21/11/26
知らないと損する公的年金の本質 年金の持つ「3つの役割」
現役世代が納める国民年金や厚生年金の保険料は、将来自分で受け取るために貯蓄される…のではなく、今の受給者の年金を支えています。年金は「貯蓄」ではないのです。では、もし貯蓄があれば、年金はいらないのでしょうか? 実は、年金には貯蓄では備えることが難しいことに備える「3つの役割」があります。どんな役割か、紹介します。
公的年金制度は国民年金と厚生年金の2種類
日本の年金制度には、公的年金と私的年金があります。
公的年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が入る国民年金と、公務員や会社員など第2号被保険者が入る厚生年金の2つがあります。どちらも、加入期間中に所定の年金保険料を支払うことで、原則として65歳から年金を受け取ることができます。
一方、私的年金は、公的年金の上乗せとして任意で入ることができる年金です。被保険者ごとに使える制度が異なりますが、さまざまな私的年金制度があります。
公的年金も私的年金も、老後の生活を支える大切な収入源として利用されています。
●日本の年金制度
厚生労働省ウェブサイトより
公的年金の持つ3つの役割
それでは、公的年金の持つ役割とは何でしょうか。3つの重要な役割を紹介します。
●公的年金の役割1:「長生き」に備えること
老後に受け取れる老齢年金は、受給開始の年齢は決まっていても終わりの年齢は決まっておらず、終身で受け取ることができます。現代は、人生100年時代と言われ、長生きする方が多くなってきました。日本人の平均寿命は、女性が87.74歳、男性が81.64歳(2020年、厚生労働省発表)と年々延びてきています。リタイアする年齢が65歳だとすると、リタイア後の生活は女性で約23年、男性で約17年間あるということです。長生きすればするほど必要な生活資金は多くなります。そのため受給期間の定めがない年金は、この長生きリスクに備える大切な収入源となります。国民年金からは「老齢基礎年金」、厚生年金からは「老齢厚生年金」が受け取れます。
●公的年金の役割2:「障害」に備えること
人生において、何らかの障害を負ってしまう可能性をゼロにすることはできません。不慮の事故等で障害を持ち、働けなくなってしまう可能性は誰もが持っているリスクです。もしも、一家の大黒柱が急に働けなくなってしまったら、自分が急に働けなくなってしまったら、家庭の収入が減ってしまうと困ってしまう家庭は多いと思います。そのようなときに障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)が支給され、家庭の支えとなってくれます。
●公的年金の役割3:「死亡」に備えること
障害と同じく、人の死はいつ訪れるかわかりません。急に一家の大黒柱が亡くなってしまった場合に、遺された家族は生活が不安になるかと思います。年金受給者や被保険者が亡くなった時に遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)が遺された家族の生活の支えとなってくれます。
公的年金と貯蓄の3つの違い
年金は、収入が得られなくなった時の生活資金を備えるために役に立つことを紹介しました。しかし、「働いているうちに貯蓄の備えがあれば年金はいらないのでは?」と思った方もいるかもしれません。しかし、果たして一概にそう言えるでしょうか。年金と貯蓄の違いを3つのポイントで紹介します。
●年金と貯蓄の違い1:年金は生涯にわたって受給できる
年金は受給開始から亡くなるまで、生涯にわたり受給できる制度です。何歳まで生きるのかが初めからわかっていれば、いくらぐらいの貯蓄があれば大丈夫だろうと備えることが可能かもしれませんが、現代では長生きリスクが存在します。貯蓄は、貯めた分が天井でそれ以上の金額は用意できません。ですので、生きているうちに使い切ってしまったら、それ以後の生活が困難となってしまう可能性があります。一方、年金は生涯にわたり受給できるので生活資源が途絶えてしまうという心配が軽減されます。
●年金と貯蓄の違い2:年金は物価変動や賃金上昇などの経済変化に強い
物価上昇や賃金上昇のようなインフレ時に、金利がほぼない貯蓄は価値の目減りが起こります。例えばリンゴ1個が100円から200円に値上がりしたら、100円の価値はリンゴ1個からリンゴ0.5個に。同じ「100円」でも価値が減っていることになります。ですが、年金は受給するときの物価や現役世代の賃金に応じて給付金額が変わるので、このようなインフレ時に比較的強いといわれています。
●年金と貯蓄の違い3:年金は万が一のときに備えられる
上でも紹介したとおり、年金には障害年金や遺族年金の制度があるので、急に収入が得られなくなってしまった時に本人の生活、家族の生活を支えることができます。一方貯蓄では、その時点で貯められた金額しかないため、急な時に貯蓄が十分に備わっていない可能性があります。貯蓄がどのような状態の時にも万が一の時に給付される年金は心強い制度です。
まとめ
公的年金は老後の備えができるだけでなく、万が一の時に支えてもらえる制度でもあります。きちんと受給するためにも加入期間に保険料を支払うことが大切です。また、公的年金だけでは不足するのではと心配な方は、上乗せの私的年金制度で備える手立てもあります。老後の備えとなる年金、しっかりと築いていきましょう。
【関連記事もチェック】
・企業型確定拠出年金の商品ラインナップがイマイチ!どう運用するのが正解か
・郵便で届く年金の書類、最低限のチェックをしないと損することに
・年金格差が生まれる4つの要因
・生活が苦しい高齢者世帯の割合は? 年金額を増やす5つの方法
・50代で年収が減ると、年金はどのくらい減るのか
小塚歩 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
大手証券会社、IRリサーチ会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。FP事務所 まいまねい 代表。人生100年時代だからこそ、もっと金融を身近に感じてほしく、セミナー活動を通して、金融リテラシーや金融教育を広めるセミナー講師。得意分野は投資・金融資産運用。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう