21/09/29
年収300万円、400万円、500万円の人は年金をいくらもらえるのか【年金早見表付き】
年収が多い方も少ない方も、同じように心配しているのが老後のお金のこと。年収が右肩上がりの時代ならばよかったかもしれませんが、今は年収が上がりにくいうえ、多くの人が昔より長生きできる時代です。老後のお金のことが心配になるのは無理もないことでしょう。
今回は、年収300、400、500万円の人がもらえる年金額を紹介。わかりやすい早見表も作りました。また、不足する年金を補う方法も4つ紹介します。
日本の会社員の平均年収はどう推移している?
いきなりですが、日本の会社員の平均年収はいくらかご存じですか?
2019年のデータによると、正解は436万円です。
●会社員の平均年収は436万円
筆者作成
国税庁の民間給与実態統計調査(2020年度)によると、2019年の日本の会社員の平均年収は棒グラフの右端のとおり、436万円となっています。
2000年に入ってからの20年の推移をみると、2000年代は平均年収が年々減少しています。2009年には、前年に発生したリーマンショック(米国の投資銀行、リーマンブラザーズ社の破たんによる世界的な金融危機)によって世界的に景気が減速したことが日本の平均年収にも悪影響を及ぼし、406万円まで一気に減ってしまったのです。
一方、2010年代になると、平均年収は緩やかに回復していきます。2017年に432万円と、リーマンショック前の水準を回復すると、翌2018年には441万円まで上昇しました。
しかし、2019年は再び436万円に下落。2020年はコロナショックの影響が色濃く出るはずですので、さらに減ってしまうものと考えられます。
平均年収436万円の人が受け取れる年金額は?
では、平均年収436万円の会社員が65歳から受け取れる年金額は、いくらなのでしょうか。
日本の公的年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳までの人が加入する年金。厚生年金は、会社員や公務員が勤務先経由で加入する年金です。
会社員は国民年金の「第2号被保険者」といって、毎月の給与から厚生年金保険料(国民年金保険料を含む)を支払っています。それによって老後、国民年金と厚生年金の両方から「老齢年金」を受け取ることができます。なお、国民年金の老齢年金を「老齢基礎年金」、厚生年金の老齢年金を「老齢厚生年金」といいます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金では、金額の計算方法が異なります。
老齢基礎年金は、原則20歳〜60歳までの40年間にわたって国民年金保険料を支払えば、満額が受け取れるしくみ。2021年度の満額は78万900円となっています。保険料の払込期間が40年に満たない場合は、その分減額されます。
対する老齢厚生年金は、おおまかにいうと「平均年収÷12×0.005481×加入月数」という式で計算できます。つまり、平均年収が高く、加入月数が多いほどもらえる金額が増えます。
●年金の計算式と38年間厚生年金に加入したときの年金額
筆者作成
仮に国民年金保険料を40年納め、23歳〜60歳までの38年間ずっと厚生年金に加入していた場合、平均年収436万円の方の年金額は年168.9万円(老齢基礎年金78.1万円+老齢厚生年金90.8万円)となります。月額換算すると約14.1万円です。
平均年収436万円は男女合計の平均ですので、男女別にして同様に年金額を計算すると、
・男性(平均年収540万円)
年168.9万円(老齢基礎年金78.1万円+老齢厚生年金90.8万円)月額換算約15.9万円
・女性(平均年収296万円)
年139.7万円(老齢基礎年金78.1万円+老齢厚生年金61.7万円)月額換算約11.6万円
となります。
男女間で月額4.3万円ほどの違いがあることがわかります。もっとも、女性の平均年収は年々上昇傾向にあるので、今後この差は縮んでいくと考えられます。
年収300万円、400万円、500万円の人は年金をいくらもらえるのか
このようにみてみると、「自分はいくらもらえるのだろう?」と心配になる方もいると思います。そこで、年金早見表を用意しましたので、ぜひチェックしてください。
●年金早見表
筆者作成
表は縦に生涯の平均年収、横に厚生年金加入期間をとっています。各平均年収と厚生年金加入期間の交点の金額が、65歳から受け取れる年金の年額(老齢基礎年金の満額78万900円+老齢厚生年金の金額)となっています。
年収300万円・400万円・500万円の人がそれぞれ厚生年金に40年加入した場合、65歳から受け取れる年金の年額は表より
