22/12/11
S&P500とNASDAQ100の違いを教えて!どちらに投資すべき?
米国の株価の動きを示す「米国株価指数」のなかでも投資家に人気が高いのが「S&P500」と「NASDAQ100(ナスダック100)」です。どちらもよく耳にする指数ですが、S&P500とNASDAQ100にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、S&P500とNASDAQ100の算出基準、特徴、リターン、リスク(ボラティリティ)、業種配分まで、違いを徹底比較します。その上で、投資戦略を一緒に考えていきたいと思います。
S&P500とNASDAQ100はどう違う?
S&P500とNASDAQ100の違いをまとめたのが次の一覧表です。
●S&P500とNASDAQ100の比較
(株)Money&You作成
まずは算出基準。S&P500は米国に本拠地を置いて時価総額が146億ドル以上(2022年11月10現在)の銘柄から算出されます。時価総額の金額の部分は定期的に更新されていて、増えている傾向にあります。また「4四半期連続黒字維持」など、細かく厳格な基準が設けられています。
対するNASDAQ100は、ナスダック上場企業から金融業を除き、時価総額の上位100社の銘柄から算出されます。米国企業でなくても条件を満たせば算出の対象になる点や金融業が含まれていない点がS&P500との大きな違いです。
続いて特徴をチェックしてみましょう。S&P500は、米国株式市場のカバー率が約80%となっていて、幅広い業種に分散投資できます。4四半期連続黒字維持が条件なので、安定成長している米国企業のみで構成されている指数だとわかります。
一方NASDAQ100は、米国株式市場のカバー率こそ約35%と、S&P500よりも少ないのですが、積極的な投資によって赤字になっている企業でも採用の可能性があります。
特に新興企業の場合、成長が著しいものの、積極的な投資で赤字になっているケースがあります。NASDAQ100ではそうした赤字企業も採用することがあるため、イノベーションの種を早期に取り入れることが期待できます。こうした成長力の高さはNASDAQ100の特徴といえるでしょう。NASDAQ100の構成銘柄には、情報技術の会社が多くあります。
両指数とも、「時価総額加重平均」という方法で算出されています。時価総額加重平均は、時価総額の大きさを加味して計算される平均のこと。時価総額の大きな大型株の影響を受けやすい特徴があります。
S&P500・NASDAQ100をベンチマークとする代表的な投資信託・ETFには、次のようなものがあります。
●S&P500
【投資信託】
・eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
・SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
【ETF】
・バンガード・S&P500ETF(VOO)
・iシェアーズ コアS&P500ETF(IVV)
・SPDRポートフォリオ S&P500ETF (SPLG)
●NASDAQ100
【投資信託】
・eMAXIS NASDAQ100インデックス
【ETF】
・インベスコ・QQQ 信託シリーズ1(QQQ)
いずれも低コストで純資産総額の大きい、人気のある投資信託・ETFです。
S&P500とNASDAQ100のパフォーマンスはどうなっている?
S&P500とNASDAQ100のリターンを示したのが、次のグラフです。
●S&P500とNASDAQ100のリターン比較
左のグラフは2008年以降のS&P500とNASDAQ100の年ごとの利益を比較したもの。右のグラフは2007年以降のS&P500とNASDAQ100の累積収益率の推移です。
2008年から2022年までの14年で比較すると、NASDAQ100はS&P500を11回アウトパフォーム(上回ること)しています。ただ、2022年に関してはS&P500よりもNASDAQ100の方が大きく値下がりしている状態です。NASDAQ100はリターンが高い分、価格変動も大きいことがわかります。
さらに、NASDAQの資料によると、
・Cumulative Return(累積リターン):NASDAQ100TR…511%・S&P500TR…232%
・Annualized Return(年率リターン):NASDAQ100TR…13.0%・S&P500TR…8.5%
・Annualized Volatility(年率ボラティリティ):NASDAQ100TR…23%・S&P500TR…21%
※TR…配当再投資を前提とした指数
となっています。
NASDAQ100の累積リターンはS&P500の2倍近くで、年率リターンもS&P500よりかなり高いことがわかります。それでいて、年率のボラティリティ(価格の変動率)は2%ほどしか違いません。直近の2022年はボラティリティが高まっていますが、NASDAQ100のリターンは安定的にS&P500を上回っているのです。
●S&P500とNASDAQ100のボラティリティ比較
Rolling Volatilityとは、日次の変動を年換算して入れ替えて(ローリングして)算出されるボラティリティです。
