21/11/28
国民年金保険料の未納は激ヤバ! 未納を続ける人が被る3つの大損
経済的などの理由で国民年金保険料を払えなくなったとき、未納を続けていると厳しいペナルティを受けることをご存じでしょうか?そこで今回は、保険料の未納を放置し続けた場合のデメリットを解説するとともに、保険料が払えなくなったときに忘れずやっておきたい手続きについてご紹介します。
国民年金保険料の納付率は77.2%。2割強も未納なの?
2020年度(令和2年度)に厚生労働省から公表された国民年金保険料の最終納付率は77.2%でした。この数値から単純に考えると、2割強もの人が国民年金保険料を払っていないことになります。この未納率がかつては4割に上った年があり、「公的年金加入者のうち未納の人が4割もいるから、いずれ年金制度は破綻する」と報じられていたこともありました。しかし、この未納者の割合に対する考え方は間違っています。
まず「納付率」ですが、これは、国民年金保険料の納付対象月数に対する納付月数の割合を表しています。つまり、2020年度でいえば、未納月数が2割強であるということで、保険料を納めた人の割合を表しているのではありません。
また、国民の2割強(かつては4割)もの人が未納だと思われがちですが、ここも勘違いされやすい部分です。
ここで国民年金保険料について、基本的な部分をおさらいしておきましょう。
第2号被保険者である会社員は厚生年金に加入していますが、同時に国民年金の加入も兼ねています。そもそも厚生年金保険料は給与天引きされるので、会社員の保険料が未納になることはあり得ません。また、第2号被保険者の妻が専業主婦の場合は第3号被保険者になります。この場合、個人では保険料を納めることはありませんが、配偶者が厚生年金保険料を納めていることで、老齢年金の給付が受けられるようになっています。
このことからわかるのは、国民年金保険料が未納になるのは第1号被保険者の自営業者やフリーランス、無職の人に限られるということです。
令和2年度末における日本の公的年金制度の加入者数は6,740万人です。このうち第1号被保険者は1,449万人で、保険料を納めた人は726万人、全額免除・猶予制度を受けた人は609万人でした。そして、国民年金保険料の未納者数は115万人となっています。
●公的年金加入者の推移
厚生労働省「令和2年度の国民年金の加入・保険料納付状況について」より
つまり、国民年金保険料を未納にしている人の割合は、公的年金制度の加入者(6,740万人)の1.7%です。全体から見れば、未納率はほんのわずかであることがわかります。つまり、未納者が増えると年金制度が破綻するという話は考えにくいことなのです。
国民年金保険料を未納のままでいる人の末路
国民年金保険料を未納のままでいると、次のような3つの大損を被ることになります。
●国民年金保険料未納の大損1:老齢基礎年金が減る
65歳から老齢基礎年金を受け取るには、10年以上の受給資格期間が必要です。国民年金保険料を未納にしていることで受給資格期間が10年を切ると、老齢基礎年金が受け取れなくなってしまいます。また、老齢基礎年金の受取額は、国民年金の保険料を納めた期間に左右されます。たとえ10年以上の加入期間があったとしても、未納期間があればその分受け取れる年金額は減ります。年金額が減ると、老後の生活に大きな影響を受けることになるのです。
●国民年金保険料未納の大損2:障害基礎年金や遺族基礎年金をもらえなくなる
私たちにはさまざまなリスクがあります。場合によっては、ケガや病気の影響で体に障害を負うことがあるかもしれません。あるいは、一家の大黒柱に万が一のことが起きて亡くなる場合があるかもしれないのです。そんなとき、生計を担う人が国民年金保険料をきちんと納めていなければ、障害基礎年金や遺族基礎年金を受給することができなくなります。
障害基礎年金を受給するには、初診日の前日において前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上ある必要があります。また、初診日が65歳未満であれば、初診日前日において、その前々月までの直近1年間に未納期間がないことが要件となります。そのため、未納期間があれば障害基礎年金が受け取れなくなることがあるのです。
遺族基礎年金の場合でも障害基礎年金と同様の要件があるため、未納期間があれば遺族基礎年金を受け取れない場合があります。
●国民年金保険料未納の大損3:財産を差し押さえられる
国民年金保険料には納付期限がありますが、その期限までに納めないと「国民年金未納保険料納付勧奨通知書」が送られてきます。これはいわゆる催告状で、それでも納付しないと最終催告状が届きます。それも放置すると、今度は督促状が送られてきます。督促状には指定期限があり、その期限までに保険料を納めない場合は延滞金が課せられます。それでもなお未納のままでいると、最終的には給与や預貯金、不動産などの財産が差し押さえられることがあるのです。
国民年金保険料が払えないときはどうすればいい?
国民年金は納付期限までに納めることになっていますが、経済的な理由で納付が困難になる場合があるかもしれません。そのようなときは決して放置せず、次のような処置を取りましょう。
●学生は「学生納付特例制度」の利用を
すべての人は20歳になると国民年金に加入しますが、学生なので保険料を払えないこともあるでしょう。そんなときは、学生納付特例制度を申請しましょう。手続きをすれば、承認された期間は保険料納付が猶予されます。学校で手続きできる場合もあります。
ただし、学生納付特例制度を利用した期間は老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)に含まれますが、年金は減額となります。国民年金保険料は10年以内であれば追納できるので、年金額を増やしたいときは追納することをおすすめします。
●国民年金の免除制度を利用する
国民年金には免除制度があり、申請すれば納付が免除されます。免除制度には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があります。申請して免除が承認された期間は老齢基礎年金の受給資格期間には含まれます。ただ、免除の割合によって免除期間に相当する年金額が減額となります。たとえば全額免除を利用した場合、年金額は2分の1になります。とはいえ、10年以内であれば追納することができるので、年金額を増やしたいのであれば追納しましょう。
●国民年金の猶予制度を利用する
国民年金には、50歳未満で所得が一定額以下の場合は申請すれば保険料の納付が猶予される制度があります。ただ、猶予期間は老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、年金額には反映されません。もし10年以内に保険料を納める余裕ができたときは、追納して年金額を増やすようにしましょう。
以上のように、国民年金保険料が支払えない場合でも、未納を回避できる制度が用意されています。未納のままでいるとデメリットしかありません。経済的に納付が困難になったときは、早めに市区町村の役所で免除や猶予制度の手続きをしましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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