23/02/19
【知らないと大損】年金受給者の医療費控除は「10万円」超えなくてもできる
支払った医療費に応じて税金を安くできる医療費控除。医療費控除は「医療費が10万円を超えたとき」に利用できると思っている方もいるでしょう。しかし、医療費控除には「10万円」でない条件もあります。今回は、そもそも医療費控除とは何か、医療費控除の「10万円」ではない条件、医療費控除の対象となる医療費について紹介します。
医療費控除とはどんな制度?
医療費控除とは毎年1月1日から12月31日までに支払った医療費が一定額を超えるときに支払った医療費に応じて所得控除が受けられるしくみです。所得控除を受けることで、所得税や住民税が安くなります。
医療費控除の計算式は、次のとおりです。
●医療費控除の計算式
医療費控除額=実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填された金額-10万円※
※総所得金額等が200万円までの方は、「所得合計金額×5%」
医療費控除では、支払った医療費のうち10万円を超える部分の金額について所得から差し引くことができます。例えば30万円の医療費がかかったのであれば10万円を差し引いた20万円が医療費控除の額となります。なお、自分の医療費だけではなく生計を一にしている配偶者やその他の親族のために支払った医療費であれば控除対象の医療費に合算することができます。
年金受給者の医療費控除は「10万円」ではない?
医療費控除の対象となる医療費は「10万円を超えた部分」ということは、ご存じの方も多くいます。そのため、「10万円の医療費もかかっていないので控除できない」と思っている方も結構います。
しかし、上で紹介した医療費控除の計算式をもう一度見てください。総所得金額等が200万円未満であれば10万円でなく「総所得金額等×5%」で計算します。つまり、総所得金額等が200万円未満であれば、医療費が10万円かかっていなくても控除を受けることができる、というわけです。
年金生活者の方で、年金収入しかないという方の場合は、総所得金額等が200万円未満になる方が多くいます。
●公的年金等にかかる雑所得の速算表
国税庁のウェブサイトより
例えば、65歳以上の方で年金収入が250万円(年金収入のみ)だとすると、収入金額から110万円を引いた140万円が所得となります。つまり、「総所得金額等200万円未満」にあてはまります。医療費控除が受けられる金額は140万円×5%=7万円になりますので、10万円以下の医療費であっても医療費控除が適用できます。
仮に、この方の医療費が20万円だったとすると、20万円-7万円=13万円の控除が受けられることになります。13万円分の所得が控除されますので、節税金額は13万円×所得税率5%=6,500円となります。
さらに、医療費控除をすると、住民税も安くなります。住民税の税率は10%ですので、13万円×住民税率10%=1万3,000円節税できます。
対象となる医療費にはどんなものがあるのか。注意したいポイント
医療費控除の対象となる医療費は「治療を目的としている支出」かどうかで判断されます。診療費・治療費はもちろん、医薬品や医療器具の購入費、治療のためのマッサージ、子どもの歯の矯正、不妊治療やレーシック手術の費用なども医療費控除の対象です。
反対に、医療費控除の対象とならない費用としては、健康診断や人間ドック、インフルエンザなどの予防接種、治療目的でないマッサージ、栄養ドリンクの購入代金などがあります。これらの費用は、治療を目的としている支出ではないため対象外の費用となります。
ただし、健康診断や人間ドックで検査の結果、重大な疾病が発見され引き続きの治療が必要になった場合については医療費控除の対象費用と認められます。また、漢方薬については医師の処方箋であれば対象費用として認められます。
医療費控除の計算では、健康保険などから支給される高額療養費や家族療養費、保険会社からの給付金や出産育児一時金など、保険などから補填されている金額がある場合は、その分を実際に支払った医療費から差し引かなくてはいけません。
ただし、支払った医療費を超える保険金などを受け取った場合、支払った医療費の金額を上回る部分の保険などの額を、他の医療費の金額から差し引く必要はありません。
たとえば、支払った医療費が5万円、保険などで補填された金額が10万円の場合、差し引く金額は5万円でOK。あくまで、差し引くのはすべての医療費の合計額からではなくその補填されるものに対しての支出からのみとなります。間違えて「10万円」差し引いてしまうと、医療費控除できる金額がその分減ってしまうので注意が必要です。
まとめ
医療費への支出が多いと感じたら、医療費控除が使えるのかを検討してください。医療費控除は、本人だけでなく生計を一にしている家族へ支出した医療費についても合算の対象となります。
また医療費控除と聞くと「10万円」を思い浮かべる方が多いですが、年金生活者のような総所得金額等が200万円未満になる方であれば、医療費が10万円以下でも控除の対象となる場合があります。
医療費控除は、確定申告でしか受けることができません。もし控除の対象になるならば、忘れずに確定申告しましょう。
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小塚歩 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
大手証券会社、IRリサーチ会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。FP事務所 まいまねい 代表。人生100年時代だからこそ、もっと金融を身近に感じてほしく、セミナー活動を通して、金融リテラシーや金融教育を広めるセミナー講師。得意分野は投資・金融資産運用。
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