2009年12月末から2022年9月末において、NASDAQ100はS&P500よりもボラティリティが平均して2.43%高くなっています。確かにNASDAQ100の方がボラティリティは高いのですが、S&P500と比較してもそこまで高くありません。
また、NASDAQ100は情報技術に業種が集中していることをお話ししましたが、S&P500とNASDAQ100の日次リターンの相関は93%と、かなり高くなっています。つまり、この14年ほどは、情報技術が市場を牽引し、株価を引き上げていたということがわかります。
NASDAQ100のボラティリティは大きなショックのときに低くなる
NASDAQ100のボラティリティはS&P500よりやや高い傾向にあるのですが、大きなショックがあるときには、NASDAQ100のボラティリティのほうが低くなることがわかっています。
●リーマンショック時のS&P500とNASDAQ100の値動き
グラフはリーマンショック時のS&P500とNASDAQ100のボラティリティの変化を示したものです。青い線のNASDAQ100が、黒い線のS&P500を下回っています。「NASDAQ100はボラティリティが高い」「NASDAQ100は成長率が高いから値動きも激しい」というイメージがあるかもしれませんが、金融ショックのときには低くなっているのです。
コロナショックのときも同様に、NASDAQ100のほうが低くなっています。
なぜ、NASDAQ100は危機のときにボラティリティが比較的低くなるのでしょうか。その要因のひとつとして間違いないと言われているのは「NASDAQ100構成企業の並外れたファンダメンタルズの良さ」です。
NASDAQ100の構成企業は2003年から2019年にかけて1株当たりの利益を22倍、売上を6.5倍、配当を40倍に成長させています。同期間のS&P500の構成企業の1株当たりの利益は4倍、売上2倍、配当3倍ですから、NASDAQ100がS&P500を大きく上回っています。NASDAQ100はファンダメンタルズが強かったからいち早く回復できた、というわけです。
NASDAQ100にはレバナス(NASDAQ100のおよそ2倍の値動きになるように運用される、レバレッジをかけた商品。2021年は好調に値上がりしたものの、2022年は大きく下落した)の影響があるからか、値動きが激しいイメージを持たれる方も多いと思います。しかし、NASDAQ100に含まれる企業のファンダメンタルズが強いことから、逆にイベントやショックが起きてもそれほど値下がりせず、ボラティリティも低くなるといえるでしょう。
NASDAQ100では投資していない業種も
改めて、S&P500とNASDAQ100の業種のウエイトを確認しておきましょう。
●NASDAQ100の業種のウエイト
S&P500もNASDAQ100も、もっとも多いのは情報技術ですが、NASDAQ100は情報技術が半数以上を占めています。
S&P500では11%ある金融セクターのポジションがNASDAQ100ではゼロになっています。したがって、NASDAQ100の方が金融市場の下落リスクの影響が低いといえます。
さらに、NASDAQ100には石油・ガスセクターのポジションもありません。昨今のエネルギー市場の混乱の影響も少ないと考えられます。
そのうえ、NASDAQ100では航空・旅行・レストランなどのポジションも少ないので消費者の需要減によるマイナスも抑えられている、といえます。
まとめ
S&P500とNASDAQ100の違いを紹介してきました。リーマンショック明けからのリターンを見ると、NASDAQ100はS&P500を凌駕していることがわかります。
NASDAQ100のボラティリティはS&P500よりも平均2.43%高く、2022年の年初来騰落率はS&P500は-21.8%、NASDAQ100では-34.6%となっているのは事実です。しかし、NASDAQ100はS&P500よりも金融ショックやコロナショックのようなときのボラティリティが抑えられていたのも事実です。NASDAQ100の構成企業は並外れてファンダメンタルズがいいことから、ボラティリティを抑えられると考えられます。
算出基準や特徴が異なる指数であることはご紹介してきたとおりです。どちらか片方だけに投資するよりも、両者に投資しておくのが戦略として無難と考えます。S&P500でなく、「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」(米国株式市場の大型株から小型株まで、約4000銘柄をもとに算出される株価指数)に投資しているならば、これに加えてNASDAQ100へ投資するのがいいでしょう。
ぜひ、みなさんの投資行動に生かしていただければと思います。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
【関連記事もチェック】
・【米国ETF】高配当株ETFのVYM・SPYD・HDV・DVY、増配株ETFのVIG・SDYを徹底比較!プロが選ぶ正解はコレだ【Money&YouTV】
・「64歳で退職するとお得」は本当?失業給付は65歳退職といくら違うのか
・令和でも「昭和生まれの親」のお金の常識にとらわれる人の残念な末路
・金持ち夫婦が貧乏夫婦に陥る、払ってはいけない5つのお金
・老後破綻の原因は「たった一つの悪習慣」 老後破綻を避けるには
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
この記事が気に入ったら
いいね!しよう