・年収300万円:約143.9万円(月額換算約12.0万円)
・年収400万円:約165.8万円(月額換算約13.8万円)
・年収500万円:約187.7万円(月額換算約15.6万円)
とわかります。みなさんも、早見表でおおよその年金額をチェックしてみてください。
公的年金の不足を補う4つの方法
年金額をチェックしてみて、どう思いましたか? なかには、年金のことになるととにかく不安に思われる方がいます。しかし、上の早見表をチェックすれば「まったくもらえないわけではない」ということはご理解いただけると思います。過度に不安がる必要はありません。
もっとも、だからといって決して多いという金額でもありません。そこで「もう少し年金を上乗せしたい」という方に向けて、公的年金の不足を補う方法を4つ、紹介します。
●公的年金の不足を補う4つの方法1:長く働いて勤労収入を得る
かつて55歳だった定年は60歳、65歳と引き上げられ、今や企業には70歳まで働ける機会を確保することが努力義務となっています。確かに、60歳以降は再雇用などで年収が減ってしまうケースも多くあります。しかし、働いて勤労収入を得ていれば、その分お金を貯めたり使ったりできます。
なにより、今の60代はまだまだ若いです。働くと健康促進につながりますし、社会との関わりを持つことでいきいきと生活できるでしょう。
●公的年金の不足を補う4つの方法2:70歳まで厚生年金に加入する
国民年金に加入できるのは原則として20歳〜60歳までですが、厚生年金には70歳まで加入できます。再雇用や定年延長などによって厚生年金に加入することで、厚生年金の加入期間が増えますので、受け取れる年金も増えます。
たとえば、年収300万円で60歳〜70歳までの間、10年間厚生年金に加入して働くと、公的年金が年16.4万円増える計算です。年金は、生涯にわたって受け取れるお金ですから、仮に70歳まで働いて年16.4万円年金が増えた場合、70歳から90歳までの20年間に受け取れる金額は328万円も多くなります。長生きするほど、この差は大きくなっていきます。
●公的年金の不足を補う4つの方法3:年金の繰下げ受給をする
年金の受け取りは原則65歳からですが、66歳以降に遅らせることができます。これを年金の繰下げ受給といいます。1か月受け取りを遅らせることで年金額は0.7%増額。75歳まで繰り下げることで最大で84%年金額が増えます。
仮に、65歳から月14.1万円受給できるという人が75歳まで繰下げ受給を行なった場合、受給できる年金額は月25.9万円に増える計算です。もちろん、働くなどして他の収入を得たり、貯蓄や投資などで年金と別のお金を用意したりして、繰下げ期間中の生活費を確保する必要はありますが、老後の年金を大きく増やすことができます。
●公的年金の不足を補う4つの方法4:iDeCoやつみたてNISAなどで自分年金を準備する
上の1〜3の方法以外で、自助努力で老後資産を準備しておきたいという場合は、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)を活用しましょう。
iDeCoは自分で掛金を出して老後資金を積み立てる制度。積み立てたお金は、原則60歳以降に受け取ることができます。
iDeCoでは、自分で出した掛金が全額所得控除できるため、毎年所得税や住民税を安くできます。そのうえ、投資信託などの運用益が非課税にできます。さらに、資産を受け取るときにも、税金を安くするしくみを活用できます。
また、つみたてNISAは毎年40万円までの投資の運用益を最長20年間にわたって非課税にできる制度。金融庁の基準を満たしたおよそ200本の投資信託に長期・積立・分散投資することで、お金を堅実に増やすことを目指します。iDeCoと違い、所得控除のメリットはないのですが、資産はいつでも引き出せるので、自由度が比較的高いといえます。
まとめ
会社員の平均年収の現状から、年収300万円・400万円・500万円の人がもらえる年金額、そして公的年金を補う4つの方法を紹介しました。「年金がもらえない」などと過度に心配する必要はありませんが、より豊かな老後を迎えるには、公的年金だけでは心許ないのも事実です。ぜひ、今回ご紹介した方法を活用して、公的年金を補い、老後資金を増やす取り組みをスタートさせてください。
今回の内容は動画でも紹介しています。よろしければご視聴ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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