23/02/05
年6万円の「年金生活者支援給付金」がもらえなくなるのはどんなときか
年金に上乗せして年約6万円がもらえる「年金生活者支援給付金」をご存知でしょうか?年金生活者支援金は、年金収入と所得の金額によってもらえるかどうかが決まります。今回は、年金生活者支援給付金の仕組みと、どのような方が対象となり、いくらもらえるのか、最新のデータを使って紹介します。
年金生活者支援給付金をもらえる人はどんな人?
年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準以下の方の生活支援を目的として、年金に上乗せして支給される給付金です。年金生活者支援給付金は、2019年10月の消費税率引き上げに伴い給付されるようになりました。
65歳以上の年金受給者に対する「老齢年金生活者支援給付金」の対象は、老齢基礎年金を受給されている方のなかで、以下の支給要件をすべて満たしている方です。
●年金生活者支援給付金の支給要件
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
・同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
・前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が881,200円以下であること
なお、前年の公的年金等の収入額とその他の所得との合計額が781,200円を超え881,200円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
補足的老齢年金生活者とは、年金生活者支援給付金が支給される人とされない人の所得の逆転が生じないようにするために支払われる給付金です。
老齢年金生活者支援給付金でもらえる金額は?
老齢年金生活者支援給付金でもらえる金額は、月額5,020円を基準に保険料納付済期間等に応じて計算します。計算方法は以下のとおりです。
●老齢年金生活者支援給付金の金額
老齢年金生活者支援給付金額=a+b
a:保険料納付済期間に基づく額(月額)
=5,020円×保険料納付済期間/被保険者月数480月
b:保険料免除期間に基づく額(月額)
=10,802円×保険料免除期間/被保険者月数480月
なお、保険料免除期間がある方で、保険料の1/4免除期間がある場合は、その期間についての計算は、bの10,802円が5,401円となります。また、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて計算額が変動します。
また、補足的老齢年金生活者支援給付金の計算方法は以下のとおりです。
●補足的老齢年金生活者支援給付金の金額
給付基準額月5,020円×(保険料納付済期間/被保険者月数480月)×
{(補足的老齢年金生活者支援給付金の上限額881,200円-前年の年金収入とその他の所得の合計額)/(補足的老齢年金生活者支援給付金の上限額881,200円-老齢年金生活者支援給付金の上限額781,200円)}
保険料納付済期間は、年金証書等で確認することができます。まだ、年金をもらう年齢ではない方は、お手元に届く「ねんきん定期便」で現在の納付済月数を確認することができます。
例えば、被保険者月数480月のうち納付済月数が480月、免除月数が0月の場合の年金生活者支援給付金額は、以下のような計算となります。
a:5,020円×480/480月=5,020円(月額)
b:10,802円×0/480月=0円(月額)
a+b=5,020円(月額)
5,020円×12月=60,240円(年額)
この場合、もらえる年金生活者支援給付金額は60,240円(年額)となります。
また、上記と同じ納付月数で、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が800,000円であった場合の補足的老齢年金生活者支援給付金額は、以下のような計算となります。
5,020円×(881,200円-800,000円/881,200円-781,200円)
=5,020円×0.812
=4,076円(月額)
4,076円×12月=48,912円(年額)
この場合、もらえる補足的老齢年金生活者支援給付金額は48,912円(年額)となります。
つまり、年約6万円の老齢年金生活者支援給付金がもらえなくなるのは、前年の公的年金等の収入額とその他の所得との合計額が781,200円超となった場合です。881,200円以下であれば補足的老齢年金生活者支援給付金が受け取れますが、受け取れる金額は徐々に少なくなり、881,200円を超えるとゼロになります。
障害基礎年金・遺族基礎年金をもらっている場合は?
障害基礎年金を受給している対象者には「障害年金生活者支援給付金」が、遺族基礎年金を受給している対象者には「遺族年金生活者支援給付金」が支給されます。
障害年金生活者支援給付金の対象となる方は、以下の要件をすべて満たしている方です。
・障害基礎年金の受給者であること
・前年の所得が4,721,000円以下であること
給付額は、障害等級2級の方が、5,020円(月額)、障害等級1級の方が6,275円(月額)です。
また、「遺族年金生活者支援給付金」の対象となる方は、以下の要件をすべて満たしている方です。
・遺族基礎年金の受給者であること
・前年の所得が4,721,000円以下であること
給付額は5,020円(月額)です(2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,020円を子の数で割った金額がそれぞれにお支払いとなります)。
老齢年金生活者支援給付金に比べると、障害年金生活者支援給付金・遺族年金生活者支援給付金のほうが前年の所得の基準が緩やかなことがわかります。
給付金が支給されない場合と不該当の場合
ここまでご紹介してきた年金生活者支援給付金の支給要件を満たしていたとしても、以下の事由に該当した場合には、給付金は支給されません。
・日本国内に住所がないとき
・年金が全額支給停止のとき
・刑事施設等に拘束されているとき
また、所得基準などを確認したところ、以前にさかのぼって要件を満たしていない(不該当になった)場合、年金生活者支援給付金が多く支払われていることがあります。この場合は、返金することになります。
なお、不該当になった場合でも、その後、
・支給停止となっていた基礎年金の支給が再開した場合
・支給要件となる基礎年金を受給することとなった場合
・障害基礎年金の等級が2級以上に該当した場合
などは、改めて年金生活者支援給付金請求書を提出することによって、年金生活者支援給付金を受給することができる場合があります。
まとめ
公的年金等の収入金額やそのほかの所得が881,200円以下で条件を満たせば、老齢年金生活者支援給付金(または補足的老齢年金生活者支援給付金)がもらえます。
年金生活者支援給付金をもらうには、年金生活者支援給付金請求書の提出が必要となります。該当者には、日本年金機構から給付金請求書が届きますので、返送します。また、これまで支給要件に該当しなかった人でも、所得が減って新たに対象者となる場合は給付金請求書が届きます。忘れずに手続きをしましょう。
なお、年金生活者支援給付金の支給要件を満たす場合、2年目の手続きは原則不要です。万が一対象のはずなのに給付金請求書が届かないという場合は、お近くの年金事務所等へ問い合わせてみましょう。
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小塚歩 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
大手証券会社、IRリサーチ会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。FP事務所 まいまねい 代表。人生100年時代だからこそ、もっと金融を身近に感じてほしく、セミナー活動を通して、金融リテラシーや金融教育を広めるセミナー講師。得意分野は投資・金融資産運用。
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