23/06/23
年金収入のみの場合、所得税がかからないのはいくらまで?
退職して年金収入で生活することになったら、所得税がどのくらいかかるのか、気になる人も多いのではないでしょうか。今回は収入が年金のみの場合に所得税がかかる水準を、使える控除や確定申告が必要な人も含めて紹介します。
年金収入で所得税がかかる水準は?
収入が公的年金のみの場合、所得税がかかる水準は年齢によって異なります。65歳未満は公的年金による所得が108万円以上、65歳以上であれば158万円以上です。所得がこれらの金額よりも少なければ、所得税はかかりません。気をつけたいポイントは、実際にもらった年金収入ではなく、さまざまな控除を引いた後の金額(所得)で考えるところです。
所得税の計算方法は?
なぜ一定の年金収入までは所得税がかからないのでしょうか。その理由は所得税の計算方法にあります。
所得税は、公的年金の収入から控除を差し引き、所得額に応じた税率をかけて算出します。まず、所得税の計算方法を確認していきましょう。
●収入が公的年金のみの場合の所得税の計算方法
1.公的年金の所得を計算する
公的年金の収入-公的年金等控除=公的年金の所得(A)
2.所得税の対象になる所得(課税所得)を計算する
公的年金の所得(A)-所得控除=課税所得(B)
3.所得税を計算する
課税所得(B)×所得税率
公的年金等控除は、65歳未満であれば60万円、65歳以上であれば110万円です。また、所得控除のうち、誰でも使えるものに基礎控除があります。基礎控除額は所得によって違いがありますが、所得金額が2,400万円までの人は48万円です。
【基礎控除の金額】
国税庁ウェブサイトより筆者作成
上記の計算式に公的年金等控除と基礎控除を当てはめて考えてみましょう。65歳未満の人は年金収入が108万円まで、65歳以上の人は158万円までであれば、(B)の課税所得がゼロになり、所得税がかからなくなります。
なお、以下の速算表を活用すると、年金収入が分かれば(A)の所得を簡単に計算することもできます。
【公的年金等にかかる雑所得の速算表】
※合計所得金額1,000万円以下の場合
国税庁「公的年金等の課税関係」より
所得から差し引ける金額は?
所得税の計算をする際に、所得から差し引ける金額を所得控除といいます。納税者の個人的な事情を加味する意味合いがあり、基礎控除以外にもさまざまな種類があります。自分が使える控除をあらかじめ確認しておくと、確定申告をする際も安心です。
なお、それぞれの控除には要件が細かく決められているものもあり、必要な書類も控除の種類によって異なります。詳細は国税庁のウェブサイトや最寄りの税務署などで確認することをおすすめします。
●所得から差し引かれる金額(所得控除)
国税庁ウェブサイトより筆者作成
確定申告が必要な人は?
収入が年金のみの場合、確定申告は必要なのでしょうか。年金受給者の確定申告を減らすために「確定申告不要制度」が設けられており、一定の要件を満たせば確定申告をする必要がありません。下記のどちらにも当てはまる人が対象です。
●確定申告不要制度
政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」より
【確定申告不要制度の要件】
1. 公的年金の収入の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる。
2. 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である。
上記の確定申告不要制度が利用できない場合は、確定申告をしなければなりません。自分の年金収入は、日本年金機構から送られてくる各種通知書や、公的年金の源泉徴収票で確認ができます。
なお、医療費控除や寄付金控除、生命保険料控除などの所得控除を使いたい人は、確定申告不要制度に当てはまる場合でも確定申告をする必要があります。
入院や通院などでまとまった医療費がかかり、受け取った保険金を差し引いても10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%)を超える場合や、ふるさと納税を利用して寄付した場合、支払った生命保険料がある場合などは、確定申告をしないと控除が受けられません。
自分の年金収入と合わせて、使える控除もあらかじめ確認しておくと、確定申告が必要かどうかをスムーズに判断できるでしょう。
まとめ
今回は収入が年金のみの場合に、所得税がかかる所得水準や使える控除、確定申告が必要な人を紹介しました。会社を退職すると、状況によっては確定申告が必要です。確定申告は年末調整と異なりすべて自分で行うため、相応の時間と労力がかかります。慌てずに手続きできるよう、あらかじめ収入や使える控除を確認しておくことをおすすめします。
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たにぐち まりえ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
新卒で大手銀行に入社し、個人営業に13年間従事。資産運用や相続対策、アパートローンなど、幅広い業務を経験。プライベートでは1児の母。出産を機にキャリアと育児の両立に悩み、自分らしく生きるためにコーチングを学ぶ。現在は金融系記事の執筆や、FP×コーチングで女性の人生を豊かにするための活動を行っている。
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