住民税も差し引かれます。本当に、給与明細とそっくりですね。
実際、年金振込通知書は給与明細のように収入を証明することもできる書類です。ローンを組んだり、賃貸住宅を契約したりする時に求められることもあるので、なくさないように気を付けてください。
●控除後振込額
控除後振込額には、社会保険料や税金が差し引かれたあとの振込金額が書かれています。
残高照会などで、だいたいそのくらいの金額が増えているから大丈夫だろう、という思い込みは禁物。取引明細の確認や、通帳記帳で確認するクセをつけておくといいですね。
年金額が少ないのでは?と思ったら
ここまで見てきて、「年金額が思ったより少ない」と思ったら、以下のことがあったのかもしれません。
●働いて、年金以外の収入があったのでは?
60歳以降働きながら受け取る老齢厚生年金を在職老齢年金といいます。在職老齢年金は、働いて得た収入と年金額の合計が48万円を超えた場合、年金額の調整があり、減額されたり停止されたりすることがあります。働くとかえって損、というわけではありませんが、収入の多い人は、年金額を少なくさせてもらうという制度です。在職老齢年金が適用されたことで、年金額が少なくなっている可能性があります。
●配偶者が65歳になったのでは?
老齢年金を受け取る人に生計を維持されている配偶者がいる場合、加給年金が上乗せされます。たとえば、元会社員の夫が老齢厚生年金を受け取っていて、夫に生計を維持されている妻がいると、夫の年金に加給年金がプラスされます。加給年金は年金の配偶者手当のようなものですが、妻が65歳になると受け取れなくなるため、年金額が少なくなる可能性があります。
●年金の繰り上げ受給をしたのでは?
老齢年金は65歳からの受け取りですが、60歳まで繰り上げることが可能です。ただし、金額は1カ月繰り上げるごとに0.4%減額になります(1962年4月1日以前生まれの人の減額率は0.5%)。年金の繰り上げ受給をすると、1回あたりの年金支払額は少なくなります。
●扶養親族申告書の提出を忘れたのでは?
差し引かれている所得税が多くて年金額が少ない場合は、扶養親族申告書を出し忘れたのかもしれません。扶養家族がいれば各種控除の適用があり、所得税も安くなります。もしも出し忘れていたら、確定申告をすれば控除の適用が受けられます。
●年金額が引き下げになったのでは?
年金額は、物価や現役世代の賃金の水準の動きにあわせて、毎年増減しています。
昨年の2022年度、国民年金は原則0.4%の引き下げ、減額となりました。国民年金を満額受け取っている人の場合、2021年度は月額6万5075円だった年金が、2022年度には6万4816円になっています。そんな年には振込金額が下がってしまいます。
しかし、2023年度は逆に年金額が増加して6万6250円です。こんなところも、しっかり確認しておきたいですね。
年金額の見直しは、物価と賃金の変動にあわせる
年金額は毎年見直され、新年度の年金支給額が決まります。
年金額は、68歳になる年度以後の人である「既裁定者」と、それより前の「新規裁定者」、それぞれに見直され方が異なります。
既裁定者は、それまでに受け取っていた年金額と実質的に大きな差が出ないよう、物価の変動による改定が行われます。これを、物価スライドと言います。
新規裁定者は、直近の賃金の状況を反映させるため、賃金の変動による改定を行います。これを、賃金スライドと言っています。
ただし、例外があります。
賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金がマイナスになる場合には、新規裁定者だけでなく既裁定者も年金額は賃金の変動による改定が行われます。
これは、年金制度をささえる現役世代の負担が大きくなり過ぎないようにするためのルールです。
さらに、現役世代の人口減少率を基本とした調整率が設定され、その分を賃金、物価の改定率から差し引く、マクロ経済スライドがあります。
マクロ経済スライドは、社会情勢に合わせて年金の給付水準を調整するため、公的年金全体の被保険者数の変動と平均余命の伸びをもとにして決まります。
2023年度の改定にあたっては、賃金、物価の変動は以下のとおりでした。
・名目手取り賃金変動率:+2.8%
・物価変動率:+2.5%
・マクロ経済スライドによる調整率:-0.3%
・前年度までのマクロ経済スライドの未調整分:-0.3%
既裁定者については、賃金変動率はが物価変動率を上回りましたので物価変動率で改定され、マクロ経済スライドを考慮して1.9%のプラスです。
新規裁定者は、賃金変動率で改定されますが、マクロ経済スライドが考慮され、2.2%のプラスです。
物価改定率は、前年の消費者物価指数の変動率、賃金改定率は、過去3年度の賃金変動率の平均が計算のもとです。
そのため、賃金改定率は現状よりも少し前の数字に影響されるので、体感とは若干差異があるのはやむを得ないところでしょう。
結果として、2023年度の老齢基礎年金は、既裁定者の満額が月額6万6050円と前年度から1234円増になりました(年額79万2600円)。また、新規裁定者は月額6万6250円と、前年度から1434円増です(年額79万5000円)。
年金額が変わると「年金額改定通知書」が届く
このようなことから、6月の通知書は、ほとんどの場合年金振込通知書と年金額改定通知書が一体化したものが届くと思われます。
●年金振込通知書と年金額改定通知書(一体となったもの)
日本年金機構の資料より
改定された金額になっているか、そのとおりの金額が振り込まれたか、しっかり確認しておきましょう。
年金額の改定があった人には、年金振込通知書と一体となっていない年金額改定通知書が届く場合もあります。
●年金額改定通知書
日本年金機構の資料より
「ねんきんネット」に登録しておくと、インターネットを利用していつでも年金額改定通知書、年金振込通知書の内容が確認できます。また、PDFファイルで保存・印刷も可能なので便利です。
2023年4月分からの年金額改定通知書、年金振込通知書の内容の確認は、2023年6月6日からできるようになっています。
また、5月分以降の年金が、在職中で支給停止となる方などは2023年5月9日から確認できます。
まとめ
年金振込通知書に記載されている主な内容をご紹介しました。年金振込通知書はほったらかし禁物です。自分の年金額が正しいか、必ず確認しましょう。
もしも、年金額に疑問点などがあるならば、最寄りの年金事務所や年金相談センターに問い合わせてみましょう。また、社会保険料・税金の金額に疑問があれば、下記の窓口に確認してみるといいでしょう。
・所得税・・・所轄の税務署
・住民税、介護保険料、国民健康保険・・・市区町村役場
・後期高齢者医療保険・・・都道府県の広域連合
年金額は、医療費・介護費の自己負担上限額とも関連します。
老後のくらしをささえる公的年金、しっかり理解して受け取りたいですね。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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